サムライ少女壱
都内にある、極普通の高等学校。
その校内にある三階の一番奥の教室の、一番端の最前線に座る、可憐な少女が、凛とした空気を纏って座っていた。
彼女の名前は、佐々木紅葉。
3年4組所属の、剣道部部長だ。
引退間近の彼女の頭の中は、次の大会についてだった。
夏にある大会には、自分が前回手こずった相手が出る。
次に会うとき、どのくらい強くなっているだろうか。
そんな淡い期待を胸に刻み、外を見る。
どんよりとした、今にも雨が降りそうな曇り空。
こんな日は、犯罪者が湧き出る。
胸の奥にあるどす黒い感情を押さえつけ、ホームルームに集中することにしよう。
これが終われば部活なのだから。
*
ホームルームが終わり、部活の時間となった。
「主将、ご指導お願い致します!!」
2年生の、次期主将候補の一人が威勢よく言う。
「ええ、良いですよ。では、始めましょう」
私は軽く微笑むと、そう返した。
胸の奥のどす黒い物が大きくなる感じがした。
*
部活が終わって、帰宅した私は、まっさきにシャワーを浴びることにした。
1日の疲れと汗を、綺麗さっぱり洗い流した私は、いつの間にやら、雨が降ってきたことに気づく。
「さて、始めようか」
独り言をつぶやくと、今朝の朝刊を目にする。
内容は、先月から世間を騒がせている、連続殺人事件のないようだった。
憶測からして、次に現れるのは―――***公園。
私は愛用の刀を手に取ると、雨が降る外へと踏み出した。