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あれから特に何か起こることもなく時間は進み次の朝を迎えた。といっても部屋の中に窓が見当たらないため、いったい今がどのくらいの時間帯なのかを知るすべがない。そのため、あくまで推定朝としかいえないのだが。
イヴは昨日の夜不安で眠れないといったこともなく普通に寝た後、今日の朝も自分で起きた。起きた後に周りを見回してみるとすでに多くの人が起きていた。どうやらイヴはこの中で比較的遅くに起きたらしい。しかし中にはどうも様子の違う人もいた。おそらくであるが一睡もできずにそのまま朝を迎えたのだと思われる。そうしてしばらく周りを見ていると唐突に部屋の扉が開き、一人の男が大きな台車とともに部屋に入ってきた。その男は初めて仮面をしていない人物であった。男をざっと見た感じおおよそ30歳台くらいと思われ、赤茶色の髪にそれと同色の瞳をしていた。加えて服装は黒いズボンに白衣を上着としていた。おそらく研究者と思われる。ここに来て新しい人物の登場に村人たちがいぶかしんでいると男は村人たちの様子を特に気にすることなく話し始めた。
「オクテ村の皆さんおはようございます。朝食を持ってきました。これからいろいろ大変だと思いますがとりあえずこれを食べてください。あ、そこの君。これを皆さんにお配りしてあげなさい」
その男はまったく緊張感のない声でそんなことを言い、近くにいた見張りの仮面の人に指示を出した。最初はあっけにとられていた村人たちであったがそのふざけた態度に、ここに無理やりつれてこられたことも含めて村人の一部が怒りだし声が上がる。
「何がこれから大変だと思いますだ!すべて貴様らのせいだろうが!」
そんな村人の怒りに研究者の男は相変わらず緊張感のない声で答える。
「まあ、それはそうなんですが……今回は運が悪かったとでも思ってください」
「貴様、ふざけているのか!」
「いえいえ、ふざけてなんかいませんよ。僕はいつだってまじめですよ」
その後も「自分たちをどうするつもりだ!」や「私たちを村に返して!」などの声が上がったがそれらに対してもまったくまじめに見えない感じで「それら疑問は後でちゃんと受け付けます。その時に質問したいと思った人は質問してください」などと答えた。そしてこんなことが何回か続いた段階で
「面倒ですね。そこの君と君。うるさい人を黙らせて」
とこれまた近くの仮面の人に命じた。そして先ほど研究者の男に何か意見をしたものだけを仮面たちは正確に気絶させた。
その鮮やか過ぎる動きに村人たちが一瞬言葉を発することができなくなってしまったところで
「今のを見ればわかると思うけど、こっちには無理やりって手段があることをお忘れなく。さあ、時間もあれだし朝食に入ろう」
そう言うと、男たちは仮面たちに改めて指示を出し、朝食を配らせ始めた。その間村人たちは誰も動くことができなかった。




