06 ブレードの価値(VSヴァルクイザス)
アルドシティーの北西側には広大な森が広がっている。
高さ二十メートルほどの巨木が立ち並ぶ、うっそうとした森。未だに刈りきれないその森の向こうには、古き王国の首都があると言う。
その森を睨むように、四体の人型兵器が並んで立っていた。
レイルヘッド・イクシオン。
丸い頭に巨大な光学センサーのレンズがついている。
右腕は太く短い。その力強い腕で、ブラスターカノンとガトリングガンを組み合わせた大型の長銃を装備している。
逆に左腕は細く長く、しかも関節の自由度がかなり大きく作られている。これは、背嚢から取り出した弾薬を銃に再セットするための工夫。つまりリロード特化なのだ。
射撃戦闘をメインに見据えた、最新型のレイルヘッド。それがイクシオンだ。
四機のイクシオンには、それぞれ1から4までの番号が振られていた。
イクシオン2から4には、操縦者が一人だけ乗っている。
だがイクシオン1は後部座席も埋まっていた。そこに乗っているのはガーフだ。操縦を担当しているわけではないが、赤い色のパイロットスーツを着て、ベルトで椅子に体を固定している。
イクシオン1は指揮官機。頭部は通信機能と索敵機能を強化した特別パーツに換装されている。その分、重量がかさむのが難点だが。
その大型の索敵装置を使って、四機のイクシオンは森の様子を観察していた。
風に下草が揺れる音が聞こえる。緊張の一瞬。
森の奥に何かの影が動いた。
「今の、敵?」
ガーフは後部座席のパネルを操作してその部分の画像を拡大。
いた。
犬。いや、狼のようなシルエットの何か。ただし、小屋など踏み潰せそうなぐらいには大きい。
「まさか、群狼!」
ガーフは何度もその姿を確認するが、間違いない。
魔獣の中では、割と危険な部類とされている。
「嫌な魔獣が出てきたな。一昨日のやつらも、ヘルミータが出たなんていってたし。いつもこうなのか?」
「田舎は凄いって事かしらね」
「だが、これじゃあ、実験が成功したかどうかわからない……ごほん」
操縦者は何か言いかけた。
今回、ガーフ達がこの町に来たのは、何かの新兵器の実験が目的、と聞いている。だが、肝心の実験の内容をガーフは聞かされていなかった。
本来、この実験は、四機のイクシオンと実験装置さえあれば十分な物らしく、ガーフが同行する事になったのは中央政府の役人のきまぐれに過ぎない。
「まあ、あたしは別にいいんだけどさ……」
大事な話が、自分と無関係の場所で決められてしまうのは心地よくなかったが、文句を言っても始まらない。
中央政府は、未だに貴族の出身者が力を握っている。民間から育成された選抜戦略士の立場などお飾りに近い。
ガーフは目の前の戦いに意識を戻す。
群狼、ヴァルクイザス。
体長十メートルほどの狼型の魔物で、額に角が生えている。
四足で駆ける速度は時速百二十キロ、攻撃手段は噛み付きと体当たり。そして額の角から放つビーム。
このビームが厄介者だ。威力は高くないが、インパクト・レセプティブ・フィールドを貫通してしまう。しかも、狙いがやたら正確で、的確にこちらの急所を突いてくる。
それでも。単体なら大した魔獣ではない。その毛皮には防御力などないに等しく、ガトリングの一掃射で倒せてしまう。
だが、彼らは数十匹単位の大きな群れになって行動する習性がある。そして、知性が高い。人間と同等、あるいはそれ以上かも知れないと恐れられている。
当然、普通の狼のように鳴き声で情報交換し、陣形を組んで波状攻撃を仕掛け、こちらの弱みをついてくる。
火力だけに頼っていては倒せない相手だ。
これはある意味、選抜戦略士が最も必要とされる戦場と言える。
だが、駒が足りない。
どう立ち回っても、四機のレイルヘッドで勝てるかどうかはギリギリと言った所だ。援軍を呼ぶべきか、悩み、当人に聞いてみる。
「援軍を呼ぶべきか迷っているんだけど、どう思う?」
「おいおい。俺らがこんな奴らに負けるとでも思ってるのか?」
『舐めてもらっちゃ困るなぁ』
『狼なんか、百匹まとめて掛かってきても怖くねぇよ』
『ヴァルクイザスなら、別の場所で戦った事があります。あの時は自分も入れて六機で戦って余裕でした。四機でもそう変わらないでしょう』
