#31:異世界からの帰還
異世界編最終話です。
「お、おのれ。うわぁぁぁぁぁ」
魔王は叫び声を上げると、徐々に姿が薄くなりしまいには完全に消滅した。
「終わったのか?」
「うん。今回は封印じゃなくて、完全に魂ごと斬ったからもう復活はできないよ」
ライリーはそう言うと、俺の胸に飛び込んできた。
「やっと私の使命が終わったよ。だから、カケル君ご褒美頂戴?」
「ご褒美?」
ライリーは上目づかいで俺にそう言ってきた。何を要求されるのだろうか?
「うん結婚して」
「はぁ?」
「はぁああ!?」
俺の声は胡桃の声によってかき消された。すぐにライリーは胡桃の手によって、俺から離された。
「そんなの認めるわけないでしょ!」
「なんでですか?私とカケル君は世界を隔てて出会ったんです。運命何です」
「だからって何よ!?……カケルは私が」
ライリーと胡桃が何やら喧嘩を始めてしまった。
「あらあら、青春しているわねぇ」
「あはは。ライリーさんは随分積極的みたいですね」
「胡桃ちゃんもだいぶだと思うけどね」
「このままだと、取られちゃうわよぉ」
「ふぇっ」
「何の話をしてるんだ?」
「先輩は聞いちゃ駄目です!」
新条先輩と暁先生と恵令奈さんが何かを話していたので、聞こうとしたら未来によって止められた。
「お、乙女の秘密です!」
新条先輩は恥じらいながらそう言った。胡桃が偶に言い訳として使うけど、先輩がそれを言うと妙に説得力を感じる。本当に触れてはいけないことなんだな。
「それにしても何の話をしてたんだろ?」
「デリカシーなし男」
「あはは」
少し気になって口にしてしまったが、影音にジト目でそう言われてしまった。エマも少しだけ困ったような、何と言ったらいいかわからないような表情を浮かべていた。このことは忘れよう。
「さて、そろそろ戻りましょうか。この後はどうするの、ライリー?」
「うーんそうだね。一応、王に魔王を倒した報告かな」
ライリーは少しだけ嫌そうにそう言った。
「私が戦ったのはこの世界に生きる人のためだもん」
「ライリーは偉い」
「……影音ちゃん」
ライリーは、影音に頭をなでられると嬉しそうにした。
「それはそうと……魔王を倒しても、私たちは帰れませんでしたね」
「確かに、そうですね。俺たちはともかく、先輩たちなら帰れると思ったんですが」
〖あー、あー聞こえるかな?〗
「この声は父さん!?」
〖おう。すまなかった、マシンが作った世界が偶然、異世界と結合してしまったらしい〗
どうやら元々はVR空間に制作した世界に飛ばすはずだったのだが、何らかの力が作用して偶然こちらの世界に飛ばされたらしい。
「おそらく異世界転移……勇者召喚が原因だね」
〖ああ、もう今すぐにでもみんなを戻すことはできるんだが、戻してもいいか?〗
「もう少し待ってくれ」
俺は父さんにそう言った。そして俺たちがこれまでにあったことと、これからやるべきことを話した。まずは、ライリーが王城に報告。そしてライリーの家族に会った後、帰還し、彼女が転移魔法を使ってこちらの世界に来て、暁先生と新条先輩を連れて戻るということだ。
父さんにも聞いたのだが、戻れるのは俺たちのみで、勇者召喚されている二人はVR機器では戻せないらしい。
ライリーに求婚する貴族と、何故か彼女が戦ったり、二人を戻す代わりにライリーにデートをとせがまれる等帰還までの間に厄介な出来事が何件か起きたのだが、俺たちは無事に元の世界に帰還することができた。