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stringere  作者: 汐音真希
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分かり合い

なにがなんだか〜

おい受験生テスト期間に小説なんて書いてていいのか〜!


時間には限りがある。その残された時間を大切に

使うんだよ。和春。

決して雄大のような最後を迎えてはいけない。

家族を大切にしてね。





「・・・馬鹿・・・親父とだって・・・過ごしたかったんだよ・・」


そう呟きながら棺を見つめる和春。

手から力なく白い花束がすべり落ち。

次第に涙も流れていく。

それを拭うことなく、和春はそのまま立ち尽くしていた。


最後に天祢が残した言葉は後藤の口から和春に伝えられた。

そのまま葬式は静かに組以外に気付かれることなく行われ、

その後和春の襲名式も行われた。

自分が組長になったとき、それは、天祢が死んだとき、

それは覚悟していたことなのに、どうしてもこの襲名式に天祢の姿を探してしまう和春。


「おめでとう」


そんな言葉がほしかったのかも知れない。




「・・・後藤・・」


「はい。」


タバコを口にしながら和春は目を合わせることなく後ろにいる後藤に話しかける。

 

「お前若頭やれ。次期組長はお前でいく。」


「・・・和春様?いきなりなにを・・・」


「・・・・・・・」


冗談かと、笑っていた後藤も、和春の後姿に何かを感じた。


「なぜ・・そんなことをいうんですか?あなたが引退することには私はもっと老人となってますよ。」


「大丈夫だろう。少なくとも、50までには・・それに、この組はお前に任せたい。

親父の最後を看取ったお前に。そして何より俺を一番理解してくれているお前に・・」


「和春様・・」


「ん?」


後藤は戸惑った。

和春の言い方はまるで・・・

それは聞いていいことなのだろうか・・

触れずにいたほうがいいのか・・

そんなことを悩んでると、和春が歩き出した。


「・・・薫にいってくる。」


「付いていきましょうか?」


「いい・・・」


そういうと、和春は振り向き笑顔をむけた。


「ありがとう。」


その言葉は何に対してなのか・・後藤には理解できなかった。

きっと和春が1人で抱えているものなのだろう。

それが大きすぎて支えきれないのに、必死にふんばって人で受け止めようとしている和春は、

少しでも突付けば崩れてしまいそうに脆く感じた。


「和春様・・・」






バー薫。ここは自分の始まり。

自分に居場所をくれた、天祢との出会いの場所。

自分の気持ちをぶつけたり、悲しみを打ち明けたり。

そんな思い出が一気にこみ上げる。


「くっ・・・」


病院を出るときに感じたあの悲しい気持ち。

それは、自分の父親からの別れの挨拶だったのかも知れない。


「親父・・」


自分を本当の息子のようによくしてくれた天祢。

和春も本当の父のように思っていた。

でもそんな父親の死を看取る事ができなかった自分を悔やんだ。


また自分は1人になった。

そんな気がして悲しくて、どうしようもなかった。

だから溢れる涙を止めようともしなかった。







++++++++++++++++++++



「絶対嫌だ!」


そういうと、希美は勢いよく机を叩く。

その音に、尚の膝の上で気持ちよく昼寝をしている猫も起き上がり、

急いで別の部屋へと非難する。

その様子を目で追ってから夢は希美の隣に座った。


「まぁ・・落ち着いてよ・・希美」


「あっ・・ごめん。」


「うん・・・・」


希美は心を落ち着かせて椅子に座ると目の前に腰かける卓磨を

にらみつけた。

卓磨は一度は希美の威圧に押されたが負けずと睨み返す。

その様子を尚と夢はその場で口を挟むことなく、

じっくりと見つめていた。


「私と一緒に暮らすのがいや?別れろっていわれたのに!」


「でも親とはちゃんと話をするべきだよ!こそこそじゃないくて・・ちゃんと・・」


「それが無理だったからここにきたんじゃん!」


喧嘩の始まりはついさっきの事。

卓磨が希美をリビングに呼び出し、

夢と尚立会いのもと。家に帰ろうといいだした。

希美はそれが、卓磨にとって希美と別れる決意をしたのだと思ったらしい。


「今まではこそこそ付き合ってきた。でももう、はっきり親と話をしてから、

親に納得してもらった上で付き合おう。」


