#20:ライリーの家
ライリーの両親と会う話です・
「よし、みんな着いたよ!」
ライリーは一軒の家の前に着くとそう言った。
「大きな家ね。この村にある他の家とは比べ物にならないわね」
胡桃は家を見ながらそう言った。周りの家を見るにここは辺境の村と言っても過言ではない。なのにそこにぽつんと一軒だけ大きな家があるのは異様な光景だろう。
「そうね、ライリーちゃんのご両親は何の職業だったのかしら?」
「私の両親は先代の勇者よ!すっごく強かったんだって」
恵令奈さんの質問にライリーは胸を張りながら答えた。ちろちろと俺の方を見ながらどや顔をするのは辞めなさい。
「なるほどな、だからライリーも勇者になったってことか?」
「勇者の子は勇者ってことですね?先輩」
なかなか上手いことを言ってくれるな……未来のくせに。
「まぁ、それを一つの要因だって言われてるけど、勿論それだけじゃないんだからね⁉」
ライリーが頬を膨らませながらそう言った。あきらかに拗ねているな。
「……ライリーだって修行して今の実力があるはず。全てが親の遺伝みたいな言い方はよくない」
「そうですね、私もそう思います」
影音が言ったことにエマも賛成した。確かに、ライリーが選ばれたのだって親が勇者だったからということだけではないだろう。実力だって親の持っていたスキルや魔法、ステータスが引き継がれることもない、全てはライリーが努力したからなんだな、悪いことしたな。
「ライリー、そのごめん」
「謝らなくていいよ!その代わり、なでなでして」
「分かった」
「こらー!」
俺はライリーの頭を軽く撫でてあげた。胡桃は不満そうにしていたけど、何でだろう。俺はそんなことを考えていると、彼女の隣にいたエマが恐る恐る口を開いた。
「あの、そろそろライリーさんの家に入らないんですか?」
「そうだね、じゃあ……よいしょっと。ただいま!」
そう言うと、ライリーは左手を俺の手と絡めた。そして、彼女の家のドアを開けた。
「あら、ライリーじゃない!どうしたの?」
「ただいま、お母さん!」
中に入ると、ライリーと同じく水色の髪をした女性がいた。ライリーが俺とほぼ変わらないぐらいなので、この人は恐らく30を超えているのだろうけど、そんなことを感じさせないぐらい素敵な人だ。
「翔君、初対面の人を年齢で判別するのは、お姉さん失礼だと思うなー」
恵令奈さんがコソコソっと俺の耳元で囁いてきた。俺の考えていることがばれたというのか。当の恵令奈さんはそっぽを向いていて、どうなのか聞くに聞けないのだけど。
「おーい、どうしたのかって、ライリー⁉」
奥から今度は男性の人が出てきた。男性は黒い髪に、髪は短い。それにあるで日本人のような顔をしていた。気のせいだとは思うけどね。
ライリーの両親は俺たちを厚くもてなしてくれた。本来贅沢はあまりしないらしいのだが、料理などもたくさん用意してくれた。
「それでライリーよ。そこの坊主とはどういう関係だ?」
「運命の人で、未来の旦那さんだよ!」
「なっ!」
「は?」
「あらまあ」
ライリーが突然そう言った。まてまて、確かに告白されたけど一応断ったはずだよな。うん、そうだ。そうに違いない。これには胡桃さんも驚いていた。その後に俺を睨むような目線でコチラを見てきた。ライリーの母親は、驚いた様子をみせることはなかった。
「貴様、ライリーに何をした!」
「何もしてません!」
そう、俺はライリーに何もしていない。そもそも、俺からライリーに迫ったわけでもないし。だから素直にそのことを説明すると、若干不満そうな顔をしながらも納得してくれた。
「それでそもそもライリーはどうしてこの世界に戻ってきたの?」
ライリーの母親は聞いた。確かライリーの話だと、俺たちの世界に逃げてきたとか言っていたよな。それなのに、戻ってきたのは両親から見れば不思議なことなのかもしれない。
「私たちの世界にある、ゲーム機というものが誤作動を起こしてこの世界に来てしまったのです。詳細は私にも分からないのですが」
「そうか、ゲームか」
ライリーの父親はゲームという言葉を知っているらしい。そういえば2人は元日本人なんだっけ。2人の元の世界とやらに彼女がちゃんと転移できたのならば、彼女の両親は日本人なのだろう。
「何はともあれ、ライリーが無事で良かったわ。みなさん、ゆっくりしていってね」
「うん!」
「ライリーさん元気そうですね?」
「久しぶりに親に会えて嬉しんじゃないか?」
「そうですね……これが親の愛情というものなんですかね」
そう言うエマの表情は若干いつもよりも硬い。わずかな違いかもしれないが、俺はなんとなくだがそう感じた。
「エマ?」
「いえ、なんでもありません」
「先輩先輩!これからどうしましょう?しばらくしたら先輩のお父さんが元の世界に戻してくれるかも知れないですよね?」
確かに時間が経てば戻るとかありえなくもないけれど、この状況下においてはたしてそうなるのかどうか。
「……私は信用できないと思う。不慮の事故っぽいし、多分どうすることもできない」
「お姉さん的には、こちらの世界に呼び出された可能性もあると思うわ」
「もし恵令奈さんの言うことがただしければ、何が目的なんだ?」
恵令奈さんは首を傾げた。可能性の一つを提示しただけであって、具体的には何も分かっていないらしい。しかし、胡桃は何かが分かった、そんな表情をしていた。
「もしかしたら……いや、私たちが呼び出されたならほぼ確実に狙いはライリーでしょうね」
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