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次の日の夜。
「こんばんは、イヴ」
いつものようにリリスの声が聞こえてきた。
「えと、こんばんは」
そしてイヴは今日初めてリリスのあいさつに自発的にあいさつを返した。
「ふふふ。やーっと返してくれた。うれしいな」
「うぅ……。それについてはホントにごめんなさい」
「別に気にしなくてもいいわよ。ただ私が一方的にしたいからやってただけだし」
「それでも……。それでも謝らせて。私ずっとあなたのこと無視しちゃってたから」
「うーん。まあそういうことなら。よし許す。だから……これからはいっぱい話そうね」
「……うん!」
こうして二人にとって二つ目の約束をするのだった。
話も一段落したところで突然リリスがあることについて切り出してきた。
「とーこーろーでー。気になったんだけど、さっき私のこと『あなた』って呼んでたけど、私にはリリスって名前があるんだよ」
「え、えっと。それは……」
「もしかして忘れちゃってたとか?それだと悲しいなぁ」
「うぅ……」
そう、先ほどイヴがリリスのことを『あなた』と発言したことについてだ。
……まあ、リリス自身はこのことについてそこまで深く気にしているわけではない。むしろそれをネタにイヴをからかう気満々である。実際リリスの言葉の端々にもその心情が見え隠れしていた。
「あ、あのね。怒らないで聞いてくれる?」
「ん?まさかホントに忘れちゃったとか?」
「ち、違うの。そうじゃなくて」
「そうじゃなくて?」
「……ぅ」
リリスの疑問にほんの一瞬なんと言おうかと考え、言いよどむ。しかしいい考えも浮かばず結局イヴはありのままを伝えることにした。
「わからなかったんですよ。その……なんて呼んでいいのか」
「……どういうこと?」
「そのですね。過去の話を聞くにリリスさん、私よりも年上みたいですし。それに……」
「それに?」
「今まで散々無視し続けちゃった上に、今こうして私がいられるのは間違いなくリリスさんのおかげです。そんな恩人をなんて呼べばいいのか考えてたら……わからなくなっちゃって」
これこそ偽らざるイヴの本心であり、『あなた』呼びの真相である。
「……はぁ。まったく、イヴはちょっといろいろ考えすぎなのよ。呼び方なんてリリスでもリリス様でもリリス女王陛下でも何でもいいのよ」
「……後半はおかしくない?」
「とーにーかーくー!他人行儀なの禁止!『あなた』なんてもってのほか!わかった?」
「えぇと……」
「へ・ん・じ!」
「は、はい!リリス女王陛下!」
「……なぜそれを採用したの」
こうしてこの後もひと悶着あったのだが最終的に『リリスちゃん』と呼ぶことに決まった。
それはイヴとリリスは確かに友達となった瞬間だった。しかしそれを二人が意識するのはほんの少しだけ先のこと。
今回の話は…何だろ?あえて言うなら初めてこの作品のメイン二人が普通(?)に会話してくれた話ってことで。
呼び方を変更しました『リリス』→『リリスちゃん』




