響
久しぶりに更新した・・すんまそん
「夢がいるからね。」
「うん。」
そういって二人で歩き出す。
自然に心が落ち着いた。
きっと大丈夫。
そんな勇気がわいてきた。
ピンポーン
インターホンを押したのは尚だった。
何の迷いもなく、躊躇うこともなく。
真っ直ぐに指で押した。
「どちらさま・・・?・・・・!」
すらっしとした若い女性。
茶色の綺麗な髪は肩までかかっていて。
なんだか甘い匂いとともに、夢には嗅ぎなれない煙草の煙臭い匂いがした。
女性は尚を見ると目を見開いた。
驚きを隠せない表情で尚を見つめる。
「・・・尚・・・くん・・・」
「・・・母さん・・・」
「え!?わかっ・・あっ・・すいません。」
お姉さん?そう思っていた夢はその場にあわない声を上げてしまい
慌てて口を閉じる。
「響ですVってちがうわ。何?嫁でも連れてきたの?」
「・・・違うけど。」
「じゃあ何?」
尚を睨みつける母、尚も母を睨み返し不穏な空気が流れる。
「けじめ・・・付けに来た。」
「は?」
「・・・入れて。とりあえず。」
「・・・・はい。」
そういって扉を開ける母。
尚は夢の手を引いたまま入っていく。
中が綺麗に片付いていたが。
やはり煙草と香水と酒の匂いが充満していた。
「にしても、響さんが昼間に起きてるって珍しいな。」
「今から寝ようとしてたの。さっき帰ってきたばっかりだもん。」
「お店はどう?」
「微妙常連さんしか来ないわよ。」
「あそ。」
尚の母は水商売をしているらしい。
父親はもう何年か前に他界したらしい。
「で?その子は?」
「あっ。この子は城嶋夢俺の下宿してる宿の大家さんの妹さんで・・」
「下宿・・・?」
「うん。今東京で、この子の家で暮らしてる。仕事も見つけた。」
「彼女じゃないの〜?なんだ〜。つまんない〜。煙草吸うわよ?」
「はいどうぞ。」
そんな会話をしていると、リビングに案内される。
テーブルの椅子に響と向かい合って尚が座り、尚の隣に夢が座る。
夢はずっと黙って尚の様子を伺っていたが、
いつの間にか震えもなくなり、表情もしゃんとしていた。
「家出てから何日たったっけ〜?」
既に吸い終えた煙草を灰皿に置くと響は頬杖をついて問う。
「まだ2が月ぐらい。」
「早いね〜・・・」
「うん。」
「で?けじめって?」
「・・・・」
言葉が詰まった。
母親に門前払いされると思った。
もっと嫌な顔されると思った。
でも母親は簡単に受け入れて、話かけてくれた。
それは自分を許してくれたということなのか?
尚は暫く下を向いていた。
一人で言葉を捜して、
詰まったままの感情を必死に隠そうとしていた。
「尚・・」
夢が尚の手を握り、名前を呼ぶ。
心配そうに除きこむ夢を見つめてまた勇気が出てきた気がした。
「ありがとう夢。」
「・・・うん。」
そんな光景を見つめて響は微かに微笑む。
「・・髪染めたんだ。」
「ん?」
「もっと金髪だったよね?染め直した?」
「あ〜。東京でるときに、茶色にした。」
「更生したんだ・・・」
「まぁそんな感じ。」
「ふぅん・・・」
ふぅと一息ため息をついてから響は話を促す。
「じゃあ東京での話。聞かせてもらおうかな・・・」
「東京ついてすぐに、この子の兄と出会って。宿を貸してもらった。
この子の友達の家のペットショップで働いてる。
そのうち貯金がたまったら仕送りもしようと思ってる。」
黙って聞いていた響はまた煙草に手を伸ばす。
「ちゃんとやってるんだ・・東京で。」
「・・・・・うん。」
「あの時は、絶対こいつなんか東京に行っても飢え死にするに決まってるって思ってた。」
「・・・・・・・・・・」
「ちゃんと生活してるんだね・・・」
「響さん・・あの。」
「ん〜?」
夢の手に力がこもる。
尚もそれに応えて夢の手を握り返す。
「俺は・・・」
「ふぅ・・・」
「達成感というか開放感というか。
落ち着いたというか気の抜けたというか。・・情けない顔してるわね〜!」
笑いながら尚の背中を勢いよく叩く響
「いってぇ〜!」
「なによ、これぐらい。」
話は無事に終わり、尚は父の遺影にお香を向けた。
響も尚がいなくなった後、尚を責めてきた事を後悔していた。
「今日からまた親子だね。」
夢がそういうと尚も響も笑顔で返してくる。
こうやって見ると目元がそっくりだな〜。と思う夢。
「ほれ。いけいけ尚。またいつでもおいでね!夢ちゃん!」
「俺じゃねぇのかよ。」
「尚が夢ちゃん連れておいで。あっ尚なしでも来てね!」
「あ・・はい。お休みの時間にお邪魔してすいませんでした・・」
「なんか太陽が真上にあるのにいう台詞じゃないね〜あははwww」
「あはは」
「あっそだ夢ちゃん。」
そっと響は夢の耳に口を寄せる。
「 」
「え・・・」
「ねV」
「は・・・・はい・・・」
「よし。じゃあ私は寝るわ。お二人さんはすぐ帰るの?」
「ああ。もう帰るよ。」
「タクシーか・・大変だね〜・・・帰りのお金だそっか?」
「いいよ、持ってきてるから。」
「そ、じゃあね。気をつけて。」
「ん。」
「さようなら〜。」
尚の後を追いかけて歩く夢。
尚の手はポケットにつっこまれていた。
―もう手を握る必要はないもんね―
「夢?どうしたの?」
「ん?なんでもない・・」
「そっか。あっそだ。はい」
「へ!?」
そっと手を差し出す尚。
「手。」
「ええ!?」
「嫌?」
「ううん!」
「じゃあほら。」
震える手でそっとゆっくり握ったのは。
「袖wwww」
「だって!」
「あははww可愛いな・・・もう。」
「むぅ・・・」
清々しい尚の顔を見つめながら夢は家で響に言われたことを思い出していた。
―尚は結構素直じゃないから遠まわしに言うこともおおいし。
でも、外から見ればばればれなのよね。―
―夢ちゃん尚のことよろしくね。―
ここまでよんでいただいてありがとうございました