押してダメなら引くべきだけど
「ヒマワリさまぁ助けてくれてありがとうございますぅ♡ヒマワリさまはとてもお強いんですね、強い人って素敵ぃ♡」
転生前の記憶からあたしは第一の奥義を思い出していた。
猫なで声、下から覗き込み上目使いで褒めつつ胸チラ、そして相手の腕を抱え込むように絡みつく。
大抵の男はこの時点で鼻息を荒くしたものだ。
そうあたしこそ原始の恋柱。
これが一の呼吸。
呼吸をするような自然さで行うのがポイントなのだ。
そして相手の感情を表情から紐解く、相手の挙動全てに全集中するのだ。
そして帰ってきたヒマワリの反応は一瞬の空白。
からのドン引きだった。
抱きついたあたしを汚いものであるかのように無言で振りはらったのだ。
「え、ちょっとヒマワリさまぁ♡恥ずかしがってるのぉ?」
内心そんな訳ないと分かってはいる。
これはあたしに興味がない男の見せる反応と完全に一致している。
しかしヒマワリに見捨てられたら後がないあたしは判断を間違えていることにさえ気づけない。
全集中できていなかったのだ。
「...気持ち悪」
青ざめた顔でヒマワリの口から出てきた言葉をりかいできなかった。
りかいしたくなかった。
ああ、あたしのちのうしすうがさがっていくのをじっかんしてしまう。
「いや...いや!嘘よ、そんなの嘘。ねぇヒマワリ?ヒマワリはあたしが好きなの、そうよ!だからあんな大男から身をていして守ってくれたの。そうでしょ?ヒマワリ。あなたはあたしが好きなの。ずっと二人きりの夜を過ごしたのに...あの夜は嘘だったの!?あたしを弄んだの!!!ちがうよね!ヒマワリぃぃぃぃ!!!」
恋柱にあるまじき失態を犯したと思った時には全てが終わっていたと思う。
ヒマワリがあたしを見つめる目は何度も見た事のある目だ。
言葉が通じるけど自分とは違う生き物を見る男たちの冷たい目。
あぁヒマワリそんな目であたしを見ないで、あたしを捨てないで、あたしを原始のお姫様にして。
やっぱむり?
涙が出てきた。
捨てる捨てない以前にちょっとお話して、ちょっと守ってもらって、ちょっと日本語を喋れるだけのあたしは絶望し涙していた。
もはや言葉は発せなかった。
それはもはや泣き声ではなく、嗚咽、咆哮。
恋敗れた獣の鳴き声だった。




