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弁護士先生帰宅後昨日来た遺品整理の社長がワンセット顔をだす。

土曜日にしては少し落ち着いた空気の中で終わろうとしていた。

フロアもそこまで騒がしくなく、今日はこのまま静かに終わるかな、

なんて思っていたところに、ふらっと昨日来た遺品整理の会社の社長が来た。

「あ、昨日の子おる?」そう言われて、博子が呼ばれると、社長は少し照れたような

顔で、「昨日な、ちょっと面白かったから、今日は軽く顔出しに来た」と言う。

「今日はワンセットだけな」そう言いながら、黒霧島を一本入れてくれた。

正直、ガツガツした感じは一切なくて、ほんまに“様子見”というか、“もう一回話してみよか”

ぐらいの温度感。博子としても、その距離感がありがたかった。

乾杯をして、まずは昨日の続きみたいな感じで、軽く雑談から入る。

そこから自然と話題はSNSの話になる。

「博子ちゃん、YouTubeやってる言うてたやん?」

「はい、まだ全然ですけど。今280人ぐらいで、ほんまに淡々と雑談してるだけです」

踊らへんし、企画も派手なことはしてへん。

政治のニュースとか、日常のこととか、考えたことをそのまま話してるだけ。

収益もまだゼロ。目先の目標は、まず収益化ラインに乗せること。

「でもな、それで280人おるんは、普通にすごいで」

社長はそう言って、少し真剣な顔になる。

「正直な、うちの会社もSNSやらなあかんって言われ続けてるけど、

何したらええかわからへんねん。コンサル入れたら、すぐ何十万とか、

月額で何万とか言われるしな。それやったら、ヒロコちゃんみたいな子に話聞いて、

ちょっとやってみて、あかんかったらやめるぐらいでええんちゃうかなって思ってんねん」

ヒロコは少し驚きつつも、

「私も正解は分からないですけど、無理にバズらせようとせんでも、

“誰が見てるか分からん”ぐらいの発信を続けるのも一つかなって思ってます」

すると社長は、「それや、それやねん。その感覚が欲しいねん」と笑う。

「ちょっとな、もし良かったら、明日とか昼間にお茶でもしながら、

その辺の話、もうちょい聞かせてもらわれへん?」

営業っぽくもなく、下心丸出しでもなく、あくまで“相談”という空気。

「全然いいですよ」そう返すと、社長はホッとしたように、

「じゃあホテルのラウンジとかで、軽くな」と決めて帰っていった。

帰り際、「もし今後、仕事絡みで頼めることあったら、博子ちゃんにも

振るかもしれへんし」そんな一言も、さらっと添えられていた。

ワンセットだけの短い時間やったけれど、ただの“お客さん”で終わらず、

どこか“次”につながる余白を残した夜。博子は、グラスを片付けながら思う。

こういう出会いが、すぐにお金になるわけじゃない。でも、ちゃんと話を聞いてくれて、

ちゃんとこちらの考えを面白がってくれる人と、少しずつ関係を積み上げていく。

それが、今の自分には一番合っているやり方なんやろな、と。

そんなことを考えながら、静かにその夜は終わっていった。

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― 新着の感想 ―
火曜と金曜しか来てなかったのに毎日来てんじゃねえよ。周りは迷惑してんだよ。
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