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本日2話目
最初に警告しておきます
残酷な描写注意です
朝食といって出されたものはパンが二つと水筒の中に入れられた水であった。最初は躊躇して手をださなかった村人たちであったが、あの村を襲撃された夜から何も食べていなかったことを思い出し、とうとう空腹に負けてほとんどの村人が朝食を食べ始めた。ちなみに村人たちが食べ始めるまでの間、研究者の男は「そんなに怪しまれても困るんだけどなぁ。なんなら銀でも持ってきます?毒とかは特に入ってないですから」などと言っていた。まあそれでも最後まで怪しんで食べようとしない人たちも数人いたのだが。ちなみにイヴは最後まで何も食べない……などということはしなかった。やはり空腹に負けた結果である。
「パンは……普通のパンですね。水は……水筒のせいかちょっと鉄っぽい味がしますけど普通ですね」
イヴが配られた朝食を食べた感想である。ちなみにこれはイヴ以外のほとんどの朝食を食べた人がいだいている感想でもある。どうやら多くの人がかなり身構えて食べ始めたせいでことさらに普通だと感じてしまったらしい。そうして少ないながらも久々にものを食べ、ひとごこちついていると研究者の男がまだ部屋の中にいることに気づいた。出て行かないのかなと思ったところでイヴはひとつ疑問に思った。そう、なぜ朝食を持ってきたのが研究者自身なのか。普通なら仮面の人たちの誰かを使えばいいのにである。そこまで考えたところでその研究者の男が声を出した。
「はい皆さん、そろそろ時間です」
何かはわからないが時間らしい。そしてその言葉から考えるにこの研究者は朝食のためだけに来たのではなく、その後も何か用があったために来ていたらしい。
「どこか具合の悪い人はいたりしませんか?」
イヴは一瞬その質問に何の意味が?と思ったが変化はその後すぐに起こった。
「きゃーーーーー!」
どこかからか悲鳴が聞こえる。悲鳴のしたほうを振り返ってみるが人が多くてよくわからない。しかしイヴはその直後に何が起こったのかを知ることとなる。
「何だこれ!」「どうなってるんだ!」
次々に聞こえる悲鳴や叫び声。自分のすぐ近くでした声のほうを振り向けば、そこには全身から血が勢いよく出ている人。そしてそれと同じ症状をきたす人が加速度的に増えていく。真っ赤に染まっていく人、人、人。そうして、いつしかイヴの周りのすべてが真っ赤に染まっていた。
真っ赤に染まる世界の中で一人呆然と座り込むイヴ。
「え……?」
口から漏れるのはそんな言葉のみ。何が起こったのかまるでわからない。それは完全にイヴの理解の範疇を超えてしまい、イヴを思考停止させるのに十分であった。
しかしそこでイヴはふと自分の体の異変に気がつく。自分の体が異常に熱いことに。そしてその熱は今なお上昇し続けている。上がる熱の中イヴの視界はぼんやりし始め、意識もだんだん薄れていく。
「いやだ……」
それは何に対しての言葉だったのか。―自身に降りかかろうとしている理不尽な死に対してか。それとも自分には何もできないというこの現実に対してか。はたまたもっと別の何かに対してか。―そうつぶやいたことろで、イヴの体は地面に倒れる。
「い……や……」
そして最後にそう言い残しイヴの意識は途絶えた。
「これで全員に効果が現れたかなカルロ君」
「そうなりますねダレン様」
真っ赤に染まる室内にカルロと呼ばれた仮面をつけた男とダレンと呼ばれた研究者の男の会話が響く。
「さっき気絶させちゃった人たちとかにも?」
「はい。手はずどおり行い効果も確認されました」
「そっかぁ。じゃあ次は確認作業といこうかな」
「了解しました」
そう言った後カルロはダレンから視線をはずし真っ赤に染まる室内の方を向く。
「誰か一人くらいいないものかなぁ……。やっぱり今回も無理かなぁ」
そしてダレンの方はというとカルロの後ろでそんなひとり言を発するのだった。




