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彼方からの移民

作者: 猫艾電介

約100億人。

これは某年、宇宙より移民を申し出た『外宇宙移民』と呼ばれていた人達の総計だ。彼らは侵略船団により故郷を破壊され、適した環境に近似する地球へとやってきた。


外宇宙移民との交流や技術交流は人類に様々な恩恵をもたらすものだった。統一言語の提案に衛星軌道エレベーター。オービットベルトの建設技術、大気圏脱出シークエンスの見直しと、耐用可能な新金属の合成。ありとあらゆる情報が移住の見返りとして設けられた。


そして、第1次移住によって受け入れられた外宇宙移民は、またたく間に国や地域に馴染んだ。

移住国の伝統を理解し、適応し、そして奴隷として酷使されようとも文句一つ言わない。疲れることもない彼らに人権を与えず飼い殺しにしようとする者すら現れたが、往々にして外宇宙移民法によって厳しく処罰された。


外宇宙からの移民により、経済は大きく発展した。懸念されていた職業人口の停滞は解消され、職にあぶれた人々は手厚い保護を受けられるまでになった。2次、3次とやってくる移民の数は増え、人類はますます技術を発展させ、叡智を築き上げた。


そして4年後、世界初の外宇宙移民大統領が誕生した。スキャンダルもなく、容姿端麗潔癖な新大統領はまさに今の時代を象徴する、一番星のような存在だった。


当然、大統領の粗を探すものもいたが、彼らはすべからく適切な治療を受けることとなった。

嫉妬等の過剰な感情は疾患として扱われ、適切な治療を受けられる環境が整ったのもまた、外宇宙移民による資源提供と技術進歩によるものだ。


外宇宙移民大統領就任後、世界各地で外宇宙移民出身者が統治者になり始めた。彼らは篤い信望の下、民衆主義により選ばれた存在。民主主義の論理を破って暴力行為に走るものもいたが、次第の流れに逆らえず消えていった。


現在、地球の人口は約170億人。58%が外宇宙移民、あるいは外宇宙移民2世である。


ある者は地球に住み、またあるものは衛星軌道上に建設されたオービットベルト地域に移り住み、適切な人口バランスが保たれた。


住み慣れた国から諸外国への移住に抵抗を見せるものもいたが、環境の改善と統一言語は緩やかに移住への抵抗感を削ぎ、国の概念は形骸化した。

今は誰でも気軽に、いろんな場所に移り住める。都会だろうと田舎だろうと、住む場所を選ばなければ問題はないし、たとえ周囲が荒野であろうと1時間足らずで物品を届けてくれる。そんな暮らしに不満を漏らす者は居なかった。


第18次移民受け入れにより移民の延べ人数は150億人を突破。もはや地球文明は彼らなしに立ちゆくことはできない。しかし、旧人類――人間はいつも通り暮らせている。差別も偏見もなく、適切な治療を受けられる。不平不満もちゃんと届き、反映される。


何1つ不満のないまま、私達地球人は日常を謳歌している。不満を持つ者は誰1人としていない。

誰1人、そう、誰もいない。不満を持つものはいつの間にか消えているのだから。

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