<46>
「何で……ね。それを知ってイヴはどうするの?」
しかし返ってきた言葉は答えではなく質問。リリスの答えを聞いてイヴはどうするのか。それは―。
「……わかんない」
「そう」
「……うん」
そう、わからない。
リリスの出した答えを聞いたとしてそれと同じ道をたどるのか、それとも別の道をたどるのか。それはイヴ自身にもわからない。
「でも」
「でも?」
「……今の私一人じゃどこに行けばいいかわからない。だから……自分の進む道を考えるためにも聞きたい」
「……わかった。話してあげる」
この時リリスは初めてイヴという存在を確かに感じた。今までの魂のない人形のような存在ではなく、イヴという生きた存在の意志を。
「先に言っておくけど私の出した答えなんてありきたりで平凡でとっても普通なことよ。それでも聞く?」
「……聞く」
「そう、なら教えるわ。それはね……やりたいことを見つけたからよ」
「やりたいこと?」
「そう、やりたいこと。そうね……さしあたってやりたいのはこの研究所を潰すことかしら?」
「……それって?」
「言葉通りの意味よ。この研究所を潰す。嫌な事を思い出させちゃうけど、私はもうイヴやイヴの村の人たちみたいな犠牲者を出したくない。私が原因でたくさんの人が死んでいくのをこれ以上見たくない。だからこれは私がしたいことであると同時に義務でもあると思ってるわ」
そう話すリリスの声は、決意、悲壮、怒りなどいろんな感情がごちゃ混ぜになったものだった。
「それからね……」
「それから?」
「もう一回自由に生きたい」
「自由?」
「そう、自由に生きたい。私がここに連れて来られる前みたいに友達としゃべったり一緒にご飯を食べたりみたいななんでもない自由がしたい。……それに、まだ覚えてくれてるかわからないけど、会いたい人がいる。あって話したい事がある。謝りたい事がある。だからこんな場所にいつまでもいられない。それを阻むものは全部壊す。……まぁ、つまり何が言いたいかというと、私は外に出たいけどこの研究所が邪魔だから潰すってことね」
そう締めくくったリリスの声は先程のドロドロとした言葉と比べ、とても澄んだものだった。まるで遠足を待つ子どもみたいにとても楽しそうなものだった。
「どう?そんな大したことじゃなかったでしょ?」
「そうかも」
「……そこはちょっとくらい否定して欲しいなー」
「でもリリスの思いはわかった。だから……今度は私が考える番。もう少し私に考えさせてください」
「うん、待ってる」
そう、今度は私が答えを考える番。でも……どんな答えを出すにしてもリリスみたいな暗い思いを抱えてなお前に進める、そんな答えを出したいとイヴは思うのだった。
これにて暗い話(鬱展開とも言う)はひとまず終了です。長かった…。次からはどんどん話が盛り上がるようにしていけたらなぁって思ってます。




