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計画の実行が決まってから二日後のこと。
「明日の夜計画を実行するわ」
リリスはイヴにそう宣言した。
「……はい?」
「だ・か・ら、明日の夜計画を実行します」
「いえ、あの、それはわかりましたけど……」
「まったく、どうしたの?テンション低いけど」
「これはテンションが低いんじゃなくていきなりすぎて反応に困ってるんです!」
そう、まさに今イヴは困っていた。どう反応すればいいのか。なんせリリスはイヴに念話がつながったと同時にあいさつや前ふりといったものすべてを省略し、開口一番「明日の夜計画を実行するわ」と言ってきたのである。数日中に計画を実行すると言っていたのである程度の心構えはあったが、それでも唐突すぎて反応に困ってしまった。
「うーん。まあ確かにちょっといきなりすぎたかもね。反省します」
そしてリリスの方も言われてみれば唐突すぎたかなぁと思い至り素直に反省することにした。
ちなみにリリスが現在こんな感じになっているのは少ない時間の中で計画の参加者全員に計画の実行に関しての最終確認などを行っていたため一種のランナーズハイ状態になっているためである。こんな状態で大丈夫なのかと心配になるが、明日の日中に休むつもりなので問題ない。良くも悪くも現在研究所で一番熱心に研究が行われているのはイヴについてである。どうせ明日も研究員たちはイヴの研究がほとんどであろうから問題ない。それにリリス自身研究所内の全吸血鬼と比較してなお圧倒的ともいえる不死性を有している。そのため多少の疲労程度、リリスの動きに何の支障もきたさない。いざとなれば計画開始直後にその不死性でもって無理やり回復させるという手もある。……まあできる限り力の温存をしたいのであまり積極的にしたい手ではないのだが。
「わかればいいです。それで、明日計画を実行するんでしたっけ?」
「うん、そうそう。それで今日はね、明日の計画の概要とイヴがどう動けばいいのかを軽く説明しておこうと思って」
「そうでしたか。……でも思ったんですけど、それってこんなギリギリじゃないといけなかったんですか?」
そこでイヴはふと思ったことを聞いてみた。要するにこの説明二日前でもよかったんじゃないかと。
「あー、それはこっちの都合というか配慮というか……」
「都合に配慮?」
「まあ要するに大きく分けて理由は二つあるってことかな」
「?」
「一応一つ目の理由としては計画の秘匿性のためかな。普通にこの計画ってばれたらだめなものだから、事前に詳しいところまで知ってるのは限られた人だけにさせてもらいました。みんなを信用してないわけじゃないんだけど、やっぱりできる限り確実性は上げたいしね」
「それが一つ目ですか?」
「うん。それで二つ目だけど、これは単純にあんまり早い段階から計画教えても気疲れしちゃうかなぁと。余計なお世話かもしれないけど」
そう説明したリリスの声はちょっとだけばつの悪そうなものだった。
「ううん。余計なお世話なんかじゃないよ。私のことをちゃんと考えてくれてたわけなんだし、それにそうじゃなくても仕方のない理由もあるんだし全然気にすることないよ!」
「……ありがとう。そう言ってくれて」
「こちらこそ。じゃあ話を明日のことに戻して、私は明日どういう風に動けばいいのリリスちゃん?」
「そうね。それじゃあ今から説明するから、ちゃんと覚えてね」
「はーい」
イヴの返事の後リリスは明日についての説明を始めた。
それはしばらく続き、説明が終わった時イヴは心の中で誓うのだった。絶対に成功させると。
次回より脱走というか闘争みたいな、大体そんな感じの話になっていきます。




