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ミラクル14✡マジカルデーモンスレイヤー  作者: 印朱 凜
序章 
2/79

プロローグ



 時間を殺すような退屈極まる授業中に、幾度となく空想してきた僕だけの世界がある。

 

 誰にも話しちゃいないが、こんな凄い想像力を持った中学生はそういないだろう。 

 エロい事しか妄想できない同級生達が可哀想。

 

 視線は無味乾燥な教科書の図や文字列の上に貼り付けたままだが、頭の中では七色の壮大な剣と魔法の世界を駆け巡り、大冒険が繰り広げられているのだ。

 

 もちろん僕は、勇者として異世界で最強にして無敵の存在。


 だが最近、そんな僕の空想癖を満足させるようなファンタジー系オンラインVRゲームが無料配信され、とてつもない人気を博している。


 その魅惑的なタイトルは『ディアブルーン』だ。




 ――でも実際に現実世界(リアルワールド)でドラゴンを目の当たりにすると、本能的に生命の危機シグナルを鋭敏に感じ取り、心臓バクバク、胃腸が締め上げられるような恐怖に手足が硬直し、震えが止まらない。


 


 南守山中学校の屋上に居座るのは、25メートルのプールにピッタリ収まるサイズの両腕が翼となった2本足のドラゴン。


 瓦のような青いウロコを全身に纏い、尻尾の先が槍先のように尖っている。

 

 燃えるような真っ赤な眼光を放つ怪物は、オンラインVRゲーム『ディアブルーン』に登場する有名な中ボス、『ワイバーン』に違いない。


 結界を同心円状に張り巡らせ、全校生徒1000人近くを人質にとると、集まってきた人達を牙の間からチロチロと噴き出す蒼い炎(ドラゴンブレス)で威嚇している。


 僕は幸いにも不登校気味と言うか、大幅に遅刻してきたおかげで、結界内に閉じ込められる事態は避けられたが、無論ただの引きこもり中学生にはどうする事もできない。

 

 いつもの空想やゲームのように武器を取って戦う事もままならず、ただ野次馬のように見守るしかない自分のちっぽけで無力な存在に唇を噛み締めた。



「どけどけ~! そこ危険だぞ!」


 駆け付けてきた若い警察官達の怒号とエンジンの轟音にハッとなる。


 タイヤが8つも付いたダークグリーンの超カッコいい装甲車が現場に到着した。 

 亀のような角張った車体に、菱形を組み合わせたようなデカい砲塔を載せている。


「すげ~、初めて見た!」


 ネットで調べた事があるが、陸上自衛隊の最新装備である16式機動戦闘車に違いない。

 輸送機で近くの空港まで空輸され、高速道路を飛ばしていち早くここまでやって来たのだ。

 その迅速な展開力の前に、戦車は完全に置いてけぼりだ。


 ただ自慢の105㎜砲は、人が作った兵器に対してのみ有効である。それは至って当たり前。そういう設計なのだから。


 ……ワイバーンの結界に対して物理的な攻撃は効きそうにない――。


 そう思った矢先、校庭の球場にある網を張った1番高いポールのてっぺんに、黒い幻影のような人影を見出した。

 忍び刀を背負った奴は、腕組みをしたままワイバーンを見据え、襟巻きを風に揺らせている。


 ヴァンパイア忍者の佐野影丸……カゲマルが昼間に姿を現しているという事は、ティケから日光遮断魔法(サンシェード)をかけられているのだろう。


 そのティケ……通称ゾンビ魔法使いのティケ=カティサークは、誰もいない校庭に独り佇んでいた。

 

 中学校の女子制服姿であるが、若干のミスコピーで全身黒基調。スカート丈もやけに短く、スラリと伸びた脚を丸出しにしている。

 

 美しい魔法使いは、結わえた銀髪のロングヘアーをなびかせると、左手に持った身の丈ほどの長大なメイスを掲げた。

 

 すでに桜色の唇で、結界を無効化させる魔法の呪文を詠唱し始めているのだ。



「オイ、よせ! やめるんだ、ティケ!」



 君は魔法を1回使う度に、1年寿命が縮んでしまうんだろ……。


 


 










 

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