<3>
一応話がちょっと進みます…ホントにちょっとですが
それとよければ「現代式 正しい(?)論語の読み解き方[連載版]」ってのも書いてるのでそちらの方もよろしくお願いします
基本1話完結のかなり軽い話ですので
その日もいつもと変わらないよく晴れた日だった。……正直晴れすぎていて太陽には少し自重して欲しいくらいだった。そんなとある日の昼下がり。
「今日はもうあまり出歩かないようにしなさい」
自警団の方にいっていたはずのお父さんが帰ってきたと思ったら突然そんなことを言ってきました。
「ええと、それはどうしてでしょう?今日はこれから何かありましたっけ?」
「いや、そういうわけじゃない。だが……どうも村の周りが妙な空気に包まれている感じがしてな」
(妙な空気ですか……。こんな辺鄙なところですし、考えられるとしたら魔物とかでしょうか?)
「もしかして魔物でしょうか?」
「わからない……がその可能性が高いだろうな。一応神聖術を使える人間も控えさせておこうとは思っている」
神聖術―それはすべての人間が生まれながらにして備えている神聖力と呼ばれる力を元にして行使する術である。
神聖術の主な使い方としては、身体能力の向上や治癒力の向上等が挙げられる。そしてこれらに加えて、魔物に対してもっとも有効な攻撃手段であり防御手段であるという点が挙げられる。魔力のこもった攻撃に対して神聖力がこもっているかいないかでは防御において天と地の差があり、魔力を纏った魔物に対して神聖力のある攻撃とない攻撃とではやはり同様に天と地の差がある。
しかしこの神聖術というもの、神聖力自体は万人が備えているがそれを体の外側に出力できるまでもっていけるかは完全に本人の資質に依存する。加えて教会等が神聖術は選ばれた人間のみが使うものだとして秘匿する傾向があり、特に高度なものほど顕著なものとなっている。そのため一般的に神聖術が使えるとは神聖力を体の外側に出力することを指し、本当の意味で神聖術が使える人間の数はかなり限られたものとなる。
この村の神聖術を使える人間もまたそうした神聖力を体の外側に出力できる人間を言う。
「わかりました。でもそういうことならお父さんはこれからもう一度自警団の方に戻るのですか?」
「あぁ、そうなるな。イヴはお母さんと一緒にちゃんと家の中にいるんだよ」
「はーい」
そう返事をした後、お父さんは自警団の方にまた戻って行きました。
「しかし魔物ですか。何だかすごく久々に出てきた気がしますね」
お父さんが家から出ていった後、自分の部屋に戻ったイヴは一人そんなことを考えていた。実際前回魔物が出たのも年単位で前とまではいかないまでもそれなりに前のことである。まあ、それもそのはず。そもそもの話、魔物の被害がほとんどないからこそ辺鄙な場所であるにも関わらずこの地に村を作ったのだから。
「でもお父さん、どうも歯切れが悪い感じだったし……あんまり強い魔物じゃなければいいんだけど」
当然だが、魔物にも個体によって強い弱いはある。個人で討伐可能なものから国家レベルで討伐に乗り出したようなものまである。要するにピンからキリまで様々だということだ。ちなみにであるが過去から現在においてオクテ村周辺に村人だけで討伐できないような個体は一度も出現していない。
まぁ、それゆえに魔物を倒すことでお金を稼ぎ生活しているような人たちですらここに来ることがなく、ますます陸の孤島状態になっているわけであるが。
「うーん、考えてもしょうがないしおとなしく待ってよ。きっと今回も大丈夫」
ひとまずイヴはそう一人結論付けることとした。
そうすることで不安な心を意識しないようにするのだった。