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「吸血鬼の説明の前に聞いておくけどイヴは鬼ってわかる?」
「はい。確か魔物の中でも比較的人の形に近いものだって聞いてます」
「うん、大体その認識でいいわ。つまるところ鬼ってのは人に似て非なる存在。吸血鬼というのもそれと同じ。血を吸いし人ならざる鬼。これが吸血鬼って名前の由来ね」
「血を、吸いし?」
「そう。この血を吸うっていうのには二つの由来があってね。一つ目は吸血鬼の特性にあるの」
「特性ですか……」
「そう、特性。これは文字通り吸血鬼は血を吸うのよ。より正確に言うなら吸血衝動があるって言い方のほうが正しいかしら」
「で、でも」
イヴはここでひとつの疑問が浮かんだ。
「何かしらイヴ?」
「私今まで一度も血が吸いたいとか思ったことないですよ」
「あー、それね。それは単純にイヴが吸血鬼になってからまだ日が浅いからよ。だからまだ吸血衝動がそんなに大きくないだけ。多分だけど、もうしばらくしたら吸血衝動が出てくると思うわ。まぁこればっかりは吸血鬼の宿命だから受け入れてもらうしかないわ。……ごめんね」
「べ、別にリリスちゃんが悪いわけじゃないですよ。というかどうして謝るんです?」
「うん。確かに直接の原因は私じゃないけど、そもそもの根源の原因は私にあるのよね。だからごめん。巻き込んじゃってごめんね」
「もおいいですよ。たとえどんな原因があったとしても、それを使おうとした人が悪いんですから。だからこれ以上は謝るの禁止です」
「ありがと。……それでね、さっきの続きになるんだけど、吸血鬼が吸血鬼と呼ばれる所以は二つある。一つは吸血衝動。そしてもう一つはその成り立ち。イヴ、あなた自分がいつから吸血鬼になったか自覚してる?」
自覚。少なくとも村で生活しているときには一度もない。
「……多分ですけどこの研究所に来てからですよね」
「それであってるわ。それで具体的にいつだと思う?」
イヴはここに来てからのことを考えてみる。研究所につれてこられ、寝て、研究員から配られたものを食べ、気を失い、起きて、その後……。
「……みんなが死んじゃったときですね」
今でも覚えている。気を失う前、みんなが血の海に沈んでいく中、私の体を襲ったあの体が燃えるような感覚。そして起きた後のあの目の前が真っ赤に染まる感覚。
「うん、それであってる。それでねイヴ。多分だけどあなたその直前に何かしらの液体を飲んだんじゃない?」
イヴはそのときのことを思い起こしてみる。そして思いつくのは……研究員から配られた水である。
「はい。ここの研究員の人から配られた水を飲みました」
「そう、水ね。ところでその水だけど、何か変なところはなかった?たとえば色とか味とか」
イヴはさらにあのときのこと、飲んだ水について思い起こしてみる。
「……なんだかちょっと鉄みたいな味がしました」
「そう。なら多分その水が原因で間違いないと思うわ」
「何か特殊な水だったんですか?」
「水自体はおそらく普通のものよ。問題は水の中に混ざってたものね」
「……薬とかですか?」
「いいえ。私の知る限りそんな薬は存在しないわ。ならそれは何かって言うとね―私の血よ」
設定説明はまだまだ続きます。




