認めてほしいから
あ~あ・・・設定がどんどんカオスしていく・・・
兄と呼ばせてくれないならせめて。
せめて
お願いだから。
「お兄ちゃんって呼ばないってきめたんじゃねぇのかよ。」
「・・・・・」
それでも俺にとって尚は兄なんだよ。
大好きなお兄ちゃんなんだよ。
何も思い出はない。
話したこともあまりない。
それでも、大好きで。
存在が嬉しかった。
兄と呼ばせてくれないなら
せめて
俺を認めて・・・
「俺は、どうすればいい?」
「・・・・」
「俺に何をしてほしいんだよ。まったく・・・」
困った顔されて、
それでも手は離したくない。
だた
だた
「このまま、それだけでいい。」
あの時そうしてくれたように。
それがお願い・・・
「雅輝っ!」
「兄ちゃん・・・」
「ばかっ・・お前・・・」
サイレンが耳に響く。
体が痛い。
尚が俺を呼んでる・・・
俺はどうなった?
目が覚めたら、そこは病院だった。
雅輝はそっと横に目を向けた。
そこには、兄の姿があった。
雅輝の隣で、手を握って。
見つめていた。
「兄ちゃん」
「起きたか。」
よかった。そうぼそっと聞こえた。
「俺・・・・」
「撥ねられたんだよ。車に」
「えっ・・・いった~・・・」
「動くなって」
兄は混乱する俺の手をずっと握っていてくれた。
兄とこんなに話す日はいままでに一度もなかった。
でもそっと差し出す兄の腕。
黒い刺青が見えた。
雅輝の視線に気づいて尚はまくっていた袖を下げる。
「雅輝!」
「お母さん・・お父さんも・・」
「おっ・・お前なんでここに!」
「あなたやめて。」
「お前が・・そうか!お前が雅輝を突き飛ばしたんだな!それで雅輝が!」
「お父さん!!」
「あなた!」
「・・・・」
ほらその顔。
小さいころからずっと同じ、
尚は親をにらんでいた。
その顔にはどこか意思を感じた。
まだくらくらする。
まぶたを開けていられない。
雅輝は静かに目閉じた。
「寝たか。」
「尚・・・」
「やめてくれますか?名前で呼ぶのは。」
「・・・・」
「もうかかわらない、こいつとは。それでいいんだろう。」
尚は親指を突き立てて、寝息を立てている雅輝を指す。
「尚・・・」
「やめろってんだろ。」
自分の部屋は思ったより広かった。
完全に片付いた部屋を眺めてそう思う。
「・・ふぅ・・・」
「尚くん?」
「なに?」
「本当に出て行くの?」
「いまさらだな。お母さん。」
お母さんと呼んだのは久しぶりだった。
嫌味をたっぷりこめて呼んでみる。
母は壁に寄りかかって俯いた。
「こんなに苦しいなら・・・」
「・・・・」
「こんなに苦しめてしまうんだったら。」
「・・・・・・・・」
「あなたを・・・・」
あんたなんか生まなければよかった。
「出てってやるよ。あんたらの息子は一人。尚なんて子はいなかった。」
「・・・・・」
「それでいいんだろう。」
そういって母とすれ違い、家を後にした。
「俺には納得ができないよ。」
「馬ぁ鹿。しなくていいんだよ、お前は。」
お互い思い出すことは同じ。
尚は雅輝の頭に手をおいた。
自分を真似て染めたのか、昔の自分と同じ、
明るい金色の髪。
さらさらでふわふわだった。
家を出た後、尚は病院へ向かった。
「・・・」
雅輝の病室。
前まで来て足がとまる。
何のためにきたのか、自分でもわからなかった。
「・・・はいるぞ・・・」
雅輝は背をむけて寝ていた。
「・・寝てるのか・・・」
隣の椅子に座ってみる。
そっと自分の腕に手を当てて。
「響が俺を生んだのは、17のときだ。
そんとき付き合ってた彼氏とな、親には別れろっていわれたし、
卸せともいわれて、響はそれをしなかった。
男と分かれて、親の反対押し切って俺を生んだ。」
聞いていないはずの雅輝の背中に静かに語りかける。
返事はないが、寝息がかすかに聞こえると、微笑みがこぼれた。
まだ幼い。
