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ギラ新教の活動(1)

「さあ、これまでしてきた強盗行為について話してください」

「だから、俺はそんなことして・・・」


強盗犯その1は、急に息苦しくなり言葉が出なくなる。

「うぅっ・・・」と呻き、前で縛られた両手を首に当て、大きく目を見開き苦しがる。


「それで、盗んだ物はどうしたのです?早く言わないと死にますよ」


「お、俺は……知らない。グッ……」

「では、いつ頃から強盗をしていたのか答えなさい」


再び【銀色のオーラ】の力を強くして、凍るような声でイツキは訊ねた。


「今回が……はじ……めて……」

「まだ嘘をつく余裕があるようですね」


イツキは冷気を放ちながら、気を失わないよう気を付けて、男の目を視た。

 強盗犯その1は、言い知れぬ恐怖を覚えながら、イツキの視線から目を逸らすことが出来ない。顔の向きを変えようとするが、動かすことすら出来ない。

 そして1分間、本当に息をすることが全く出来なくなった。


「5回……いや……10回以上……やっ……た」


ぐーっと喉を締め付けられるような力を強く感じた男は、「2年……ま……え……から」と答えて気を失った。

 気を失ったその1は、すぐ隣の4人の強盗犯が入っている牢の前を、ズルズルと引き摺られ、その隣の奥の牢に入れられた。


「おい、鞭の音も水の音もしなかったぞ……どんな拷問なんだ?」(その3)

「心配するな、アイツはケガをしていたから気を失っただけだ」


リーダーの男は、動揺する仲間を落ち着かせようと、思い付いたことを言う。




 次に連れて来られたその2には、容赦なく《裁きの聖人》の能力【銀色のオーラ】を放ち取り調べをする。小さな牢は、夏だと言うのに寒かった。

 

「それで、強盗以外の悪行を、どのようにして働いたか言いなさい」

「そんなこと……言える……わけな……」


強盗犯その2は、息苦しさのあまり立っていられなくなり、四つん這いになり地面を這うように、鉄格子の所まで行って「出してくれ、俺は無実だ!」と警備隊長たちの方を見て叫ぶ。

 イツキは地面を這いつくばっている男の側に立ち「死にたいの?」と聴くと、しゃがんで男の瞳を覗き込む。

 男はガタガタと震え出し、イツキの瞳の闇を見て恐怖する。当然、呼吸は出来なくなり、息も絶え絶えである。


「こ、子どもを……拐った。女を……拐った」

「拐ってどうしたのです?」

「売ったり……働かせ……て……うぅぅ……」


大したことも喋らずに男は気を失った。なんて弱い奴なんだ!とイツキは呆れた。




 次に連れて来られた強盗犯その3は、暴れたので腕を後ろ手に縛られ、始めからオドオドして震えていた。

 仲間2人が、あっさりと口を割り、気を失って引き摺られていく様は、気の弱いその3には充分に恐怖だったようだ。

 イツキは【銀色のオーラ】の力を弱めて、後ろ手で縛られ正座している男の前に立ち、無表情なまま問う。


「あなた達は、何人くらい人を殺しましたか?」

「ヒィィーッ!すみません、すみません!よく覚えていません」

「成る程……あなたも死にたいようですね」


それ誰の声?っていう地の底から涌き出たような掠れた声で、イツキは残念そうに呟いた。そして用意させていた椅子に座り、腕を組んで深く息を吐いた。

 

