<2-3>
「いやあ、それにしても最近魔物が増えてるってのは本当だったんだな」
馬車を進めながらセルゲイが言う。
「そうなんですか?」
セルゲイの言葉に思ったままの疑問をイヴが口にする。
「ああ。どうも最近魔物の目撃情報が増えてるらしくてな。今まで魔物がほとんど出なかったような場所にも目撃情報が出てるらしい」
「何だか物騒ですね」
「まったくだ。かくいう俺も、まさかこの街道で魔物が出てくるとは思わなかったよ」
「というと、やっぱりさっきの魔物はイレギュラーなことなですか?」
「ああ。俺も10年以上この道を使ってきたが、魔物が出たなんてさっきが初めてだな」
セルゲイのもたらす情報にイヴはうなずきながら、つい先ほどの魔物との遭遇を頭に思い浮かべる。
「いやあ、それにしても俺も運が良かったよ。普通俺みたいな一般人が魔物に襲われたら、殺されて終わりだからな」
今からほんの少し前のこと。イヴとリリスは次の町を目指して2人街道を歩いていた、そんな時である。イヴたちは狼のような姿の魔物に襲われそうになっている馬車を見つけたのである。
「それにしてもイヴは強いな。まさか魔物を瞬殺しちまうなんて」
話の流れからもわかると思うが、襲われそうだったのはセルゲイが乗る馬車である。セルゲイは商人であり、馬車に乗せている積み荷のほとんどはこれから向かう町で売るための商品である。そしてそこには食料品も含んでいる。おそらくこれらの食料品に眼を付けられたのだろう。狼の姿の魔物は、とても普通の狼では出せないような猛スピードでもって馬車に急接近。セルゲイに逃げ出す時間さえ与えなかった。
そんなセルゲイにとって絶体絶命の時である。偶然人間より優れた視力でもって、現場を見ていた者がいた。吸血鬼のイヴである。イヴは襲われそうなセルゲイを発見すると、吸血鬼の人間離れした膂力に加え魔力まで用いることで、魔物がセルゲイを襲うより早く馬車まで到達。その後、タッチの差で馬車に到達した魔物に対し、即座に懐に飛び込むと魔力のこもった抜き手でもって魔物の体を貫き、一撃で絶命させた。
「いえ、あのくらいなら全然ですよ」
イヴは少し照れたようにし、セルゲイの言葉に返す。
「いやいやいや、普通魔物を瞬殺するとか無理だからな。そもそもちょっと鍛えた一般人程度じゃ瞬殺はおろか、単独で倒すのさえ不可能に近いからな」
しかしイヴの返答に対し、こいつは何を言ってるんだとばかりにセルゲイはイヴに言い募る。
「えっと、そう、ですね?」
セルゲイの言葉についてイヴは考える。すると今更ながら一般人視点だとそうだったなと思いだすと同時に、本当に魔物を倒すことをたいしたことじゃないと思っている自身の感覚のずれを認識する。
『別に私じゃなくても他の吸血鬼のみんなも同じことができる』
研究所から逃れて2年。いつの間にかイヴの判断基準が人間のそれではなく、吸血鬼としてのそれになっていた。2年前まで自身も人間の側であったはずなのにである。
イヴが『あれ?いつの間に?』などと思案していると、その様子をどう受け取ったのか。
「きれいな花にはとげがあるとはよく言ったものだな」
とあきれたような感心したような面持ちでつぶやいた。
最近ホント書けない…。どう書こうか迷うこと迷うこと。




