生命の秘宝
俺は大木琢磨
不運な事故により命を落としたのだが、この世界に散った偉大なる者の魂を100個集めることで蘇生させるという契約を結んだ
「・・・どういうことだ?」
世界に色が戻るとそこには戦う前の世界が広がっていた
「それはさっきの奴の力が弱かったせいよ
さっきのは現象型のOパーツだったけど・・・
現象型にかかわらず、最初の段階では転界と呼ばれる異世界でないと力を行使できないの
でもOパーツの力を使いこなすことによって転界で行った事象がこちらの世界にも影響を与えるようになる」
「さっきの闘いみたいなことがこっちでも起こると?」
「そのまま影響するわけじゃないけど、最悪この世界が滅びるかもしれない」
マリィの言葉には力があった
まるで実際に世界が滅びたことがあるように・・・
「・・・そういえば、さっき現象型っていったな?
他にも種類があるのか?」
「ええ、他に武装型と獣化型、それに現象型の3種類存在するわ
・・・本当は最初にこの説明をしたかったんだけどね」
マリィは苦笑しながら、話を続けた
「武装型はOパーツが武器になるタイプ
起動が早くて、武器によって特殊な力を有しているものが多いわ
獣化型は文字通り体を部分的もしくは全身をOパーツに宿っている獣の姿へと変えるタイプ
3つタイプの中で身体能力が強いのはこのタイプで肉食系動物と装飾系動物の大きく2つに分類されるわ
最後に現象型は自然の力を操るタイプ
広範囲に力を行使できる反面、消耗が激しいのが特徴であなたの炎もこれに属しているわね」
「現象系・・・か」
「それでね、ここからが重要でね
武装型は獣化型に強く、獣化型は現象型に強く、現象型は武装型に強いの
理由は色々あるし、これに当てはまらないときもあるけど相性的にはこんな感じ
それでさっきのパターンで同じタイプ同士と当った場合はまた相性が発生するんだけど・・・現象型が顕著に現れるわ
さっきの相手は地の属性で火の属性あなたは相性が悪かった
相性が悪い相手の場合、同じ力同士でぶつかったときには不利になる
相性の悪さを無視して勝つ為にはあいての倍近い力が必要になるの・・・さっきは運がよかったわ」
「そうか・・・」
ぐらっ・・・
「え・・・」
半霊体となった俺の視界が真っ暗になった
「・・・ま、・・・くま」
それからどれくらいの間意識を失っていたのだろう
「・・・たくま!」
「・・・ああ」
かぶり振るうように起き上がると同じ場所で俺は空を見上げていた
「やっと、起きた・・・心配かけないでよね」
「どれくらい・・・意識がなかった?」
「半日くらいね
なんども声をかけても反応しないし・・・今みたいな状態だとやられちゃうよ?」
「・・・そうだな」
辺りは既に暗くなり、繁華街が賑わっていた
「いったん、ここを離れましょう
半日も何なかったなんて運がよすぎるわ」
シィーーーーーーン・・・
世界の動きが止まり、色があせた
「転界!?」
ゾクッ!
背筋が凍るような冷たい殺気が俺を貫く
「まずいわ・・・これは獣化型の肉食系動物・・・」
「路地は危険だな
ここで迎え撃つ」
フッ・・・
殺気が消えた
周囲を見回し、警戒態勢を続ける
・・・ザシッ
真後ろで何か音が聞こえた
バッ!
振り向くと目前に白い毛並みの大きめの犬のような生き物が迫っていた
「はぁっ!」
イメージするのは炎
そのイメージを拳に乗せ、それに向けて打ち放つ
ぼぉぉおおおおお!!
突然現れた炎に獣は動じることなく突っ込み、炎に接触するとともに消え去った
「え?」
「琢磨、後ろ!!」
マリィの声で振り向くと眼には鋭い爪が俺の喉笛を切り裂こうと迫って居るところだった
とっさに体を捻っていた
炎を出す余裕はなかったし、なにより本能的に動いていた
それが俺を救った
ザシュッ!!
爪は俺のわき腹を切り裂き、追撃することなく物陰に隠れ気配を消した
・・・避けれなければ決まっていた
「さっきのはなんなんだ・・・」
「さっきのはビーストソウル
本体が力を放出して生み出す分身のようなもので力を込めたぶんだけ性能が上がるわ」
なるほど・・・さっきの相性ってのはこういうことか・・・
俺の炎は連発は難しい・・・みたいだし、一撃外せばその後は反撃も難しい
「相手は狼の獣化型よ
一度傷を負わせた以上、こいつはとことん追ってくるわ」
ポタ・・・ポタ・・・
持久戦・・・追われているこっちが不利だ
思考が段々と戦闘的に変わっていく
さっきの炎は無駄がありすぎる・・・もっとコンパクトに保って・・・
右手から炎が滲むように出てきた
イメージだ・・・炎を武器のように・・・剣の形を持たせて保つ
視界という外部の情報を感知する機関を一時放棄し、剣の形をイメージする
ザワッ・・・
相手は死角から接近していた
ヒュッ・・・
先程の腹を切り裂いた爪をかわしながら剣を振り下ろす
ぼふっ・・・
だが、剣はあっけなくもう片方の爪によりかき消された
「・・・舐められたものだ
形だけの剣に恐れを抱くものか」
そいつは先程切り裂いた傷をさらに斬り付け物陰へと隠れた
形だけの剣・・・確かに、その通りだ
だが、どうする・・・
普通の炎ではさっきのビーストソウルに対応できない・・・
傷をわざと受けてあいつの動きとめる・・・
いや、無理だ・・・次こそ喉笛を掻っ切られる
どうする・・・どうすれば・・・
ザシッ!!
相手は考える間を与えることなく四方から迫った
「ぐっ・・・」
「琢磨後ろにも!!」
考えがまとまらないまま迫り来る死
ズキッ!!
避けようにも先程の傷で動きを鈍らせる
ビーストソウルが目前まで迫った
・・・だらしねぇ、男なら一度決めた道くらい貫きやがれ・・・
「!?」
右手に炎が集約される
体が勝手に動いた
ブゥンッ!!
右腕が大きく振るわれ、その動きに従うように青い炎が剣を成す
「ハッ!!」
青い炎は周囲の酸素を食い荒らし、高熱を発しながらビーストソウルを焼き切った
「・・・出て来い、獣
形だけの剣に恐怖を抱かぬのだろう?」
挑発を受けてそいつはどこからともなく殺気を露にした
「こい、キサマの転界もそろそろ限界だろう?
・・・ここらで幕としよう」
・・・・・・
一時の静寂が訪れた
・・・ザザザザザザ!!!!
10数頭のビーストソウルが正面から突撃してきた
本命は裏をかいて後方からか、それともさらに裏をかいて正面か
しかし、そんなことは些細なことだった
ブンッッッ!!
一線
青い炎の剣がビーストソウルを焼き払い、さらに一歩飛び込んでいた
「はぁぁぁああああ!!」
そこにはあっけにとられる本体がいた
ブゥゥゥンンッッッ!!
一撃で両断されたそいつは、苦しむまもなく牙をかたどったアクセサリーに姿を変え、消えていった