「殺された方々の魂がさ迷っています。特にお腹の大きな妊婦さんが、赤子と一緒に泣きながら苦しんでいます」


「…………」


「罪を認め懺悔し、罪を償いなさい。ここに居る2つのたましいは、償わなければアナタの側から離れられないでしょう」


イツキは男の後ろを右手で指差した後、神に祈るよう手を組んだ。


「ヒーッ!す、すみません。俺は殺したくなかったんだ。子どもだけ拐いたかったけど、母親が邪魔をしたから・・・」


男は恐る恐る自分の背後を見て叫んだ。そして身勝手な言い訳を吐きながら、すがるようにイツキを見た。

 イツキは悲しそうな声で「神よ、自らの罪の重さも分からぬ者をお許しください」と、憐れな男を見て呟いた。

 そして【銀色のオーラ】を強く放ち、再び質問する。


「何人殺したのです。お前だけでなくお前達が殺した人の数を言いなさい」


「く、苦しい……た、助けてくれ……数えてな……い。でも……10人は……こ、殺し……た」


残念ながら、この男も直ぐに気絶してしまった。

 話し?を聞いていた警備隊長たちは、あまりの悪行の実態に絶句する。そして気絶した男を再び引き摺りながら、ぞんざいに牢に投げ入れた。

 そして隣の牢から4番目の男を連れ出し、イツキの待つ牢へと引き立てていく。




「やめろ、放せ!俺は何があっても、絶対に喋らないからな!」


強盗犯その4は、地下中に響く大声で叫ぶ。そして暴れて悪態をつき唾を吐いた。

 抵抗虚しくイツキの待つ牢に入れられた男は、イツキを睨み付けて突進してきた。

 後ろ手に腕は縛られていたが、足は自由に動かせたので、勢いをつけて椅子に座っているイツキに体当たりを試みる。

 3人の隊長は椅子に座ったばかりだったが、慌てて立ち上がり駆け寄ろうとする。

 すんでの所でイツキは椅子ごと横に50センチずれたので、男は勢いのままつんのめって転けた。そして再び起き上がろうともがくが、手の自由が利かず中々起き上がれない。


「お前達の拠点は何処にある?」


何事も無かったかなような顔をして、イツキは静かに問い質す。

 男は牢内を見て、これといった拷問の道具が無いことを確認し、ニヤリと口角を歪めて起き上がると、ゆっくりとイツキに近付いていく。


 イツキはハーッと息を吐き肩を落とすと、【銀色のオーラ】を全開で放つ。

 あと1歩で蹴りを入れられそうだった男は、突然息が出来なくなりうずくまる。

「ウウゥッ」と呻きながら、何が起こったのか判らず、怨めしそうにイツキに視線を向け苦しがる。


「死にたい?それとも話したい?」


イツキは何も持たず、ただ話し掛けるだけなので、男には苦しみの原因が分からない。

 男は自分が呼吸できない原因を探ろうと、血管が浮き上がり真っ赤な顔をして、3人の隊長の方に視線を向けるが、3人は視線を逸らす。

 再び視線をイツキに戻した時、うっすらと微笑むイツキの顔を見て、原因は目の前の子どもなのだと理解した。


 イツキは【銀色のオーラ】を緩めて、様子を窺う。


「な、何をしたお前!し、死ぬところ……ハアハア……だったぞ!」

「はあ?だから聴いたでしょう……死にたいか、話したいかと」

「…………」

「さあ、死にたくないなら話しなさい。アジトは何処です?」


男は何も語らず俯いて、ペッとイツキの足元に唾を吐いた。

 イツキは再び【銀色のオーラ】を強く放っていく。


 そんなことが4回程繰り返された所で、男は意識が朦朧とし『ああ、俺は死ぬのか』と覚悟した。倒れて牢の天井を見つめて、目を瞑ろうとするが、今度は足に激痛がしてギュッと目を瞑り、そして大きく見開いて足元を見た。


「これから右足の指、左足の指、右手の指、左手の指、そして右腕、左腕の順に、ゆっくり1本ずつ骨を折ってあげましょう。痛いのは始めだけです。手の指を全て折った頃には、痛みの感覚は無くなっているでしょう。もちろん気を失わないよう、息を出来なくすれば、苦しくて目覚めます」


そう言いながらイツキは男のすねを踏みつけていた。折れない程度に加減して。

 男は死んでもいいと思っていたが、顔色ひとつ変えず、闇のように黒い瞳で自分を見据える子供イツキに、初めて恐怖を覚えた。

 人を殺しても、殺されそうになっても、如何なる危険に遭遇しても、怖いと思ったことなど1度も無かった男は、ひと度恐怖を感じてからは、ガタガタと身体は震え、喉は渇き吐き気がし始めた。

 寒くて寒くて凍えるように身体は冷たく、目を瞑りたくても瞑ることが何故か出来ない。歯はガチガチと音をたて、唾さえ上手く飲み込めない。


「ア、アジトは……ポブの……街に……ある。ダンバリグという……名前のホテル……の地下に……止めてくれ!お、俺を見るな!地下に……拠点はある。全てを話すから、俺を、違う牢に入れてくれ!頼む!誰か・・・こ、殺される」


男は本当の死の恐怖を体験し、茶色だった髪の毛が殆ど白く変わっていた。

 ブルブルと震えが再び体を襲ってきて、まともに話しなど出来そうになかった。

 イツキは隊長たちに視線を向け、男を取調室に連れて行き、地図で場所を特定するよう命じる。すっかり老人のように変わり果てた男を牢から連れ出したルナ警備隊隊長は、驚きと同時に《神の力》の怖さを実感した。

 よろよろと支えなければ歩けない強盗犯その4を連れ、イツキに深く頭を下げた隊長は、地下の取調室に入っていった。





 残ったのは強盗犯のリーダーだけである。

 イツキは自らが小さな牢を出て、隣の広い牢の入口を潜り、フィリップに鍵を閉めるように命令した。


「さあ、お前には【ギラ新教】の誰の命令で動いていたのか、話して貰いましょう。そして、これからどうする予定だったのかも、全て正直に話すのです」


今度のイツキは慈愛に満ちた顔で、優しく目の前の男に微笑み掛けた。

 リーダーの男は、これまでの様子をずっと隣の牢で聞いていた。全員が苦しみの声を上げ、3人は気を失った。そして腹心の部下はアジトまで喋ってしまった。


 目に前の女のような顔をしたガキの、いったい何処に恐怖する原因が有るのだろう?男は努めて冷静に状況を判断しようとする。

 何が始まっても、自分だけは決して口を割ったりはしない自信が男にはあった。

 イツキの出方を窺っていた男は、イツキが荷物から短刀を取り出すのを見て、フン!と鼻で笑った。なんだ結局刃物で脅していたのか……所詮はガキだと可笑しくなる。

 この俺が、そんな物で脅されて口を割るように見えるとは、とんだお笑い草だと右口角を上げて、蔑むような目でイツキを睨む。


 が、しかし、ナイフを持ってイツキが始めた行動に、理解が出来ないリーダーの男は困惑し、瞠目してその意味を考えようとする。


 イツキは先ず縛られていた足の縄をナイフで切り、次いで後ろ手に縛られていた縄までナイフで切ったのだった。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

忘年会が続き、更新が遅れました。すみません m(__)m

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