全員、自信満々だった。
本当は援軍に賛成して欲しかったのだが……。
「……そこまで言うなら、任せてみましょうか」
ガーフは、やや投げやりに言う。
正直。彼らの戦いを見るのはこれが初めてなのだ。
できれば最初は、もう少し弱い相手が来て欲しかったのだが。
迷っている間にも、狼はノソノソと森から歩み出てくる。一匹、二匹。どんどん増える。
今から援軍を呼んでも間に合わない。
始めるしかない。
「戦闘開始。ガトリングで一匹ずつ射殺して。イクシオン1と2は正面、イクシオン3はやや右側、イクシオン4は左側を警戒……」
ガーフはテキパキと指示を出す。
だがその内心は穏やかではない。
さっき誰かが、レイルヘッド六機で戦ったと言ったが、セオリー通りにやったとするなら、ガトリング撃ちが四人、予備が二人という構成のはずだ。
今回は予備がいない。
もし誰かの能力が低かったり、何か予想外の事が起これば、一発で陣形が崩れて、後はなし崩し的に脱落者が出て行くだろう。
かなりリスクの高い状態と言える。
ズダダダダダダダダダダダダダ
四機のイクシオンは攻撃を開始する。
ガトリングの連射一秒で、ヴァルクイザスは全身から血を吹いて倒れる。弱い。
だが数が多い。後から後からわき出てくる。
殆どの狼は正面から出現する。こちらに二機を割り振ったガーフの判断は正しかったようだ。
だが、あえて回り込んで横からの攻撃を試みるヴァルクイザスもいて、それもイクシオン3とイクシオン4が、ちゃんと射殺している。
もちろん、森の中を回り込んでも影が見えるので、こちらを出し抜くことはできない。
だが、ガーフは何か不自然な物を感じた。
「なんだろう? イクシオン4の方に出現する狼が妙に多いような」
『ああ、もう弾が切れた!』
イクシオン4がリロードに入ってしまう。
無駄弾を撃ちすぎだ。
戦闘中にもっとも危険になるのが、この瞬間だ。現在、イクシオン4は自分で自分を無力化してしまったに等しい。
そして、ヴァルクイザスもそのタイミングを狙っていたのだ。
左側から、同時に五匹ほどのヴァルクイザスが飛び出してくる。
「しまった! 左、イクシオン1は左を援護!」
慌てて対応するイクシオン1。二匹を即座に撃ち殺し、復帰したイクシオン4と同時に残りの三匹を射殺する。
そしてイクシオン1は弾切れ。
「リロード!」
当然のリロード。これが終わったら正面の対応に戻る、はずだった。だが。
『あっ!』
イクシオン2からの悲鳴。
何があったのかと見ると、頭部パーツが煙を上げていた。
『前が見えない! メインカメラが!』
ビームだ。
イクシオン1が左を向いている間、前方への対応が疎かになっていた。そして、イクシオン2だけでは捌ききれなくなったために、ビームを撃たせる隙を許してしまった。
もうイクシオン2は戦力としてはカウントできない。
四機でもギリギリ負けていた状況なのに、一機減ってしまった。
「イクシオン3! 射角を前方向にも広げて!」
ガーフはとっさに呼びかける。だが返事がない。ただ自分の担当範囲の敵を撃ち続けているだけで、余裕はあるはずだが。
良く見れば、向こうも頭にビームを受けて、アンテナが破壊されてしまったようだった。
『ちくしょう、どうすればいい! どうすればいい!』
『いいのか? このままでいいのか?』
パニックに陥っているイクシオン2とイクシオン4。左側の対応も疎かになり始めた。
正面はまるで間に合っていない。
とうとうイクシオン1にもビームが命中し始める。
「あんた達、私の言う事を聞きなさいよ!」
ガーフは叫ぶが、そんな事をしてもダメだ。
現場において何よりも大切なのは信頼関係だ。
ガーフとイクシオン部隊の間では、信頼関係の構築に失敗しているようだった。
仮に上官が出す指示が的確だったとしても、部下が従ってくれないのでは意味がない。
逆もある。上官が部下を信頼できないなら、大胆な指示を出して戦局をひっくり返す決断などできるわけがない。
今がまさにその状態だった。
戦局を覆す方法はない。かと言ってこのまま戦っていても、一機ずつやられていくだけだ。後がない、確実な死!