「18の時に、親父と知り合ってお前生んで、結婚して、
親父はやっぱり俺が嫌いだった、ほかの男との間にできた俺と穢れてるって。
母さんは俺に頑張ってほしかった。親父に認めてもらえるように。
勉強とか、運動とか、そういの全部。
期待したんだ。
でも、俺馬鹿だからうまくできなくて、親父は余計俺を嫌うし、
母さんもいらいらが募って、手を出すようになった。
お前覚えてないだろう、2歳ぐらいのとき、お前も殴られてんだよ、
親父に。
俺へのいらいらを、何も知らないお前にぶつけたんだ。
このままだと、お前も俺みたいになると思った。
だから俺はお前から遠のくことにした。
お前に被害がないように。
それでもちかづいてくる。何も知らない無邪気なお前を俺は憎く思ったこともある。
でもそれはただの八つ当たり。」
黒いさらさらの髪の毛に手を当ててみる。
布団がかすかに上下しているのがわかる。
爆睡のようだ。
「俺は泣くのをやめた。笑うのも、
家族も。
全部捨てた。
止めて楽になると思った。
それでもお前は無邪気で、
よくできお前と比べられるようになると、
俺はますますお前が嫌いになった。
刺青はだたの反抗。
あ~あ。ヤクザにでも入ろうかな。まっ、適当に生きるよ。」
そういって雅輝の頭をなでる手を離す。
病室の扉が閉じる音がして。
雅輝は声を上げて泣いた。
「なんで・・なんで言ってくれなかったんだよ・・・
なんでおいていくんだよ・・・ 」
兄ちゃん・・・・
「あの後電話したんだよね。」
「・・・・・」
「兄とは認めないって。」
「俺を恨んでるんだと思ってた。」
「お前が俺を弟と言ってくれないから、俺も兄と呼ぶのをやめたんだ。
弟と呼んでくれないならせめて、俺を認めてほしかった。」
「・・・・・」
ヤクザに入ると言っていたので、
いろんなことを調べた。
いろんなヤクザを見てきた。
そこで、和春のことも知った。
兄の刺青を消してあげたくて、医学も学んでみた。
そのうち医学に興味をもち、医学大学付属の高校に入って。
和春の顔を見て一瞬でわかった。
病人なんだって。
結局ヤクザには兄はいなくて、刺青は消せなくて。
そんなとき、尚が帰ってきたんだ。
「俺は生まれこなければよかったなんて思ってない。
生んでくれて感謝してる。
今こうして生きていられるから。」
まっすぐ母を見つめてそういう兄を、
雅輝が扉の隙間からみていた。
兄はやりなおそうしている。
ちゃんと向き合っている。
じゃあ自分は?
そう思ったら兄と居たくなった。
母は笑顔で送ってくれて、
俺は尚に会いにきた。
「俺は認めてほしいだけ。」
「・・・・・」
「弟としてじゃなくていい。友達としてでもいい。」
「・・・・・」
それが俺の願い。
「馬~~鹿。」
そういった尚は泣いていた。
雅輝も、尚の腕を掴む手に力がこもる。
「お兄ちゃん。」
PPPPPPPPPPPPPPPPPPPPPP
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Pっと携帯を取り出すと母親からの着信が10件以上も入っている。
夢は携帯を折りたい衝動に駆られる。
静かに深呼吸して電話を返した。
「もしもし?何よ?・・・うん・・・うん・・・あっそ・・・うん・・・」
それは久しぶりに聞く母の声。
後ろからは小さい子供の声も聞こえる。
「・・・・・もう・・・だから電話しないでっていってるでしょ。じゃあね。
こんなくだらないことで電話してこないで、いまさら母親ぶられたってあんな家。帰らないから」
そういって一方的に電話を切ると携帯を壁に投げつけた。
PPPPPPP
またすぐに携帯が鳴る。
どうせ母親だろう。
そのまま、携帯を拾うとこなく枕に顔をうずくめて耳をふさいだ。
何も聞こえないように。
自分だけの世界に入り込むように・・・
そっと・・・
ここまで読んで頂ありがとうございますた~!