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ミラクル14✡マジカルデーモンスレイヤー  作者: 印朱 凜
第2章 2人目はヴァンパイア
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バーサーカー その2

 

 転がるようにマンションの階段を駆け下りてゆくのは、西田秋水。

 下りボタンを押し、エレベーターが14階まで上ってくるほどの待ち時間も、彼にはもどかしかったのだ。

 恥も外聞もかなぐり捨て、なりふり構わず、まず向かった先は1階にあるティケの部屋。

 昨晩の鮮烈な記憶から、モンスターを退治するためには彼女の力に頼るほかない。

 思い詰めたようにカティサークと刻まれた表札があるドア前までくると、意を決して指を骨折しかねない勢いでインターホンの呼び鈴を押した。

 

 ……だが、暫く待っても返事はおろか何もない。

 胃の下辺りがキリキリと痛み、彼に降りかかる死の予感を告げる。


「くそ! 早く出てくれ、ティケ。それとも留守中なのか?」


 再びボタンを押すも、いやな沈黙が続くばかりで、結果に変わりなどなかった。


「無理もないか……。昨日ティケに、あんなひどい事を言った後だもんな」


 秋水は後ずさるようにドアから離れると、暗黒が支配する街中へと走り出したのだ。




   ✡ ✡ ✡




 寺島行久枝は暗闇の中、焦っていた。

 タイミング悪く、塾の帰りに自転車がパンクしてしまったのだ。家族に迎えに来るように携帯に電話したのだが、いつまで経っても車が来ない。


 そんな時、自転車を押す寺島行久枝の眼前に、嗄れた大声で会話している大男が2人。


 ――イヤだな……、怖い。誰なんだろ。

 

 彼女が身の危険を感じたのも至極当然だった。

 こんな日に限って停電なのだろうか。街灯は全て消え、いつもの帰路が真っ暗闇となっていたのである。

 しかも遭遇した男達は熊の毛皮を被った筋肉マンという、日常ではまず有り得ないルックス。

 

 ――お願いします、神様。何事も起こりませんように……。

 

 祈るような気持ちで、目を合わせないように不審者の前を通過する。

 今更、道を変更して遠回りするのも何だかな……、と思っていた矢先、悪夢が現実と化した。


「お嬢さん! こんな闇夜に独りでお散歩とは……随分と不用心ですなぁ」


 不気味なプロレスラーのような髭面男から声を掛けられた。寺島行久枝は、彼の右手に斧のような凶器が握られているのに気付いてしまった。


「…………!」


 驚きと、こみ上げてくる恐怖に悲鳴も出ない。ただ、ただ強張って逃げるように歩を早めるだけである。


「おっと! イケてる俺達を無視するように、すり抜けてくとは、ちょっとひどすぎな~い?」


「きゃああああああ!」


 寺島行久枝は、もう1人の大男に信じられないスピードで背後を取られると、両肩を太い指で掴まれた。押していた自転車のハンドルが支えを失い、そのままガシャン、と倒れる。


「け、警察に今すぐ通報しますよ!」


「……? オイ、ソロムコよ。ケーサツって何だ?」


 ソロムコはかぶりを振ると、ディアブルーンの砂漠エリアに確かそういうモンスターがいる、と適当に答えた。


「ふははは! そんなに怖がるなよ、お嬢ちゃん。可愛がってやろうかと思ったけどよ~。……夜遊びする悪い子にはお仕置きだぜ!」


 耳元までしゃがみ込んだ男が、獣のような息を吹きかける。

 哀れな少女が着ていた紺色制服の上着とシャツは、左右から怪力で引っ張られると、そのまま音を立てて裂けてしまった。


「いやあああ!」


 彼女の胸の発育は、年齢の割に遠慮がちであった。それ故なのか着けている下着も、後ろをホックで留める大人用ではなく白いジュニアブラなのである。


「あれれ? 思ったより小ぶりだな。これじゃあ、揉む事もできねぇじゃねぇか……」


「何だと!?」


 意外と沸点が低い寺島行久枝は、教科書が詰まった鞄で狂戦士(バーサーカー)の鼻面を潰した。


「ぐえっ!」


 頭から被った熊毛皮の頭部が吹っ飛び、押さえた指の間から鼻血が滴る。


「ぐぐッ……、見た目よりヤンチャな仔羊ちゃんだぜぇ。ソロムコよ! 下を脱がす方の仕事は、お前に任せた」


「兄貴ィ! 中途半端! そりゃないぜ~」

 

 両腕をクロスし、胸を隠しながら威嚇する少女のプリーツスカートに、ソロムコの大きな手が迫る。


「こら! 大人しくしろ。ちょっと悪戯するだけだから! 痛くしないから!」


「そうだ、何も命までいただこうと思ってる訳じゃねえ。嫁にすると言ってる訳でもねえ。ただ未経験の弟に人間の女という物を味わわせたいだけなんだ。ちょっとだけ我慢しろや」


「絶対いやあ!」


 走って逃げ出した寺島行久枝に、ソロムコは手にする斧から何やら技を繰り出した。それは、かまいたちの風を引き起こし、悲鳴を上げる彼女のスカートをズタズタに引き裂いたのだ。

 傷は付かなかったが、彼女のシミひとつない美しい脚と少し背伸びした柄のショーツが、ふっくらとしたお尻と共に夜風に晒された。


「今だ、行け! 白いケツに飛び付くのだ! 我が弟よ!」


 その時、予想だにしない方向から現れた人影が、倒れた寺島行久枝の元に跪いた。






 


 

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