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stringere  作者: 汐音真希
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始まり

一話書き直しました

この世には裏と表がある。


光と影がある。


この世界を生きる私と


この世界を望む俺。


大空の下と海の底。


希望と絶望。


太陽と月。


朝と夜。


束縛と開放。



愛と憎しみ。


喜びと悲しみ。



それが、stringere −束縛ー


  





≪2009年 1月5日 午前10時 東京≫


「・・・うわ〜・・・すごい都会」


笹村尚は、田舎育ち小さい頃から山のあるところに暮らしていた。

そんな彼が上京してきたのは単なる1人暮らしへの憧れだけである。

職もなければ宿もないこの状況ではあったが始めてみる東京に興奮し、

それどころではなかった。


「おお・・・ビルがある!車!車かっこいい!」


田舎ではビルなんかという、建造物は無かった。

見渡す限り、緑緑緑、と、自然に囲まれた環境。


もちろん、色とりどり大小自由な車をこんな大量にみたものテレビだけであった。

18歳になった現在も、車の免許も持っていないし、電車にも乗ったことは無かった。

田舎には駅が1つだけ、一日一回だけ、朝の6時初の初発があると、

その後はもう、次の日をまつしか無い。

そんな状態だからか尚は現在の東京人から見れば非常識である。


車をみて騒ぐわ、信号をみて走り出す、道のど真ん中を歩かなかっただけ幸いといえるかも知れない。


しばらく東京を見学してから今日はホテルにでもとまろう。

そう考えて、重いトランクを1つ持ったまま東京の中を興奮の渦の中

進んでいった。


「・・・?」


大きな立橋を渡り、切れた息を整えて先に進んでいくと、立橋の根元の暗いところで

数名の人がたむろしているのが見えた。


「ね〜。俺ら金ないの〜。お金ちょうだい〜」


「そうそう、さっきたくさんもってたよね?」


「ついでに君可愛いから俺らと遊ばない?」


そんな光景を見ていた尚は昔東京にいった友達に教わったことを思い出した。


『いいか?東京の不良はつよい、俺らなんかとは比べ物にならねぇ。

いくらお前でも、絶対飛ばされる、だから東京に行っても絶対に不良とは喧嘩すんなよ!

目立つ服も着ないこと!シュールないかにも優等生です。みたいな服でいけ!』


それをいわれたときにむかついて今すぐ東京に行って不良に喧嘩を売ってこようかと思ったりもしていた、懐かしい記憶である。

そんなことを考えていると、昔の自分の記憶がよみがえる。


しょぼいながらも精一杯にぐれて親を困らせた。

それが取り返しの付かないことになったこともあった。

消えない傷も、記憶も、残っていて。

変わろうとしても変われない。

結局親に反抗して、東京へと朝早くから家を飛び出し電車に駆け込んだのだった。

それを親は、何食わぬ顔で、見送った気がする。

むしろ自分がいなくてせいせいする、そんな親の気持ちが伝わってくるような

冷たい顔だった。

尚はその顔に背を向けてきた。


「って・・・あ〜あ・・・こんなこと・・思い出してどうすんだか俺は!

