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「ああ、まかせろ」
そう言って後ろから現れたのは黒髪の男だった。年のころはおおよそ壮年手前の青年といったところか。しかし彼もまた吸血鬼であるためティアのように外見通りの年齢ではないかも知れないが。そしてその瞳は新月の夜のような闇色をしており、鋭く目の前の敵を見据えている。
「おいおい、俺たちも忘れてくれるなよ」
さらにカインと呼ばれた男の後から続く3つの影。
「あら、別に忘れたわけじゃないわよ。ラファエルにクインシーにオール。あなたたちも頼りにしてるから」
「ははっ。大船に乗ったつもりでまかせときな」
そう言って3人組の内一番前にいた男が好戦的な雰囲気を出し一歩前に進み出る。
「あの、リリスちゃん。この人たちは?」
「言うならば保険ってやつね。今までの戦闘でわかってると思うけどこの建物って頑丈なのよ。通常戦闘を建物内部で行っても平気なくらいには。そうすると建物を破壊しながら進むってのは圧倒的に効率が悪いのよね。だったらどうするか。もちろん普通の道を進むしかない。でもそうなると絶対避けては通れない場所が1つある。……出口ね。もしも私が敵だったら当然通ることが予想される出口に人を配置するわ。そしてだからこその保険。その配置された敵が弱ければ何の問題もないんだけど強かった場合どうするか。その答えはこっちも強者に闘ってもらうこと。私たちが出口につくおおよそ同じタイミングでカインたちにもここを通りかかってもらう。何もなければいいし、何かあれば加勢に来てもらう。……ホントこのタイミング調整面倒だったんだから」
はぁ、と軽くため息をつきそれでもそれほどのことじゃないとでも言うように語るリリス。……しかし当然であるが実際はそんな軽いものなどではない。まず下調べからして無駄に広い迷路構造のせいで膨大なものとなっている。その上での計画立案に時間調整である。計画完成には年単位の時間が必要となった。それをごくごく少ない人数でやっているのだから大変さは押して知るべしである。
「……お疲れ様です。それで保険の意味はわかったんですけど、『こっちも強者に闘ってもらう』ってさっき言いましたけど、あの人たちってそんなに強いんですか?」
「ええ、もちろん。なんせ……私たちの最強戦力だもの」