「納得してくれるわけないじゃん!」


「希美・・・実は希美にはいってなかったけど、希美の親が俺の親にあったらしくって。」


「は?」


「それで、俺の親から電話が来たんだけど。お母さんたちすごい心配してるんだって。」


「なんでよ。心配する必要なんてないじゃん。」


「自分の子供なんだから心配するにきまってるだろ!?それに後悔してるって。」


「・・・」


「泣いてたんだって・・・」


そこまで言うと卓磨は黙って希美を見つめた。


「だって・・・お母さんが・・・」


「お母さんが悪かった。希美の好きにしてもいい。だから帰ってきてって。」


尚がいうと、希美は顔を上げる。


「君のお母さんに今日言われたよ。」


「え・・・?じゃあお母さんは・・」


「ここにいることを知ってる。そろそろ迎えにくるんじゃないかな?」


「尚さん!?なんでそんなこと・・・迷惑だったらそういってくださいよ!」


「迷惑ではなかったよ。でも・・」


そういうと尚は顔を希美から背ける。

夢は微かに見せる尚の悲しげな表情に気付いた。


「取り返しのつかないことになるかもしれないから・・・・」


「え?」


かつて自分のせいで壊れた家庭。

とりかえしのつかないことになって、今後悔しても何にもならない。

尚はそんな自分の過去と、今の希美の姿を重ね合わせていた。


「尚・・・・」


夢に肩を叩かれ我に返る尚。

目の前で心配そうに自分をみつめる顔があった。


「ごめん・・大丈夫だよ?夢。」


「そう・・・」


「・・・・・・・・・・」


「とりあえず、希美ちゃん、親とはちゃんと話をつけること。分かったね。」


「でも。」


「卓磨くんと一緒に。」


「・・・・・卓磨・・・・」


希美が不安な顔で見つめると卓磨は希美の手を強く握った。


「大丈夫、認めてもらえるから。」


希美はその言葉に安心したのか、笑顔で返した。


「うん。」





ピンポーンとインターホンが鳴り

夢が玄関へ向かう。

そこには、希美と卓磨の両親の姿があった。


「希美!」


「お母さん・・・」


「もう・・・心配させて・・・」


「うっ・・ごめんなさ・・・い・・」


しばらく再開の喜びを分かち合ってから夢が案内した部屋で、

話向かいあって座ると話合いが始まった。


「娘さんとお付き合いさせてください!お願いします!」


「私も、卓磨さんとお付き合いしたいです!」


2人で思い切って言った後は顔を合わせてうなずいた。








がちゃっと扉が開くと、夢は顔をあげた。

尚も階段を下りる。


「どうだった?」


そうきくと希美は明るい顔を向けて、硬く繋いだ手をみせた。

その手の先にいたのは、卓磨で、部屋の中の両親も笑顔だった。


「いい娘さんですね」


「そちらこそ、いい息子さんで、将来私の息子になるのが楽しみです。」


「これなら私の娘を任せられます。」


「私も姑になるのが待ち遠しいですわ。」


と、口々にいい、結婚まで公認された。


その日のうちに希美と卓磨は両親と一緒に帰宅し、家には尚と夢だけになっていた。


「ちゃんと話できたんだね。」


「そうだね。よかったよ。ね?」


「うん。」


「尚のお陰だね」


「俺は・・なにもしてないよ・・」


「次は尚の番だよ。」


「え?」


尚は夢を見つめる


「尚も両親とすっきりしないとね。」


まっすぐ尚を見つめて。夢は言った。

2人でそのまま見詰め合う。

夢は尚の返事をまっていた。

尚は夢の言葉の意味を考えていた。


とそこに


「ただいま」


荒々しく扉を開けて和春が入ってくる。


「おっ!お帰りなさい!」


「おかえりぃぃぃ!!!」


「え?なに!?俺邪魔だった?」


「え!?いえいえ!」


「そっ。尚・・・ちょっと来て。」


そういって夢に買い物袋を渡すと階段を上がる。

尚はそれを見てから、階段を上がろうとして足を止めた。


「夢・・ありがとう・・俺・・近いうちに家に帰るよ。」


「え?そんなつもりじゃ・・」


「違う」


「え?」


「話してくる。」


そういうと尚は振り向いてまっすぐ夢を見つめる。


「話してまたここに何もきひづらないで帰ってくる。」


そういうと一気に階段を駆け上がる。

夢はそれを見ると微かに笑った。




ここまで読んでいただいてありがとうございます!

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