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ミラクル14✡マジカルデーモンスレイヤー  作者: 印朱 凜
第1章 みんな仲良く14歳
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学校生活その2


 次の休み時間に秋水は、約束通り1人で職員室へと向かった。秀島先生に手招きされる。


「失礼します」


「ああ、西田君……。ハイ、これ。返却するわ」


 先生から手渡された物は、綺麗に洗濯され丁寧に畳まれた緑ジャージの上下。


「あ! これは……」


「西田秋水君、あなた昨日困っていた親子連れを助けてあげたそうね」


「ああ、あの時の……」


 秋水は、駅前で急成長を遂げて服が脱げてしまった赤ちゃんの事を今、思い出した。


「あれからお母さんが、名乗りもせずにジャージを貸してくれた男の子をずっと捜してたそうよ。大切なジャージがなくなって困ってるんじゃないかと。まあ、名札付きだったから、すぐにウチの学校に通っている西田君だと判明した訳だけど」


「そうだったんですか。わざわざ学校まで届けに来てくれたんですね」


「お母さんが、あなたの事をベタ褒めして、とっても感謝してたわよ」


「そんな、たまたま居合わせただけですよ」


「また直接会って、あなたにお礼がしたいそうよ。フフ、偉いわね……。それに優しくてカッコいい」


「いやいや~」


 秋水はジャージを受け取ると、周りの若返った教員一同から拍手された。何だか気恥ずかしさに耐えられなくなって、職員室から一目散に逃げ出したのだ。


「なんてカワイイ子……」


 秀島先生は目を細めた後、口紅を上下の唇に擦り合わせるようにした。





 昼食を終える頃、昼休み中のクラスが俄に騒がしくなってきた。

 今度は何だ、と机に突っ伏したままの秋水が教室の後ろの方に振り返る。


「あっ! 秋水! ここにいたの! 1組だったのね」


 この麗しい声は、間違いなくティケだ……。

 3組のティケは、違うクラスなのに堂々と秋水の教室に入ってきた。男子も女子も、ティケ=カティサークの動向に注目している。噂が一気に拡散したためだ。

 教室外にも多数の生徒達が集まってきているし、その顔ぶれの中に1年生の後輩や3年生の先輩まで含まれている事実に、秋水は驚嘆せざるを得なかった。


 ティケは秋水の机に遠慮なく腰掛けると、真っ白で長い脚を組んだ。

 外で見ていた行久枝を始め、クラスメイトからどよめきが起こる。


「秋水、この世界の学校って本当に楽しいね。私が通っていた魔法学園なんて錬金術中心で、マンドレイクの栽培法と抜き方とか、エリクサーやホムンクルスの作り方とか、そんなのばっかでつまんなかったわ」


「いや、そっちの方がよっぽど楽しそうだけど」


「なら私と一緒にホムンクルスでも作ってみる? それには秋水から提供して貰いたい物があるけど」


「ちょっと遠慮しとく。お断りします」


「それにしても学校で大好きな科学とか数学や語学、それに異国の歴史、この世界の地理もだけど、様々な学問をタダで教えて貰えるなんて正に天国。でも国語ってのはちょっと苦手かな」


「そんなもんかね……」


「あっ次の時間は初めての音楽だった。音楽室って所に行かなきゃ! じゃあね、秋水」


 時計を確認したティケが、意気揚々と教室から出て行った。その後、当然のように男女織り交ぜたクラスメイト達に囲まれた。


「オイ、凄いじゃないか。ティケさんと、どういった関係? 親戚っていう噂は本当なの?」


「西田君、普段あまり喋らない人だからビックリしちゃった。それに彼女の事、もっと知りたいな。私らに色々教えてよ」


「君ってコミュ障の陰キャラって噂だったけど、全然そんな事ないじゃん。もっと話そうぜ」


「ティケさんって何者? いや、そもそもどうやって親しくなれたんだぁ?」


 秋水は、決して目立つ事のなかった地味な男子から一転してクラス中、いや学年中の注目を浴びる存在へと1日にして成り上がったのだ。座っている席の周りには多数の人間が集合し、目を輝かせながら秋水の言動を見守っている。

 慣れていない彼には圧迫感すら覚える、この特異な状況に思わず逃げ出してしまいたくなった。


「いや、何なんだろうね、ホント。血は繋がってないんだけど、遠い場所で共に命を懸けて戦った仲間というか……。もちろん、たとえ話だよ! う~ん、同じクラブ・サークルみたいな所で仲良くしていた人……と言えば分かりやすいかな?」


「何だそれぇ!? 俺も一緒のクラブに入るよ。いや、入れてください、お願いします」


 クラスで爆笑が湧き起こった。秋水は座ったままどうする事もできず、下敷きを曲げたりしながら苦笑いするばかりであった。

 教室の外にいた寺島行久枝も、そんな彼の姿を複雑な表情で見守っていたが、廊下に落ちていたゴミを拾った後、自分の教室へと退散した。





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