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イヴはまず自分の首に巻かれている黒い首輪をつかむ。そこから一気に首輪を引きちぎった。
「体はちゃんと動きますね。それにしてもこれが吸血鬼の力ですか……」
当たり前であるがイヴにされていた首輪は簡単に外れるような強度のものではない。本来ならばまだ少女といっていい年齢であるイヴが力任せに引きちぎろうとしたところで外れないものである。しかし実際にはイヴが多少力をこめるだけで簡単に引きちぎれてしまった。それはイヴに吸血鬼という生き物のすごさを見せると同時に自分がもう普通の人間ではないことを再認識させた。
「……じゃあ、行きますか」
そうつぶやいた後、一気に部屋の扉を開く。部屋には外から鍵がかかっていたようだがこれも強引にこじ開ける。そうしてイヴは一気に部屋を飛び出した。
「まずは三番目の曲がり道」
昨日リリスによって直接頭の中に叩き込まれた映像を思い出しながらひたすら走る。廊下は昨日見た影像と寸分たがわぬもので、イヴの歩みに迷いはない。途中どこかからか大きな音―おそらく戦闘音―も聞こえ出したがイヴは気にせず目的地までひた走る。あわてた研究者らしき人たちともすれ違うが、戦いの専門家でもない彼らに吸血鬼たるイヴを止められるものはおらず、ただ素通りするのみ。
―それにしても研究員の人たちとはすれ違いますけどあの仮面の人たちみたいな戦闘員には出会いませんね。
走りながらそんなことを考える。思い出すのはイヴの運命を決定的に変えたあの夜、イヴたちをここに連れてきた仮面の集団。おそらく彼らはこの研究所専属の戦闘員か何かだろうとイヴは予測している。それならば彼らに今であってもおかしくないような気がするが現実には一人として出会わない。実際昨日、そのあたりのことを特に何も言及されず、ただ最速で目的地を目指すことしか言われていない。イヴはそのあたりのことを不思議に思いながらも、多分リリスたちが何かしたのだろうと結論付けて走り続けるのだった。
……実際のところ、リリスはイヴの通る進路上に非戦闘員だけしかいないタイミングでシステムの破壊を開始していた。まあ良くも悪くもこの研究所が広すぎるためにそんなことが起こるのだが。加えて何人かの吸血鬼が最初に派手に動くことでそちらの方に戦闘員たちの目がいくようにもしている。これはイヴと他の吸血鬼たちの位置関係上、イヴがどうしても合流までの間一人になってしまうための配慮であったりするのだが、結局イヴが真相を知ることはついぞないのだった。
なんかホント、間が開いてすいません。




