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stringere  作者: 汐音真希
15/23

立ち向かう

よくわかんねぇ。テストやっと終わりました。

きっと分かり合える、そう信じた歩んできた道。

今は1人じゃないから、頑張れるよ・・。




「和さん?」


尚が入ると和春の部屋は明かりがついていなく暗かった。


「どうしたんですか?電気もつけないで。」


「・・・・」


「和さん?」


電気をつけると、和春の暗い顔が見えて尚は和春の顔を覗き込んだ。


「どうかしたんですか?」


「・・親父が・・・・」


「・・・・・・・・・・」


「死んだ。」


掠れそうな声で答えると和春はそのまま黙り込んだ。

尚はそれ以上聞くこともなく、ただ和春が話し始めるのを待っていた。


「昨日。死んだそうだ。今日病院にいって、後藤に言われて。」


「和さん・・・」


「葬儀も、襲名式もやってきた・・・」


「・・・」


「親父が死んで、俺は、天祢組の組長・・・俺・・不安で・・」


「和さん・・・・?」


尚は和春の涙を見ないように、目をそっとそらした。


「悪い・・お前にしかいえなくて・・」


「いいえ。」


「俺・・どうしたらいいんだろう・・」


下を向く和春の声は震えていた。


「和さんのやりたいようにやればいいんですよ。」


尚はその場の椅子に座った。

今だ目をそらしたままだった。


「俺の・・・やりたいように・・・・」


「はい。」


「・・・それで、親父は満足するかな・・・」


「和さんの選択した答えなら、天祢さんも納得するでしょう。」


「尚・・・」


「向き合わないといけないんですよね・・真実から。」


「尚?」


尚はゆっくり和春に顔をむける。

和春が目を真っ赤にした心配そうな顔でみつめていた。


「なんかあったの?」


「明日、帰ります。」


「え?帰るって?」


「夢に言われたんです。逃げてちゃ駄目って、だから家に帰って親と話を

してきます。はっきり話しをつけて、何も引きずらないでまたここに帰ってきたいんです。」


「尚・・・」


「俺は向き合います。だから和さんも向き合って。

自分の人生とか、真実とか。お父さんの・・・死のことも。」


和春唇をかみ締めて俯いた。


しばらく沈黙してから納得したように頷いた。


「そう・・・だよな・・・・」


「そうですよ。」


「ありがとう。尚。俺、立ち向かう。」


「そうですね。」


2人を顔を見合わせた。

微かに笑顔を交わして。

尚を部屋を出た。


尚が出たあと和春はポケットからクロスを取り出す。


「親父・・俺は幸せだよ。夢や、尚、組のやつらに囲まれて・・・

親父とも出会えた。俺は現実と向き合う。」


そう呟くとベッドに転がって目を閉じた。





「なんの話してたの?」


「ん?ん〜・・・」


「なによそのごまかし方。」


「むふふふ〜。」


「きも。」


「すみません!」


夢はソファーに腰掛ける尚の隣にすわる。


「明日のことなんだけど・・」


「ん?」


突然夢は話し出す。

自分の膝で寝ていた猫に向けていた目を夢に向ける。


「なに?」



「1人で大丈夫?」


「・・・・それは・・・」


はっきり言って不安だった。

行って何を話すのか、どうすれば解決するのか。

途中で逃げてしまいそうで、足がすくんで歩けなさそうで。

声が震えて話せない気がして。


怖かった。


「俺は・・・」


そういいかけると、尚の手を夢が握る。


「私・・尚の家庭のことは関係ないからあんまり首つっこんじゃいけないって思ってた。」


「夢?」


「でも、1人で行くのが不安だったらついていくから。」


「え・・・」


「私も・・・」


「私も?」


不安だから。なんていえない。

尚が家を出るのを見送って。帰りを待っているだけなんでできない。

帰ってきたとき尚が別人の様になってしまう気がした。


「・・・なんでもない。」


「夢・・・」


顔を赤くして手を離し目の前のテレビに視線をうつす夢。

その光景を見て尚は微笑んだ。


「なによ。」


尚は若干夢の顔を覗き込むように見つめる。


「来てくれない?一緒に・・・・」


「え・・・」


「え?その気で言ったんじゃないの?」


「いや!そうだけど!そうだけど・・・」


「駄目・・・かな・・・?」


「全然!行く!行く!」


「そっ・・ありがとう。」


そういって微笑む尚。

それを見て夢は一層顔を赤くし目をそらした。


確信犯ではないか、なんて思ってしまう。

そんなことを思ってしまう自分も重症である。


「あ〜・・初恋なのに・・・」


「ん?」


「え!?え!?いや!なんでもないです!」


慌ててごまかしてその場を後にした。


そう、夢の初恋。


尚を夢が去るのを見送ると微かに笑う。


「はは。かわいい」


そしてそっと呟いた。


「ありがとう。夢。」


自分がこれから立ち向かおうとしている不安を取り除こうとしてくれている

不器用なりに頑張る夢の姿が愛しかった。



何より和春と夢と自分のいられるこの空間が

幸せだった。


1人で悩むことはなくて。

1人で苦しむこともなくて。

家族として過ごせる時間が嬉しかった。


それはいつまでも続くものだと思っていた。

和春と。夢と。3匹の猫と。そして自分。


これからも幸せな続くと・・・











はいはいはい。おわた!

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