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本箱の味方  作者: 髙橋 翔太
あの噂って…
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町の本屋さんに関する噂話

僕の生まれ育ったこの高見市は何もないのどかさだけが売りの田舎町だ。


唯一の特徴は高見市民の人たちは、昔から都市伝説とか七不思議がとにかく好きなんだと言うことぐらい。


それもゴシップやワイドショーの様なものではなく、超常現象のような夢の話だ。

高見市民は今日も井戸端会議でそんなオカルト話に花を咲かせている。



もちろん、高校生であってもそれは例外ではない。

誰かを笑わせようとそんな話をして、今日も1日が始まる。





僕は、授業が始まる前のざわついた教室で教科書を探していた。


「おい! 山内! 知ってるか? 小判ホームのウ・ワ・サ…」


不意打ちをくらって振り向くと、話の内容こそ聞こえなかったが「仕入れたての都市伝説だろうな。」と、わかるほどに友人はその目をキラキラさせて僕の反応を待っていた。


「えっ? 5番ホーム?」

「5番ホームじゃねぇよ!」


そのツッコミで直ぐに何が言いたいかこの町の人はわかる。


「…小判ホームかぁ~。」


と言い返すと、


「え~ そのギャグはもうウケないって… うぅん 高見は田舎だから2番ホームまでしかありませんよ!」



小判ホームとは、この町にあるメジャーな本屋さんだ。

普通の本屋さんと何も変わらない、ただ本や文具などが売られていて、耳に残るフレーズが店内放送で流れているポピュラーな本屋さん。

ポピュラーと言っても高見市に本屋さんはここしかないんだけど… ちなみに正式名称は「高見の小判ホーム」と言う。



「ホントに聞き間違えたんだから仕方ないじゃん! そんで小判ホームの噂って何?」


なんだかんだ言いながらも、こんな話に前のめりになるのは、高見市民の証だ。


「いやね… 小判ホームに本を買いに行って、それも文庫本コーナーなんだけど… そこにある呪われた本を立ち読みすると、神隠しにあって、どこかに連れて行かれてしまうって噂があるんだよ!」

「え~ じゃあもう小判ホームに行けないじゃん。」


なんて、いつものようにワイワイと話をしていると、


「そんなの立ち読みされないように、小判ホームが噂を作って流してるに決まってるじゃない。」


と鳩に豆鉄砲を食らわせにやってきたのは、クラスメイトの立花さんだ。

「立花さんって、冷めてるよなぁ~」とは思ったが、そんな横槍に納得させられていた。


「授業が始まるんだから前向いときなよ。」


と、あごの先で進路を指し示してもらい、立花さんに怒られて僕はゆっくりと前を向きながら

「そういえば文化祭の看板を仕上げなきゃいけないから、小判ホームで絵の具とかペンとか、買わなきゃいけなかったな~」

と少し怖いようなでもワクワクするような、そんな気持ちになっていた。


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