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今回は視点変更有。ほぼカイン視点の話となります。
「さて、そろそろ動けるかしらイヴ?この戦いももうすぐ終わるわ。だからいつでも動けるよう準備してね」
「うん、そうだね……」
気付けば戦いはすでに終わりかけている。形勢は吸血鬼側の優勢。そしておそらくこの状況が覆らることはもはやないだろう。
「ねえリリスちゃん」
「どうしたの、イヴ?」
「私、ちゃんとできたかな?」
「……ええ、もちろん」
「そっか、よかった」
そんな戦いの終わりを見ながらイヴは今一度動けるよう準備をするのだった。
カインと敵のリーダーの男の戦いは拮抗していた。
両者の攻撃はともに当たりさえすれば必殺となるであろうものである。そのためどちらも一撃たりとも相手の攻撃を受けられない。そのため両者とも戦闘の激しさに似合わずほぼ無傷の状態であった。……その時までは。
「やっと捕まえた」
カインの戦闘とは別の戦闘が決着を迎えようとしていた。
「なっ!?どういうことだ?」
「それはどういう意味で聞いてますか?でも、あなたに教える義理はありません。リアさん、やってください」
見れば敵にやられてしまったラファエルに変わり途中から戦闘に参加していたイヴにあの赤い刃が突き刺さっていた。しかしイヴは行動不能に陥ることなく、逆に刺されて相手が油断した隙をついて敵の拘束を行っていた。
「なるほど、そういうことか」
カインは視線を敵のリーダーに戻す。相手もまたイヴたちの戦闘の決着を横目に見ている。もちろん横目に見ながらも攻撃はきっちりしてくる。
しかしその攻撃は今この場に限れば命取りになる。
敵の赤いダガーによる薙ぎ。それは吸血鬼にさえダメージを負わせるもの。しかしカインはそんなものないかのように一気に相手の懐まで飛び込む。
ザッ。
一気に腹部から左肩まで切られる感触がする。当然痛みはある。だが真祖であるカインにはそれだけだ。
おそらくこの状況はリリスの作戦なのだろうとカインは考える。
イヴが戦闘に加わったことで戦闘はどうにか均衡を保った。しかしこの均衡も時間の問題だとカインは考えていた。確かにイヴの能力は高い。身体能力だけに関して言えばイヴと拮抗できるのは自分くらいなものだろうとカインは考えている。しかしいくらイヴの身体能力が高くとも、彼女の戦闘能力はそれほど高くないとカインは見ている。実際イヴの動きは素人のものであり、身体能力の高さでそれを埋めているに過ぎない。そして相手は戦闘のプロである。初めのうちはどうにかなるかもしれないが時間がたてば確実に倒されてしまうとカインは考えていた。そしてその予想は的中し、イヴは相手の凶刃を受けてしまった。
これはまずいとカインは一瞬あせった。
しかしカインの考えと現実は違った。どうやらイヴの目的は敵に刺されることにあったようだ。普通に戦闘していてはイヴの敗北は必至。だったらどうするか?イヴのやった答えは相手が攻撃をした後の隙をつくという実にシンプルなものだった。だが戦闘のプロ相手にそれを成功させるのは難しい。だからそれを成功させるためにイヴは戦闘中ずっとする必要もない敵の攻撃をよけるという普通の戦闘を行っていた。そうやってあたかも相手の攻撃がイヴに有効であるかのように見せかけていた。結果、イヴとリリスのもくろみ通り敵は隙を見せ、リアによって倒された。そしてこれまたもくろみ通り、声に出すなどといった手段を用いず、相手に警戒をさせる前に『真祖に赤いダガーは聞かない』という情報を真祖であるカインに与えることができた。
「どうやらその攻撃、俺には効かないらしいな」
「っ!?」
敵のリーダーは顔を驚愕に染める。あわてて防御の姿勢をとろうとするがもはや遅い。
「終わりだ」
ドゴッ。
カインの拳が敵のリーダーの顔に突き刺さる。その後も休む暇を与えずカインは追撃を加える。そして何発か攻撃を当てたところで相手はとうとう地面に倒れ伏した。
「残り二人。早く終わらせるか」
ラファエルは戦闘不能。イヴも戦闘から外れたようだがそれでも六対二。それも敵のリーダー格はもういない。もはやこの場の戦闘が終わるのは時間の問題だ。
カインは戦闘を終わらせるため今に一度駆け出す。
そしてそれからしばらくした後、この場の戦闘は吸血鬼側勝利で幕を閉じたのだった。
一応言っておくとこの小説、まだまだ続きます。そんなわけで次あたりから第1部最終章みたいな話になります。まあそんなに長くないしすぐ終わるんですけど。そんなわけで次からもよろしくお願いします。
それとよければここまでで感想とかあったらそちらもよろしくお願いします。