選べる手段はただ一つ。屈辱を受け入れながら、ガーフは無線機にすがる。
「本部! 本部! 援軍を要請する!」
返事がなかった。
「本部! 応答しなさい! ……聞こえていない? まさか、通信アンテナも既に壊されているの?」
単に受信用アンテナが壊れているのか、送信用もまとめてダメなのか、判断がつかない。
たぶん両方だろうが。
「だから言ったじゃないか! 最初に援軍を呼んでおけって!」
イクシオン1の操縦者が叫ぶ。戦闘前には余裕を見せていたのに、何を今更だ。
ガーフが黙っていると、操縦者は後ろを振り向いてさらに叫ぶ。
「だいたいおまえみたいな小娘が! 俺達に指示なんか出してもなぁ!」
「バカ! 前!」
ヴァルクイザスの一体が、飛び掛ってきた。体当たり。
これはインパクト・レセプティブ・フィールドでは防げない。
装甲には傷一つつかないが、衝撃で転等てしまう。
そして、起き上がる暇など、ヴァルクイザスが与えてくれるわけがない。
イクシオン2も倒れていた。
イクシオン3とイクシオン4の姿は見えない。後退、というか逃亡してしまったようだ。
「もうダメか……」
倒れたイクシオン1に近づいてくるヴァルクイザス。
巨大な口で視界のすぐ下に噛み付く。だが、インパクト・レセプティブ・フィールドに阻まれたのか、すぐに止めた。
そして今度はビームを撃ちこんで来る。執拗に、何発も。
メインカメラの位置などを考えれば、そこは胴体だ。装甲を貫かれてしまえば、その奥にあるのはこのコクピットだ。
「なっ、コクピット狙いだと? こいつら、何を考えて……」
狙いは明らかだ。全身が金属でできているレイルヘッドにおいて、一番柔らかい部品は人間だ。しかも、それが失われれば巨大な鉄くずになる。
ヴァルクイザスはそれを知っているのだ。だからコクピット狙いの攻撃もしてくる。
「落ち着きなさい! 左腕のアンカーガンを使って!」
操縦者が指示に従ったのか従わなかったのか、それはわからない。
警告音。左腕が噛み千切られたようだ。軽量化のため腕はフィールドが最低限しかない。
接近戦になったら、もうどうしようもない。
「ちくしょう! 俺はこんな所で死なねぇぞ!」
操縦者は叫ぶと、何か操作した。
機体後部のハッチが開いたようだ。後ろに倒れている今、その出口はガーフの下にある。
「待ちなさい!」
「うるせぇ! てめぇの事なんか知らねぇよ!」
操縦者は叫んで飛び出していく。
ベシュゥン!
外で、何か変な音がして、何かが破裂した。
ガーフには、ヴァルクイザスが、人間をビームで撃ち殺した音のように聞こえた。
「……」
ガーフの歯がカチカチと鳴り始めた。
外に出たら死ぬ。
だが、ここに閉じこもっていても時間の問題のようだ。機体のあちこちを、ガンガンと叩かれて、またどこかが壊れる。
「もう、お終いだ……」
涙が溢れそうになって、ガーフは目を閉じ、頭を抱えた。
そして、自分を殺す音が聞こえてくるのを静かに待った。
ズダダダダダダダ
鳴り響いたのは、ガトリングの発砲音だった。
イクシオン1を襲っていたヴァルクイザスが吹き飛び、他のヴァルクイザス達も森に逃げていく。
「嘘? まだ味方が残っていたの?」
慌てて辺りを見回す。
逃げ出したイクシオン3かイクシオン4が戻ってきたのかと思った。
あるいは、さっきの通信が届いていて、軍の援軍が届いたのかと思った。
どちらでもなかった。
やって来たのはアーカード。エドガーの操るレイルヘッドだ。
『そこ! 指揮官機か? まだ誰か生きてるか?』
スピーカーの大音量が響く。
ガーフは周囲のヴァルクイザスを確認し、今なら出ても問題ないと判じ、コクピットの外に出た。
「あんた、なんでこんな所に!」
『ガーフか? 他の奴らは?』
「……」
ガーフが答えないでいると、はどこかに向けてガトリングを撃つ。何匹かのヴァルクイザスが吹き飛んだ。轟音で耳が痛くなる。
『とりあえず、コクピットに入れ!』
アーカードはしゃがんで、右手の平を地面の高さに下ろした。
ガーフがそこに乗ると、手は持ち上がり、首筋につく。
同時にハッチが開いた。
