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ミラクル14✡マジカルデーモンスレイヤー  作者: 印朱 凜
第1章 みんな仲良く14歳
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魔法使いティケ その2


「あら、あなたにも少しだけ暗示魔法(サジェスチョン)が、かかっちゃったみたい」


「みたい~、じゃねえええ! 動けねえよ!」


「ちょうどいいわ。私と一緒にベッドで寝ようよ」


 秋水は自分の意思に反して、まるで操られるように裸のティケが待つベッドへ引き寄せられる。


「うわぁ! やめろおおお!」


「そんなに恥ずかしがらなくてもいいよぅ。どうせ私には指1本触れる事もできないんだし❤」


「それはそれでイヤだあああ!」


 人肌に温められた布団に、秋水はご機嫌なティケと一緒に包まった。

 電灯が消されると、予告されていた通りだが、仰向けになったまま不思議な力で金縛りのようになっている。

 しかしその分、五感が鋭敏となっている事にも気が付いた。

 

 ティケから漂ってくる、今までに嗅いだ事もないような芳しい女の子の香り。

 VRゲーム内のティケも、ポリゴンで形作られているとは思えないほどのリアルさだったが、現実に横で寝ているティケは、間違いなく血の通った生きている人間だと実感できた。

 重力をものともせずに盛り上がる胸は、触れると心地よい弾力と共に、暖かな心臓の拍動をその指に伝えてくるはずである。


「ティケ……」


「なあに、秋水? 眠れないの?」


「ああ、ドキドキが収まらないよ……。それよりだ、……なぁ?」


「うん……」


「今日起こった騒ぎ……僕の父さんや母さんも含めて、街の人全員が一斉に同い年みたいになるという超常現象は、君の仕業か? 魔法使いである君がやったのか?」


「いいえ、それはヤマナン。ヤマナンが起こした事なの」


「ヤマナン……?」


 その名は聞き覚えがある。オンラインVRゲーム『ディアブルーン』のラスボスと噂される悪魔。情報は非常に限られており、まだ誰1人として見た事もないという。


「本当かよ? にわかには信じられないな」


「そうかもね」


「ティケ、もう1つ訊いていいか?」


「うん。何かしら」


「数多くいるはずのディアブルーン・プレイヤーの中で、どうして僕を選んで会いに来たんだ?」


「それはね、あなたのプレイスタイルがとても気に入ったのよ」


「へっ? どういう事?」


「低レベルで弱っちいくせに、果敢に強敵に挑んでゆく姿勢かな。いいえ、実はそんな事、どうだっていいの。あなたは周りの人達に、とても優しかったわ。私が自分の事で本当に思い悩んでいた時にも、親身になって助けてくれた。その時、大した事とは思わなかったかもしれないけど、それが私にとって、どんなに救われた事だったか……!」


 ――確かにゲームの世界であるのをいい事に、勇者気取りの振る舞いで常にハイテンション。とても気が大きくなって、いきり立っていたと思う。

 言ってみれば、根暗で情けなくてダメな現実の自分とは180度違う人間を演じていた。

 アバター(アスカロン)も、それに見合うべく理想を具現化したような、逞しい筋骨隆々の身長180センチ超えのイケメンに設定していたはずだ。


「ティケ、現実の僕を見て、ずいぶんとがっかりしただろ」


 自虐的とも思える言葉を聞いてティケは、真剣な眼差しで秋水に顔を近付けてきた。まるでキスしてくるかのような勢いで。


「いいえ。内緒で1日観察してみたけど、私が思ってた通りの人だったわ。こんなに若いとは、ちょっと予想外だったけどネ!」


 ティケは悪戯っぽく笑うと、満足したように再び僕の枕に黒髪を埋めた。


「思ってた通り……なのか?」


「ええ、そうよ。秋水、あなたに会えて本当によかった……」


 現実世界(リアルワ-ルド)の秋水は、中2の平均的な身長で、取り立てて特徴もない顔。しかも近所にある安い理髪店丸出しの、面白みのない髪型。

 勉強もスポーツも決してできない訳じゃないけれど、努力しないタイプなので、人より抜きん出た分野もない。つまりクラスにおいても影が薄く目立たない存在であり、当然異性からモテた経験もない。


『僕の何がそんなに気に入ったというのか……。単なる物好き?』


 秋水が妙に冴え渡った思考を逡巡させているうちに、早くも隣から可愛い寝息が聞こえてきた。

 

 ――そういえば明日も普通に学校があるんだっけ。

 

 暗闇に順応した眼球を、頑張って左方に動かしてみる。

 カーテンを閉め忘れた窓から差し込む月光に照らされて、まるで天使のような、それでいて小悪魔テイストな少女の寝顔が輝いて見えた。

 容易に触れる事もはばかられる、そのミステリアスな神秘性に、秋水は思わず失神してしまいそうになる。


 夜更かしに慣れた体ではあったが、夜の9時前にはティケと同じ夢の世界に誘われたのだ。











 

 


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