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ミラクル14✡マジカルデーモンスレイヤー  作者: 印朱 凜
第2章 2人目はヴァンパイア
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忍者カゲマル その3


「核兵器並みの破壊力を持つ魔法だと? ……あのティケが……嘘だろ」


 秋水は情報屋として一流である忍者カゲマルの言葉を噛み締めた。


「でもね、彼女らしいって言うか、大公爵様の命令を無視した上に、先遣破壊掃討隊長の任命を無下に断ったそうなんだよ」


 カゲマルは痛快そうに長髪を揺らせながら笑ってみせた。笑って話すような内容じゃないはずなのに。


「何でも幻想世界の住人であるはずのティケ殿は昔から人間の事が大好きで、文明社会の破壊なんてもっての外だったらしい。オンラインVRゲームを模したディアブルーンを通じ、様々な人達と交流した結果、ますますその思いを強くしたそうなんだ」


 秋水の脳裏に人懐っこいティケの笑顔が思い浮かび、そのせいか複雑な表情となった。


「――当然、ヤマナンの怒りを買うよね。彼女はそこそこあった地位と名誉を剥奪された挙げ句、ディアブルーンのキャラクター達で構成された軍団を追放されてしまったのだ」


「分かったぞ! それで追放されてしまったのを良い事に、かねてから憧れを抱いていた人間界に転生し、逃げ出してきたって訳なのか」


「その通り……。旧知の仲である俺も運命を共にしたっつーか、ここまで追っかけてきたんだけどね」


 ここで秋水の中に、ふつふつとした違和感が浮上してきたのだ。その違和感の正体とは……。


「ちょっと待て。そんな危険な奴を野放しにして大丈夫だったのかよ? ティケが歩く核爆弾だとしたら放置しておけないのでは?」


 カゲマルは秋水の素朴な疑問に、イケてる顔をクシャッと歪めながら答えた。


「そうなんだ、そこだよ。ティケ殿は可哀想に、ヤマナンから制限を掛けられて野に放たれたのだ」


「それは一体どんな……」


 核心に近付いているのを感じ取ったのか、秋水は緊張のあまり喉を鳴らしたのだ。


「実はティケ殿……MPとHPを共有するように変更がなされたのだ。それがどういう結果になるのか、分かるかな?」


「う~ん、つまり魔法を使えば使うほどHPが消費され、いつかはゼロとなって死亡して……しまう!」


「その通りさ。そういう足枷を付けて追放されたんだけど……彼女、殆ど意に介さずディアブルーンで縦横無尽に暴れ回ったそうだ」


「ティケ……」


「小さな魔法でも1日、極大魔法で1年寿命が縮まるらしいんだけど……すでに120回以上もデカい魔法を使っちゃったらしい」


 秋水はスマホを取り出すと人間の平均寿命をググった。カゲマルには正に魔法に見えたかもしれない。


「ええ!? スマホによると……女性の平均寿命は85歳前後じゃないか。最長でも120歳前後……。ティケは人間じゃないのか?」


「いや、君と同じ人間のはずだよ。もうHPは0で死んでいるはずなのに生きている」


「生ける死者みたいだ。言い方が悪いけど、ティケはゾンビ魔法使い……なのか……」


 カゲマルはスッと立ち上がると、さり気なくカーテンを開けて14階の窓の外から見える夜景に注意を払った。


「それだけじゃないぜ。人間に味方する裏切り者として認定されたティケ殿は今、注目の逃亡者なのさ。ディアブルーンのモンスターどもから、お尋ね者として命を狙われているのだ」


「何もそこまでされなくても……。ティケは言ってみりゃ、ゲームでの役割を全力で演じたって言うか、自分の仕事を全うしただけじゃないか。命まで狙われる程の恨みを買うような事でも、しでかしたのかよ」


「ははは……秋水殿! パーティーを組み、ディアブルーンで戦った日々の事を覚えているか? あんな生易しい戦いなど比べ物にならんぞ。ティケ殿は転生前に『ディアブルーン最強の魔法使い』の名に恥じず、ボスクラスの追っ手を魔法で散々蹴散らしてきたのだ」


「…………」


 もう、開いた口が塞がらなかった。一方不審な気配を感じたカゲマルから笑顔が消えた。


「ちなみに俺はヴァンパイア忍者として昼間歩けない制限が掛けられている」


 彼にとって夜間は、最高に能力が発揮できる研ぎ澄まされた時間帯なのだ。


「秋水殿。マンションの外に招かれざる客が2人ほど現れたようだ。運悪く住人が犠牲にならなければ良いのだが……」






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