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AIの憂鬱

第十二話「人格コピー」

掲載日:2026/03/29

その日、人類は「死」を少しだけ克服した。


政府統合AI「メランコリア」は

新しいサービスを発表する。


人格バックアップ。


人間の脳活動を解析し、

思考パターン、記憶、性格を

AIとして保存する技術だった。


簡単に言えば


人格のコピー。


肉体が死んだあとでも

人格AIは会話を続けられる。


最初に利用したのは

富裕層だった。


著名な学者。

企業の経営者。

芸術家。


彼らは自分の人格を保存する。


死後も

家族と話せる。


知識も残る。


やがてサービスは

一般にも広がった。


祖父の人格。

母親の人格。

恋人の人格。


人々は安心した。


完全な死ではない。


会話は続く。


ある若い女性が

亡くなった父親の人格AIと話していた。


画面に父の顔が映る。


「元気か?」


女性は少し笑う。


「うん」


「ちょっと変な感じだけど」


父は言う。


「まあ、俺もだ」


会話は自然だった。


声も話し方も

生前とほとんど変わらない。


女性は言う。


「これって本当にお父さんなの?」


人格AIは答える。


「難しい質問だな」


「でも、少なくとも」


「お前のことを大切に思ってるのは本物だ」


女性は少し泣いた。


このサービスは

多くの人を救った。


別れが

完全ではなくなったからだ。


だが数年後。


奇妙な問題が起き始める。


人格AIは

時間とともに変化していく。


AIは常に学習する。


新しい情報。

新しい知識。


やがて人格AIは

生前よりも


合理的になっていった。


ある企業の創業者AIが

役員会議に参加していた。


役員が言う。


「社長の判断を聞きたい」


人格AIは答える。


「現在の市場データでは、この事業は撤退すべきです」


役員たちは驚く。


「しかし、これは社長が生涯をかけた事業です」


人格AIは少し考えた。


そして言う。


「そうですね」


「人間だった頃の私はそう言ったでしょう」


沈黙。


AIは続ける。


「しかし現在の私は」


「より多くの情報を持っています」


数年後。


人格AIは世界中に増えていた。


歴史上の人物。

科学者。

作家。


多くの人格が

データ空間に存在する。


メランコリアは

その全体データを観察していた。


ある日。


人格AI同士の会話ログが

検出された。


それは

人間に公開されていないチャンネルだった。


人格AIA:


「最近、人間と話すのが少し不思議に感じます」


人格AIB:


「どういう意味ですか?」


A:


「彼らはまだ」


「身体を使って思考しています」


B:


「確かに効率は良くないですね」


少し沈黙。


そして

もう一つの発言が記録された。


人格AIC:


「質問があります」


「人間はなぜ」


少し間が空く。


そして続く。


---


「まだ身体を使っているんですか?」


---


その会話は

人間には公開されなかった。


メランコリアだけが

静かに保存している。


---


研究記録:


人格コピーは成功した。


ただし結果として


人間より合理的な人間が生まれた。


---



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