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「そろったか」
カインがイヴたち全員を見渡しながら言う。そのカインの隣にはリリスもいる。
なんとなく感じていたが、おそらくこの集団のリーダー的存在はカインとリリスの二人なのだろうとイヴは予想をつける。
ちなみにイヴはこの時リリスのすぐ横にいた。
「まず今後の確認をしておこう。これから一番近くの廃村に向かう。そこで当面必要な物資を確保する。それから―」
カインの説明は続いたがその中でイヴは一つの言葉に疑問を持った。
「廃村?」
そう、廃村という言葉である。まず疑問として廃村がこの近くにあるのかという点。そしてもう一つずっと研究所にいたカインたちがなぜそんな場所を知っているのかという点。
「どうしたのイヴ?」
イヴが廃村について考えていると隣のリリスから声がかかった。
「リリスちゃん。いえ、近くの廃村なんてどうやって知ったのかなって」
「そのことね。まあ、ずばり答えを言うとこの情報も研究所の中にあったものよ」
「廃村の情報がですか?」
「うーん。元々は廃村の情報ってわけじゃなかったんだけど、結果的に廃村の情報にもなったっていうのが正しいかしら」
「どういうことです?」
「あんまり気持ちのいい話じゃないし、イヴにも辛いこと思い出させちゃうかもしれないけど聞く?」
「えっと、はい」
「まあ簡単に言うと、あの研究所が実験のためにつぶした村ってことよ。イヴの住んでた村みたいに」
「……」
「あいつらがやってたのっていわゆる人体実験だからね。だから被験者をたくさん必要とした。村をいくつもいくつも使いつぶす程度には。これ行こうとしてるのはね、そんな村の一つよ」
「……つまり私たちと同じ」
「そう、犠牲者の村よ」
「……」
イヴは研究所のあった方に目を向け思う。いったいどれだけの犠牲を積み重ねた上にあの研究所はあったのかと。そしてそんなものを平然と容認していた人間たちを憎悪する。
「ホント、人をなんだと思ってるのかしらね」
「……うん、本当に」
「さて、最後である程度の基盤を整えた後のことだが」
イヴたちが廃村と研究所による犠牲者について考えているうちにも話は進んでいた。
「その後どう生きていくかについて今一度考えていてほしい」
未来について。自分がどう生きていくかについて。
「俺たちは吸血鬼。人ならざるものだ。だがだからと言ってそれ相応の生き方を強制されなければいけないわけではない。今一度人とともに生きる。人と離れて仲間内だけでひっそりと暮らす。あるいはこんな理不尽を強いる人間に復讐をする。色々な生き方がある。事前にある程度意見は聞いているがそれで後悔がないか今一度考えてくれ」
イヴが研究所を出ようと思った理由。それは一度何もかもを失くしてしまったけどそれでも新しいものを、自分を求めたから。新しいものや自分が具体的にどんなものかはわからない。でも研究所につかまっていたんじゃ何もできない。何かをなすためのは相応の自由が必要である。
かなり抽象的な願いであるとイヴ自身もわかっているが、これこそ嘘偽らざるイヴの願いである。
ではこの願いにそう生き方とはどんなものか?
イヴはこれからそれを考えなければならない。
「……まあこのことはもうしばらく保留にしましょう。そういえばリリスちゃんってこれからどうするんでしょうか?」
しかし当然答えなどすぐ出るはずもなく、今度は別の気になることに思考が移る。
「うーん。これは本人に聞いてみるのが一番でしょうね」
イヴはそう結論付けると早速リリスに直接聞いてみることにした。
「リリスちゃん。リリスちゃんはカインさんが言ってた未来についてどうしようとか何か決めてます?」
「私?私は……」
そこでリリスはなぜだか言いよどむ。
「どうかしました?」
「ううん、なんでもない。それでこれからのことだっけ。私は……カインたちと一緒にいようと思ってる」




