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それから馬車が進むことしばらく。
「そういえばですけど、セルゲイさんって街には何度も来てるんですよね?」
「ん?そうだが、それがどうかしたか?」
「はい。実は私たち、これから向かう街には初めていくんですけど、どこかいい宿があったら教えてほしいなと思いまして」
「ああ、そういうことか」
セルゲイはなるほどなとうなずく。
「だったらどういった宿を探してるんだ?イヴたち安いだけの安宿を探してるってわけじゃないだろ?」
「はい。できたらきれいなところがいいですね。リリスちゃんは何か要望有ります?」
ここでイヴは今まで話に加わっていなかったリリスに話を振る。
「私としては中心街から近くて、ご飯がおいしくて、そこそこ広い宿だったらなんでもいいわ」
「……リリスちゃん、それはなんでもいいって言わないよ」
しかし帰ってきたリリスの答えに何度目かになるあきれ交じりの感想をこぼすイヴ。
「なるほど。きれいで、中心街に近くて、飯もうまくて、そこそこ広い部屋ね」
イヴとリリスの希望を聞いて該当する場所を考え始めるセルゲイ。
「なんかすいません。やたら注文が多くなって」
リリスのせいで注文が多くなってしまい思わず恐縮してしまうイヴ。しかしそんなイヴの様子にセルゲイは笑って答える。
「はっはっは。まあ気にするな。そのくらいお安い御用さ。それで宿の件だが、あるにはあるぞ。当然値段もそれなりだが」
そう言ってセルゲイはイヴとリリスに『どうする?』といった感じの視線を向ける。
要求が多くなるほど値段も吊り上る。実に当然のことだ。
そしてこのセルゲイの問いにはリリスの方が答える。
「ええ、問題ないわ。予算はそれなりにあるから」
そう言うと、リリスは馬車の荷台の方に視線を向ける。そこには先ほどイヴが倒した魔物が乗せられている。
「ま、そうだわな」
イヴの視線の意味を察して、セルゲイは首肯する。
その意味するところとは、魔物がそれなりに高額で売れることである。
まず大前提として、魔物は強さにおいて最底辺の個体を除き、神聖力がなければ倒せない。その上一定以上の強さの個体となれば、神聖力をより高度なものへと昇華させる神聖術を用いなければ討伐は不可能である。
しかし現状、神聖力を使える人間というのは人類全体の1割以下でしかない。しかもそのうちの大部分がただ神聖力を体外に放出することどまりである。身体能力を向上させるなど、より高度に神聖力を扱う神聖術の領域まで到達する人間などほとんどいない。
この事実だけでも魔物が市場に出てくることの希少さを十分表している。しかし実際のところ、この話にはさらに続きがある。
実に当然なことであるが神聖術が使えるという貴重な才能が放っておかれるということはまずない。とりわけ国というものが放っておくわけがない。実際、イヴたちが今いるエウラリア王国という場所では、神聖術使いのほぼすべてが国の騎士団などのなにがしかの国の組織に所属している。これが何を表しているのかと言えば、一定以上の力量を持つ魔物の討伐は国の力を借りなければほぼ不可能ということである。そうなれば当然、討伐される強い魔物の大部分が国の預かりとなる。国預かりとなった魔物は一部を除き、大半が国の研究所などに持って行かれる。結果として国による魔物の半独占状態が完成するわけである。
これらのことから市場に流れる魔物というものはかなり少なく、値段も上昇、購入者ははく製などにして自身の財力を誇示したい金持ちや個人で魔物を研究したい金持ちなど金持ちに限定される。
そんな状況において、イヴは個人で魔物討伐が可能なのである。それも一撃で倒せるため、討伐した魔物の状態もいい。お金を持っていると認識されて当然である。
「で、話は戻すが宿だったな。それなら≪3つの十字≫ってところがおすすめだな」
予算の心配もないようなのでセルゲイは改めておすすめの宿について話し出す。
「≪3つの十字≫ですか。どんなところなんですか?」
セルゲイの言葉に質問で返すイヴ。
「そうだな、街でもおそらく1,2を争うくらいにはいいところだと思うぞ。たまに貴族とかも使ってるらしいし。まあ当然値段も1,2を争うんだが」
「なんだかすごそうですね」
「まあ実際すごいんだがな。詳しくは見てのお楽しみってことで」
ここでにやりと笑いもったいぶるセルゲイ。
「うぅ。気になりますけどわかりました。楽しみにしておきます」
「はっはっは。それがいいぞ。さて、短い間だったが旅ももうすぐ終点だな」
そう言ってセルゲイは前方を指さす。その指の先には大きな街とその入り口。
「あれが俺たちの目的地。エウラリア王国有数の商業都市≪レルタ≫だ」
またしても遅くなりました。前も言ったけど、なんかホント書けない。数百文字書くのにも平然と数時間とかかかってるし…。




