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「イヴ」
「……」
「イヴ」
「……」
「ちょっとイヴ!聞いてる!」
「っ!?」
しかしそんな溺れる時間も長くは続かなかった。突然かけられた(ように感じられた)リリスの声に思わずはっとして我に返る。
「はぁ。まあ初めて血を飲むのって大体そうなるから仕方ないといえば仕方ないんだけどね」
「あ、あぅ……」
さっきまで夢中でリリスの首筋に噛みつき血を吸っていた自分の姿を思い出し、思わず赤面してしまうイヴ。
でも仕方なかったのだ。まさかあれほどリリスの血が甘く、中毒性のようなものがあるとイヴも予想していなかったのだ。だからあんな風に一瞬我を忘れてしまったのも仕方なかったのだ。と誰にしているんだかわからない言い訳を心の中でするイヴだった。
「さてイヴ。そのままでいいから私の話を聞きなさい」
「うん」
「まず私の血を吸ってもらったことだけど、これは強制的にイヴの吸血鬼としての力を引き出すためね。ほら、私の血ってちょっと特殊なものだし。……だから今なら感じるんじゃない?体の熱を。その熱の源泉を」
リリスの言葉にイヴは意識を体の内側に、体の熱の源泉に向ける。
「……うん、わかるよ」
「それが魔力よ。人間の持つ神聖力と似て非なるもの。魔物みたいな魔に連なるもの、吸血鬼の力よ」
「魔力……これが」
「そう。それでイヴ、それ動かせる?」
リリスの言葉に今一度自身の中の魔力を感じる。そしてそれをイメージの中で触れる。
「大丈夫、やれる」
魔力はイヴが思っていたよりも簡単に動かせた。まるで自分の手足のようだとすら感じる。
「これでスタートラインね。今のイヴならわかるわよね。これがどれだけの力か」
「うん」
自身の魔力を使えるようになった今だからわかる、魔力や神聖力といった力がどれだけ反則じみた力だったか。吸血鬼となったことでイヴの身体能力は元の能力と比較して少なく見積もっても数倍となった。それだけでも十分驚異的な上昇率だというのに、この魔力という力はその引き上げられた力をさらに数倍させるだけの性能がある。
「さて、時間もそろそろなくなりそうね。練習も何もなしでいきなり実践で悪いんだけど、あいつらと戦ってもらうわイヴ」
準備はいい?とリリスは言葉の裏に目で聞いてくる。
「もちろん。いつでもいけるよ」
そんなリリスの問いにイヴも力強い肯定で返す。
「それはよかった。じゃあ最後に私から一つのアドバイスと一つの作戦をあげるわ。これさえできれば、まちがいなくイヴはこの戦場で最高の戦力になれる。私が保証するわ」
そうしてリリスは一つのアドバイスと一つの作戦をイヴに伝える。
イヴはそれを聞いてリリスが少し前にろくでもないことをさせると言っていたがこれのことだったかぁと思った。でもろくでもない作戦ではあったが確かにきまればいっけに形勢が変わる。あとは私が頑張るだけとイヴは気合を入れる。
こうして戦いは最後の参加者を迎えたのだった。