人を乗せるのにずいぶんと手馴れているようだ。
◇
エドガーとしては、ただの見物が目的であって、それほど急いでやって来たわけではなかった。だから現場の近くまで来た時に、無線から流れてきた声に驚いた。
『本部! 応答しなさい! ……聞こえていない? まさか、通信アンテナも既に壊されているの?』
ガーフの声だった。通信アンテナ《も》とは、かなり切羽詰った状況になっているらしい。速度を上げて向かう途中で、二体のレイルヘッドとすれ違ったが、呼びかけても返事をしてくれなかったので無視して進んだ。
もしあれにガーフが乗っていたのなら、放っておいても逃げ切れるだろう。気になるのは残りの二台の状態だ。
現場にたどり着くと、二体のレイルヘッドが倒れていて、それを狼型の魔獣が取り囲んでいた。とりあえず、ガトリングを掃射して追い払って、呼びかけてみたらガーフだった。そういう状態だ。
「まあ、これでマイリアへの義理は果たしたかな」
ぼやきながら、ハッチの開閉ボタンを押す。
外からガーフが飛び込んできた。
「なんでアンタがここにいるのよ!」
「うるさいな。おまえ帰ったら、マイリアに感謝しとけよ」
「あんたの意志で来たわけじゃないんだ」
「当たり前だろ。まさかこんなにあっさり負けるとは思ってなかったんだよ! あんなに大口叩いたくせに! ……おまえバカじゃねーの?」
ガーフは何も反論してこない。結果も見ての通りだから、言い訳は不可能だ。
代わりに提案してくる。
「撤退しましょう。一機で勝てる相手ではないわ」
「何言ってるんだおまえ、本物のバカか?」
「アンタ、状況がわかってるの?」
ガーフは
「わかってないのはおまえだ。おまえの仲間も逃げ出しちまって、俺までここから退いたらどうなるんだ? 町一つをあいつらに食わせてやればいいってのか? 市民の避難なんて間に合わないぞ」
「それは……」
エドガーは理解した。
ガーフはそれなりに頭はいいのだろう。だが、それだけだ。一番大事な物がない。
きっと、戦えと命じられたから戦っているだけで、自分の意思で戦った事がないのだろう。それではダメなのだ。
戦うか否かは、勝てるかどうかで判断するものではない。
「アルドシティは、メイガース家の町だ。そして俺はその跡継ぎ。要するに、あれは俺の町なんだよ! 誰にも渡さん!」
「……そう」
何かを諦めたような声で、ガーフは言う。助かったと思ったら、また危険に放り込まれて災難な少女だ。
エドガーもその件については少し同情した。だが、安全な所に送り届けている時間はない。
「シートベルト、しておけよ」
カチャカチャと金具の音。状況を受け入れて、ちゃんと座ったようだ。
「一応聞くけど、ブラスターカノンは、持ってきてるんでしょうね?」
そして、馬鹿げた質問まで飛ばしてくる。
「…………ないとマズかったか?」
エドガーは気マズイ思いで答えた。持ってきていない。だって、負けてるとは思っていなかったから。
「装備もなしに、どうやって戦う気なのよ!」
「ガトリングでいいだろ。こんな奴ら……」
アーカードは、設計理論が古いので、ガトリングは内臓式だ。装弾数は多いが戦闘中のリロードは不可能。全滅させるには弾が足りない。
そんな会話をしている間にも、体勢を立て直したヴァルクイザスの群が飛び掛ってくる。
ガトリングの水平掃射。その弾幕を潜って突っ込んで来た一匹を、右腕で殴り飛ばす。
武器は微妙だが、十分戦える。
ガーフも納得したのか、張りのある声で言う。
「わかった。あたしの指示に従って」
「指示?」
前からやって来る五匹のヴァルクイザス。それを撃とうとした時、視界にマーカーが表示された。
「ここ、ガトリングを撃って!」
わけがわからないまま撃つ。そこにいたヴァルクイザスが、足を引きずりながら逃げていく。確かに敵はいたし気付いていたが、優先目標ではなかった。
「今のはなんだよ」
「ビーム狙撃よ! あいつらは、頭部を狙ってくる」
「……なんだと?」
今の牽制を放たなかったら、メインカメラを壊されていたと言うのか。
だが、どうしてそんな事を断言できるのだ?
