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時間があるうちに投稿。
「ラファエルっ!」
ラファエルとともに戦っていたリアが驚愕の声を上げる。
声こそ上げなかったがイヴたちは皆、程度の差こそあれ驚愕を顔に浮かべる。
なんで?吸血鬼は死なないんじゃなかったの?
イヴは頭のまとまらない思考を無秩序に行っていた。そんなイヴとは別にいち早く驚愕から復帰したリリスはこの光景を作った張本人に向かって声を出す。
「『血の武装』……もう完成していたの?」
「あれ?もしかしてこれが何かわかるの?」
リリスの問いに男の方は答えではなく驚きを返す。
「ええ。私の記憶では確かそれまだ開発中だったはずだけど?」
「うわっ、そんなことまで知ってるんだ。どうやったかは知らないけど、君この研究所の情報かなり持ってるよね?まあでもそれでも驚くのは仕方ないと思うよ。俺もこれ数日前に試作品として渡されたばっかりだし」
「……そんなものがあるなら初めから使えばよかったんじゃない?」
「いやー、もらったのは確かに数日前だけど実はまだこれ一回も使ったことないんだよね。さすがに未使用の、それも自分の得物と違うものを無条件で信じろって無理があるしね」
男は相変わらずへらへらした感じの態度を崩さない。その男を見すえながらリリスは心底悔しそうに顔をゆがめる。
「……それで使ってみてどうだったかしら?見たところまだ完成にはいたってないみたいだけど」
「あー、まあ確かにね。吸血鬼を殺せるって話だったけど、こりゃまだ無理だね。しばらく行動不能には持っていけるけどそこまでだな。……で、それに何か問題が?」
「っち」
男の言葉に思わず舌打ちをするリリス。そう、武器としては確かに未完成であるが、この戦闘に限った話だけをするならば何も問題がないのだ。重要なのは吸血鬼を行動不能にできる。この一点である。これにより不死性というアドバンテージの大部分が失われた。
「じゃあ、そろそろ再開しますか」
そう言うと男は赤いダガーを再び構える。それによく見ると、いつの間にか相手の全員がその手に赤いダガーを持っていた。つまりこれから先の戦闘では今まで無視できた攻撃を無視できなくなるということ。結果相手の連携も当然復活する。
そうして戦闘は吸血鬼不利の状態で終盤戦へと移っていった。
「みんな……」
戦いは激化していた。吸血鬼側不利で。
そんな中イヴはただただみんなが戦っているのを見ているしかなかった。
-くやしい。
イヴの心を支配するするのはそんな感情だ。
ここまでたくさんの仲間たちが戦ってくれた。直接戦闘をしたわけではないリリスやティナもそれぞれに大切な役割があった。それに比べて自分はいったい何をした?何もできていないじゃないか。
イヴがこの研究所に来たのはほんの少し前のことだ。だから当然長い時間経過を練っていた他のメンバーたちに比べて戦闘能力も魔力制御といった技能もない。理屈ではわかる。今のイヴになんの力もないのは仕方のないことだと。だが理屈以外の部分でイヴはそれを拒否したかった。自分も何か力になりたいと。しかし現実はイヴだけの力ではどうしようもなく、思いと現実の違いにイヴはただただ悔しさを感じるだけだった。
だからだろう。
「イヴ、話があるわ」
そう突然切り出したリリスにイヴが反応ができなかったのは。
「私たちを助けてほしいの。お願い」
そして続くリリスの言葉の意味を理解するのに少しかかってしまったのは。




