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「ここは……?」
イヴが目を覚ました時、そこは見知らぬ部屋であった。いや、部屋というよりもおそらく大型の荷台か何かの中といった方が適切であるだろう。そうして荷台の中を一度見まわしてみると自分以外にもそれなりの数の人がいた。寝ている―というよりいまだ気を失っている―人がほとんどであったが、中にはイヴのように起きている人も何人か見られた。それら一人一人を改めて見てみると、そのほとんどが村の中で見たことのある顔である。そこまで確認したところで自分が今なぜこんなところにいるのかを思い起こしてみる。
「確か村に変な人たちが来て、それから……」
それからその人たちに気絶させられたのである。あの後どうなったのかは意識がなかったためわからないがおそらく捕まってこの荷台の中らしきところに入れられたのだろう。そこまで考えたところで自分の近くに気絶する前まで一緒にいたお母さんがいないことに気が付く。荷台の中を見回してみてもそれらしい人は見当たらない。どうやらこの中にはいないらしい。それが単純に荷台が複数あって他の荷台に入れられたためにはぐれてしまったのか、はたまたあの場でお母さんが殺されてしまったためにいないのかなど理由は考えられたがこの時のイヴにそれを確認する手段はなかった。そうして少し冷静に物事が考えられるようになってくると今度は、自分たちがどうして生かされているのか、これから自分たちはどうなってしまうのかなど新たな疑問が生まれてくる。しかし考えてみてもこれだというような考えは浮かばずただ時間が過ぎていく。
「これからどうなるんだろ……」
そんなイヴのつぶやきが荷台の中に消える。
それからしばらくたったのち、ふと視界の端に自分のよく知る人物が起きていることに気付く。村の自警団のバリーさんである。
「あの、バリーさん」
「ん?ああ、イヴちゃんか」
声をかけてみたら驚いたような声が返ってきた。どうやら向こうはこちらに気付いていなかったらしい。
「あのバリーさん。今の状況ってわかります?」
イヴは一人で考えてもわからなかったことを聞いてみた。何かしらの答えが出なくても二人で考えれば少しは何か把握できるかもと考えてのことだ。
「んー。俺もついさっき起きたところだからあんまり状況を把握できてないんだよな」
「……そうですか」
予想通りの答えとはいえ少しがっかりしてしまう。
「バリーさんも仮面の人たちに捕まったんですよね?」
「ああ、そうだな。だがほんとに奴らは何者なんだ?あれだけの集団をこれだけ揃えられるなんてやつらの裏にいる奴はそうとうやばい奴だと思うぜ」
そうである。考えてみれば当然であるがあれだけの集団が動いていたのだ。裏がいるとしたらとんでもない人物であるだろう。
「ええと、バリーさんは裏に誰かいるって考えてるんですか?」
「ああ。というより奴らと闘ってた時に……いや正直闘いになっていなかったが、とにかくその時にやつらが任務がどうとか言ってたのが聞こえてな」
「なるほどです」
それは自分の知らなかった事だなとイヴは思った。
「それの裏がどうとか抜きにしても奴ら個人個人の戦闘力がやべぇ。十中八九ここから逃げようとしてもすぐ捕まるだろうな」
「それはわかりますけど……」
「それにおそらくだが奴ら全員が神聖術が使えるぜ」
「え……?」
「それもおそらく神聖力を外に出すだけのまがい物と違った、本当の意味での神聖術がな」
ということはあの明らかに人間離れした身体能力は神聖術の産物ということになる。加えて私が最後に見たあの白い光は……。
「あのバリーさん。私倒れる直前に何か白い光のようなものを見たんですけど……」
「ああ。おそらくその光は神聖術による光だと思うぜ」
「やっぱりそうですか……」
本当に使えるだけでも珍しいとされる神聖術の使い手があれだけの数そろっていたなんて、自分が実際に見たにもかかわらずにわかに信じられない。そしてそんな集団にいったい何を考えて村を襲ったのかわからない。
「なんで私たち襲われたんでしょうか?」
「それは俺にもわかんないな。でも多少の予測はできるぜ。まあ目的まではわかんないけどな」
「え?そんなことわかるんですか?」
バリーさんの言葉につい身を乗り出して聞いてしまう。
「まああくまで推測でしかないがな。この荷台の中や気絶させられる前までの村の様子を見た感じ、奴らは村の人間一人残らずに襲撃をかけたんじゃないかと思う。そして神聖術者を使ったのは一人のもらしもないようにするためだろう。なんせ神聖術には目に見えないものまで見えるようになる術なんてのがあるって噂だしな。そして俺たちが襲われた原因だが、その一つとして俺らがいなくなってもほとんど問題にならない点にあると思う」
「それってどういう―」
「簡単なことさ。俺たちの村は地図にも載ってないような村さ。その住人がいなくなったところで誰も気付かねえ。気付いたところで大分時間がたってからだろうし、あんな辺鄙な場所の調査なんか誰がするかってんだ」
「……」
「まあ現状予測できるのはこの辺までだが、正直今はどうにもならんな」
そんななげやりともとらえられるような言葉で締めくくられたバリーさんの推測にイヴの心はどんどん暗くなっていく。それからは終始無言のままイヴたちは荷台に乗せられどこかに連れられていく。
先の見えない不安とともに。
予定通り村での話はここで終了です
次回からは一応新章(?)みたいな感じになります
タグにつけてたあれやこれはここからようやく出てくる予定です