え〜っと〜?どうしよっかな?」


とりあえず。という感じで、尚は彼女の元に近づいた。

冷静にこつこつと。

相手は3人。喧嘩を引っ掛ければこっちが負けることは目に見えていた。

軽く済ませてみようと思った。


「いや〜。ごめんごめん、探したよ?」


なれなれしく彼女の肩をもって見せた。

ほっそりとして小さな彼女の肩に変に力を入れたら折れてしまわないかなどという不安すらいだいた。


「・・・なんだよ・・・お前・・」


「俺?あ〜・・俺の彼女になんか用なんですか?知り合い?」


肩に置いた手を頭に移動させ、彼女を自分の方によせた。

彼女も尚の問いかけに首を振り

下を向きながらも恋人同士を装うとしているのか、

尚の服を掴んだ。


「なんだよ〜。男連れだったのかよ〜。」


「じゃあいいや。じゃ〜なぁ〜。」


男たちが去ったあと、少し経ってから尚は彼女を放した。

自分の腕の中の彼女はいかにも尚からはなれたさそうな顔をして、

出し寄せられた腕を握っていた。


「ごめんごめん、いやだった?でも助かったじゃん。」


下を向いたまま彼女はうなづいた。

ぼそっとありがとうございました。と聞こえた気がした。


「きみここら辺の子?あのさ〜・・・あっちょっと?」


ここら辺に安いマンションかホテルない?そう聞こうとしたのに。

彼女は尚の言葉を聞く前に走り去ってしまった。

彼女の走った後には、一枚のハンカチが落ちていた


「・・・yume・・・?」


ハンカチには少女の名前と思われるYUMEという字が刺繍されていた。










+++++++++++++++++++++







少し暗くなったところで、尚は宿を探すことにした。

金が十分残っている、一日とまる程度なら大丈夫だろう。

とりあえず今日は、休んで明日は職も探さなければならない。


と尚が見つけたのは、ホテル 「薫」だった。

今にもつぶれそうな外見に、消えかかり点滅する、薫のライト。

薄暗い町外れ。

しかし、そこにある看板には、1日食事つき 3000円と書いてある。

これはここしかない!

散々東京を重い荷物を持って歩き回った尚はそこに入ることにした。



「はい!ちょっとまった〜。」


扉をあけようとすると、

見知らぬ男性に声をかけられる。


「君、薫のお客さん?」

フレンドリーな感じの男性で、エプロンをしていた。

手にはスーパーの袋と、その中に食材が入っていた。


「さっきこの通りに入るの見えたからきたけど、ここ、つぶれてるよ?」


「え?でも営業中って・・・看板・・」


「あんね〜。」


そういうと男性は点滅した「薫」の照明を片手でずらす。


「無理があったんだよね。ここ、なんつーか、人気ないし、ホテルはやめちゃって

今はバーなの。君トランクもってたから間違えてはいっちゃうかな〜っておもって。」


ずらした照明の後ろには。

閉店しました。というチラシが貼ってあった。


「うわ〜・・ややこしい・・・」


憎らしくいうと男性は、ははっと笑い尚の手を掴んだ。


「え?なんすか?」


「とりあえずここから出ようね〜暗いから。出るから。」


「え・・でるって?」


「幽霊〜〜がああああ」


「しんじねぇんですけど?」


「ごめんごめん、とりあえず・・・俺んちくる?」


「はぁ?」


いきなりの言葉に尚は声を上げた。

一般家庭に、しかもさっきあったばかりの他人の家に上がりこんでいいものなのか。


「それは・・・まぁいいんなら助かりますけど・・」


「いいよ、俺んち一軒やなんだけど、3階建で、1階全然使ってないから

今度貸切しようかって思ってたんだよね。うん」


「あっ貸し出し・・」


「食事つき、お風呂とかもあって、1万円。月ね。」


「安っ!」


「じゃあ決定かな?」


「あっはい!ぜひ!」


「よかった、ちょっと問題児いるけど我慢してね?」


「問題児?」


言いながら男性は尚を家へと案内する。

見事な一軒やに、灯りがついていた。

彼の名前は中間和春。

IT関連の仕事としているといっていた。

家族は17になる妹がひとり。

猫が3匹。

幸い尚は大の猫好きであった。

大家になる和春ともすっかり話しが合い。

下宿の話しはすぐに進んだ。

「じゃあ初めの1ヶ月は無料でいいよ。ここに契約書かいて。」


「え・・っと・・・」


「あっそだった・・俺カレー作んないと、書いてててね。」


「はい。」


そういってキッチンに立つ和春。

そこに1人の少女が入ってきた。


「和。お帰り、手伝おうか?」


「あっ!」


それはさっき尚が助けた少女だった。


「あ・・」


少女も尚の顔を覚えていたらしい、

気まずい顔を見せた。


「え〜?なに2人知り合い?」


「あっ・・え〜っと・・さっき・・」


「何でもないよ。私にんじんきる。」


話しをさえぎられ尚は、さっきのことは言わないほうがいいと察した。


2人でキッチンに立ちカレーをつくる兄弟を見ていると自然と心が温かくなった。


自分もここで暮らしていくのだな・・と実感した。


これから始まる物語を予想することもなく。


只目の前の幸せを見ようとしていた。


ここまでよんでいただいてありがとうございます!

是日評価よろしくおねがいします

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