「これが、選別戦略士の力?」
そうなのだろうか? よくわからない。
「前、来てる!」
「お、おう!」
理解できないまま、迫っているヴァルクイザスにガトリングを掃射。ギリギリまでひきつけたせいで五匹全てに致命傷を与えたが、アーカードも体当たりを食らって吹っ飛んだ。
「うわっ?」
倒れたアーカード。別の方向から近寄ってくるヴァルクイザスを蹴飛ばして無茶な動きで起き上がる。
このままでは、埒があかない。
何より、ガトリングの弾丸が、後三回分ぐらいしか残っていない。
「次、右方向に掃射して撤退!」
「退かないって言っただろうが!」
言われたとおり、ガトリングを右方向に連射しながら、エドガーは別の事もしていた。
背中のブレードだ。右手で引き抜く。
「ちょっ、何やってんの!」
「弾が切れたら、これしかないんだよ!」
今の掃射で体勢が崩れたヴァルクイザスの群れに、ブレードを掲げながら突っ込む。
一閃。二閃。三閃。
逃げ遅れた七匹ものヴァルクイザスが、あっという間に真っ二つになる。
「嘘……」
ガーフが驚きの声を上げる。
だが、これがブレードだ。
接近戦に持ち込みさえすれば、最大の火力を誇る。しかも弾切れがない。強いて欠点を上げるなら、後で整備員に「腕のパーツ磨り減るの早すぎだろ、少しは機体を労われ」と文句を言われるぐらいだ。
ヴァルクイザスの残りはおよそ十匹。一箇所に固まっていてくれれば、一瞬で倒せるのだが、そう上手くは行かない。
ブレードで攻撃しようとするが、上手く行かない。
こっちから近づいても逃げられてしまい、攻撃が間に合わないのだ。
「違う! 左のヴァルにガトリングを向けて牽制。その隙に右側をブレードで攻撃!」
ガーフは、ブレードの性能を受け入れたのか、指示に組み込んでくる。
そして言われたとおりにすると、面白いように当たる。
残り五匹。
「ガトリングで掃射!」
残り三匹。
「左にキック、そして右側にブレード」
攻撃は外れた。当然だ。
「ふさけんな! 足とブレードを同時は無理に決まってんだろ! バランスが崩れる!」
「なっ……。ならば一度下が……右にガトリング!」
右にいたヴァルクイザスにガトリングを掃射する。ビームを放とうとしていたようだが、被弾して吹き飛んだ。残り二匹。
「ガトリング、残弾ゼロ!」
「敵には悟らせないで! 次で最後。たぶん左右から同時に来る!」
ガーフの言う通りに、二匹のヴァルクイザスは、左右対称の動きをしながら左右に分かれて
「」
ヴァルクイザスは動揺を見せず、そのまま走ってくる。
ハッタリを見抜いているのか。あるいは避ける意味がないと思っているのか。
もう意味がないと判断して、左腕のガトリングを格納。
後はブレードだけが頼り……。いや、まだ武器はあるが。
「とりゃぁっ!」
アーカードがブレードを大振りする。左腕で。その一撃で、左側から来たヴァルクイザスが真っ二つになる。そして、右から飛びかかってくるヴァルクイザスに、右腕を向ける。
ズドォォォォン!
火薬の炸裂する轟音。そして、直径200ミリの金属杭がヴァルクイザスの喉元を貫通して背中から生えていた。
どさり、飛んできた勢いを殺さず、ヴァルクイザスの死体を投げ捨てる。
これでもう、動く物は残っていない。
「ふぅ……」
エドガーは息をつく。
念のために、残った敵がいないか走査しながら、エドガーは後部座席に向かって言う。
「見たか。これが貴族の戦い方だ!」
他の貴族が見ても同意してくれるかは微妙だが。
「うん、そうね」
まだ混乱しているのか、ガーフは曖昧な返事を返してきた。




