<43>8年前⑬
前回に引き続き残酷描写と若干のグロ注意です。
吹き飛ばされた私の体が止まったあと、私は朦朧とする視界の中で周りを見た。
ハナちゃんは……自力で起き上がろうとしているところだった。とりあえず目立った外傷はなかった。
―よかった。
そして先ほど私を襲った怪物。
どうやら何かを食べているらしい。あれは……腕?
ついで私は自分の右腕があった場所に目を向ける。
-やっぱりないですか。
おそらくあの怪物が今食べているものは私の腕だったものなのだろう。
不思議と痛みはなかった。
いや、もはや痛みを感じられないといったほうが適切かもしれない。
-どこもかしこもひどい有様ですね。
そう思うリリスの体は本当にひどいことになっている。
怪物の爪を受けた時、腕だけにとどまらず体もかなり引き裂かれた。加えて吹き飛ばされた際にも体を強打し、木の破片などいろいろなものが刺さっている。
そうして物思いにふけっていると怪物が私の方にゆっくり近づいてくる。どうやら食事はとりあえず終わったらしい。
「リリスちゃん!」
ふと声が聞こえたほうを見るとハナちゃんが私のほうに近づこうとしています。
「ハナちゃん、私にかまわず逃げてください!」
私は今時分にできる精一杯の声でハナちゃんを思いとどまらせます。
「でも。でも……」
しかしハナちゃんはなかなか逃げようとしてくれません。……本当にやさしい子です。
「ここは私が時間を稼ぎます。だから早く逃げてください。私の―」
そう、おそらく私にとってハナちゃんへの―。
「私の最後のお願いなんですから……」
最後のお願い。多分そうなってしまうから。
ハナちゃんはぼろぼろと涙を流しながら何度もうなずいてくれます。そうして私に背を向けると約束通りちゃんと逃げてくれました。
-泣かせちゃったなぁ。
本当は泣き顔なんて……それも私に対しての泣き顔なんて見たくなかったですけど。
―仕方ないですね。
最後にハナちゃんといられただけでもよかったことにしましょう。
「さあ怪物!さっさと来やがれです!」
時間を稼ぐと言ったのに「さっさと来やがれ」とは自分はいったい何を言ってるんだろうといよいよ本格的に朦朧としてきた意識の中で自嘲する。
-あぁ、いよいよ本当にまずいですね。
視界の中では怪物の姿が大きく揺れる。そしてその巨体が私に近づいてきたところで……私の意識は闇に沈んだ。
次でこの話も終わる…はずです。




