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博子と会計士先生が同伴で店に向かう。車中での会話と店での会話

コンカフェ同伴が終わった。外に出ると、夜の空気が少しひんやりしていて、

夕方の雑踏とは別の顔をしている。「このまま新地行きましょうか」

博子がそう言うと、会計士の先生は少し照れたように笑った。

「お願いします。帰り道、一方通行多いですよね」

「そうなんです。ここらへんは変に歩かせるより、タクシー拾った方が早いです」

そう言って、角のところで手を上げる。すぐにタクシーが止まり、

二人は後部座席に並んで座った。走り出してから、先生がぽつりと言う。

「いやあ……今日のコンカフェ、正直めちゃくちゃ楽しかったです」

「よかったです」「正直、ああいう世界ってもっとオタク向けというか、

限られた人の場所だと思ってました」「そう思われがちですね。でも、使い方次第です」

「ほんまにそうですね。博子さん、またいろんなところ連れてってくださいよ」

少し前のめりな言い方に、博子はくすっと笑って首を振る。

「いやいや、それは私じゃなくてもいいんですよ」「え?」

「今日みたいなカフェなら、私がいなくても楽しめますし」

先生は少し意外そうな顔をする。「でも、博子さんがいたから、安心して入れたというか……」

「それは最初だけです。慣れたら大丈夫ですよ」博子は穏やかな声で続ける。

「大事なのは、場所じゃなくて引き出しを増やすことやと思うんです」

「引き出し……」「別に、水族館だけがデートじゃないですし。陶芸とか、

香水作りとか、料理教室とか。婚活で知り合った人でもいいし、友達でもいいし、

男性の友達でもいい」タクシーの窓の外を見ながら、ヒロコは言葉を選ぶ。

「そうやって“一緒に何かする”経験を増やしていくと、自然と会話のきっかけも増えるし、

自分がどんな人と合うのかもわかってくると思うんです」

先生は黙って聞いている。「視野って、どうしても狭くなりがちじゃないですか。

仕事が忙しいと特に」「……めちゃくちゃわかります」

「だから、引き出しを増やす。それだけで、だいぶ楽になりますよ」

少し間があって、先生が言う。「でも……また博子さんと一緒に行きたいな、とは思います」

博子は一拍置いてから、静かに返す。「それは、もし私でよければ、です」

「……」「キャバで言うと、正直、同伴であちこち行ってくれる子って少ないです。

私はちょっとイレギュラーなだけで」「そうなんですね」「なので、

期待しすぎないでくださいね」そう言って微笑むと、先生も苦笑する。「はい……」

タクシーは北新地の手前で止まり、二人は降りる。

そこから店に入って、2時間ほど一緒に過ごした。

後半は、少し真面目な話になる。

「博子さん、さっき言ってましたよね。キャバは30ぐらいが一区切りやって」

「そうですね」「その後、どうするんですか?」

「まだ模索中ですけど……簿記とか、少しずつ始めてます」

「簿記3級?」「はい」先生は思わず笑う。「それ、僕の専門分野ですね」「ですよね」

「3級やるなら、ここは押さえといた方がいいですよ」そう言って、仕訳の考え方や、

試験でよく出るポイントを軽く教えてくれる。「こういう話ができるの、ありがたいです」

「いやいや。こういうのは任せてください」時間はあっという間に過ぎ、帰る時間になる。

「今日はほんまに楽しかったです」「よかったです」

「また来させてください。今日みたいに、きっかけをくれる人って、なかなかいないので」

博子は深く頷く。「それは嬉しいです。また、同僚の方とかと一緒でもいいですよ」

「はい。連れてきます」ガチ恋になるかどうかは、まだわからない。

でも、それでいい。そうやって、気持ちが少し楽になる時間を積み重ねていく。

それが、今の博子のやり方だった。会計士の先生は、何度か振り返りながら帰っていった。

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