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「早かったわね」
そんな言葉とともに中にいる人物が姿を見せる。最初に目に飛び込んできたのは白だった。その白は真っ暗な部屋の中にあってなお部屋の暗闇に染まらずそこにある。それはあたかも闇夜を照らす月のように。絶対不可侵の純白がそこにあった。
しかしそんな純白の中にあって異彩の輝きを放つのがその双眸。それは燃えるような深紅の瞳。純白の中にあってその二つの輝きは見た者をどこまでも引き込んでいく。
「きれい……」
それはイヴ自身が言った言葉か。それともイヴ以外の誰かが言った言葉か。それはイヴ自身にもそれはわからない。ただただ目の前の光景に目を奪われ、魅入られる。多分目が離せないとはこういうことを言うのだろう。イヴは今どういう状況であるかをこの時ばかりは完全に忘れてただただ目を奪われていた。
「みんなどうしたの?」
しかしそんな時間も長くは続かず、目の前の10歳にも満たないだろう外見の白い少女の声にイヴたちははっと我に返った。
「まあいいわ。さて、あらたまってこう言うのも何だか変な感じがするけど。はじめまして。私がリリスよ」
そう目の前の白い少女―リリス―が告げる。
「まずはみんな、来てくれてありがとう。助かったわ。それにティナ」
「は、はい」
「今まで頑張ったわね。ここから出れたのもあなたのおかげよ」
「い、いえ。こちらこそ……」
そうしてリリスはこの場にいるメンバー一人一人に順に言葉をかけていく。
「最後にイヴ」
「何ですかリリスちゃん」
「正直イヴにはちょっとだけ悪いことをしたかなって思ってるのよね」
そう告げるリリスの顔は若干ばつが悪そうである。
「何かありましたっけ?」
「……家族を亡くしたばかりだっていうのにそのすぐ後にこんなことに巻き込んじゃったから」
「でもそれは―」
「イヴの決意はちゃんとわかってるよ。それでもね、こっちの都合で振り回しちゃったって言う側面があるのは事実だから。だからこれはただ私がイヴに言っておきたかった。それだけのこと」
「うん……」
「それにね、皆にも言ったけどここまで来てくれてありがとう。とってもうれしいよ」
そうお礼を言ったリリスはほんの少しだけその顔に笑みを浮かべる。
「リリスちゃん……。ううん。お礼を言うのは私の方だよ。あのとき空っぽだった私を空っぽじゃなくしてくれたのはリリスちゃんだよ。だからここまで来れたのはリリスちゃんのおかげ。私の方こそありがとう。ここまで連れてきてくれて」
イヴもまたリリスの言葉にお礼で返し、笑顔をリリスに返す。
白い少女と生き延びた少女。二人の少女が初めて邂逅をはたした瞬間であった。
ようやく二人が本当の意味で出会いました。出会うまでホント時間がかかった…。




