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「……それはリリスちゃんのやりたいことなんですか?」
「うーん、どうだろう?そうだと思う気もするし、そうじゃないような気もするし。ただ……」
「ただ?」
「どっちにしろ仕方のないことかなとは思ってるかな」
相変わらず困ったような、曖昧な顔をするリリス。その表情を見たイヴは顔をうつむかせる。
「……めです」
「ん?どうしたのイ―」
顔をうつむかせ何事かつぶやくイヴ。その姿にリリスはどうしたのかと声をかけようとした。しかしそのかけ声は最後まで紡がれることはなかった。
「そんなのダメです!!」
イヴはうつむかせていた顔を上げたと思ったら大声を上げる。イヴの声に何事かと周りもイヴたちの方を向くがイヴは気にせず言葉を続ける。
「ダメです、そんなの認められません。だっておかしいじゃないですか。今までずっとつかまってて、何年も何年も研究所を出ようって頑張ってきて、それでいざ出たら今度は危険だからって自由を奪われる。こんなのただつかまった先が研究所から吸血鬼に変わっただけじゃないですか!」
「イヴ、別に私はそれがいやってわけじゃ―」
「いやなことじゃなくても、全然したいことじゃないじゃないですか!確かにここにいるみんなのためになることだからいやなことではないと思います。でもいやじゃないとやりたいは全然同じじゃないです。リリスちゃん言ってました、自由に生きたいって、やりたいことがあるって。でもそのやりたいことって世界を変えるなんてことじゃなかったはずです」
「……イヴ」
「『友達としゃべったり一緒にご飯を食べたりみたいななんでもない自由がしたい。』そんなものだったはずです」
「……」
辺りは静寂が支配していた。誰も何も言わない。しかし考えるのは皆イヴの主張について。
今まで研究所から出ることだけを考えるようにしていたために皆忘れそうになっていたが、渦中の人物であるリリスはいまだ16歳の女の子でしかないということ。ここにいる面々の中でも、リリスの年齢は下から数えた方が早い。そんな少女の自由をこれからも奪い続けるのかという疑問。しかしその行為は確実にやった方がいいという事実。そんな今まで考えないようにしてきた問題を今ここで突きつけられてしまった。
そうして無言の時間がしばらく続いた後である。一人の声によってその静寂は打ち破られた。
「話はそれで終わりか?」
それは吸血鬼たちのリーダー的存在であり、最高戦力でもあるカインによってもたらされた。
「お前の話は分かる。だがそれを俺は認めることはできない」
そしてカインは続けざまに否をイヴに突き付けた。




