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時刻はすでに深夜を回る。辺りは暗く、夜が明けるのはもう少し先のようだ。遠くの方を見るとそこにはイヴがほんの数刻前までいた研究所が見える。いや、より正確に言えば研究所だったものだ。すでに研究所は実験機器や研究資料といった内部を破壊され、ほぼすべての機能が停止している。
そんな自身の運命を捻じ曲げた元凶を遠くに見ながら待つことしばらく。徐々にイヴたち以外の人影が集まりだしてきた。イヴにとっては初対面の人ばかりであったが、リリスたちの反応に加え『なんとなく自分と似ている気がする』という魔力を使えるようになってから吸血鬼に対して感じる奇妙な感覚からリリスたちの仲間の吸血鬼であると判断した。
「皆無事であったか」
時間がたってくると知っている顔も現れる。リリスを封じていた扉の守護者と戦っていたキンバリーだ。リリス救出の際、イヴたちは研究所を出ることを最優先としたため彼とは途中でわかれることとなった。そのため守護者との戦いがどうなったのかイヴはずっと気になっていた。
「キンバリーさん」
「ん?イヴか、どうした?」
「無事でよかったです。それとあの隠し通路の人とどうなったのか気になって」
「やつか……。すまない、やつに関しては取り逃がした」
この発言にイヴは少し驚いた。キンバリーが無事にこの場にいるということはてっきり守護者を倒したのかと思っていたからだ。
「逃げたんですか?」
「あぁ。俺とあの男は戦いの最終盤まで戦っていたのだが、決着がつく前に研究所の機能がほぼすべて止まった上にあの場も崩落の危険性が出始めてしまってな。もはや勝負を続ける意味がないと言ってやつは戦闘を離脱した。一応この場所とは違う方向に行ったのだけは確認したが、それ以上はわからない」
「そうだったんですか」
「キンバリーとイヴか。何の話をしているんだ?」
キンバリーと話していたら突然横から声がかかった。声のした方を振り返るとこれまた知った顔だった。
「カインか」
「あぁ。ひとまずお互い無事で何より。なかなか戻ってこないから少し心配していた。それで、イヴと何の話をしていたんだ?」
「イヴたちと別れた後どうなったかについてだ」
「なるほど。それは俺も気になるな」
「そうか。では先に謝っておく、すまない。リリスを封じていた扉の守護者だが取り逃がした」
「……そうか。まぁそれは今言っても仕方ない。お前が取り逃がすほどの敵だ、おそらく誰がやっても取り逃がしていただろう。それにあの研究所の構造上最初から人員すべてを始末するなんてのは無理な話だ。おそらく何人かは最初から取り逃がしている。それが一人増えただけの話だ」
「……わかった。そういうことにしておく」
その言葉を最後にカインはイヴたちの元から離れ別の人の元へと歩み寄っていった。
イヴもまたキンバリーとの話が終わると今度はキンバリー以外の道中別れた人たちの無事を確認していく。
そうして時間は過ぎ、イヴが知り合いの無事を確認でき安堵していると、カインたちにより研究所から脱出した吸血鬼全員の無事もまた確認されたのだった。




