<42>8年前⑫
ごめんなさい。過去編さらにもう1話かかりそうです。
それと残酷描写注意と若干グロ注意です。
―異様。
空に浮かぶその存在はまさしくそう形容されるべき存在であった。
体長は大の大人の倍くらいはある。そしてその容貌は四足動物であるのだが、頭と前足加えて羽といった部分が鷲のもので、そこから後ろは獅子のような胴体に後ろ足をといったまさに怪物の呼ぶべき姿であった。しかし何よりもその身にまとわりつくどす黒い霧のようなものがその存在を異様であると示している。正直見ているだけで気持ち悪さに加えてうすら寒いものを感じる……そんな存在であった。
その怪物はその赤黒い瞳でもって地上にいる私たちを見下ろす。それはまるで品定めをしている……そんな印象を私に与えた。
そして一瞬であるが私はその怪物と目があった。
その目は……捕食者の目だった。
私は理解した。
逃げないとまずい!
「ハナちゃん、逃げますよ!」
私はハナちゃんの手を取り一気に駆け出した。
そして私が駆け出したその瞬間、後方から『ドーン』という地響きが起きた。それに続いて―。
「う、うわーーーーーーー!」「きゃーーーーーーー!」
といった悲鳴が聞こえてきた。それに引き続くのはぶちぶちっというまるで何かを引き裂くような音。
しかし私はかまわず走り続ける。今振りむくわけには行かない。今足を止めたらいけない。そうしてしまったら最後どうなるか……そんなものは想像に難くない。
「はぁ、はぁ、はぁ」
走る。走る。走る。
ただひたすらに走った。少しでもあの怪物から離れるために。
背後の音や声はいまだ絶え間なく続く。しかしそんなことはもう頭の中に一切入ってこない。ただひたすらに走り続けた。そして―。
『キィーーーーーーーーーーイ』
絶望の声を私は背後に聞いた。
-そんな……そんなそんなそんな!
いきなり聞こえてきた声におもわず振り返る。
そこには当然のごとく私たちを狙う怪物。その凶爪が狙う先は……ハナちゃん!
―どうすれば……どうすればそうすればそうすれば!
そう思っている間にもハナちゃんを狙う化け物の爪。
時間は残りわずか。考える時間なんてない。
だったら!
気付いたら私はハナちゃんを突き飛ばしていた。
その結果として元々ハナちゃんがいた位置には私。
私はそこからハナちゃんが転がるのをただながめた。
時間がゆっくり感じられる。『ハナちゃん怪我しないといいなぁ』なんて場違いなことまで頭に浮かんでしまうほどだ。
しかしいくらゆっくり感じようとも時間は着実に進んでいく。
着々と私に近づく凶爪。そして―。
私は『ぶちぶちぶちっ』という音が自分の右肩からするのを聞きながら吹き飛ばされた。




