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金曜日。清掃会社社長との同伴、店にて和やかな時間を過ごす

金曜日の午後。スマホが震えて、画面を見る前からなんとなく分かった。

清掃会社社長や。「この前の花見、マジでありがとうな。めちゃめちゃ良かったわ」

そう言われて、博子は一瞬だけ間を置いてから返す。

「いえいえ、こちらこそです。あんな時間、なかなかないですし、

すごく楽しい経験させてもらいました。色々お気遣いもありがとうございました。

これからも、よろしくお願いします」言葉にすると定型文みたいやけど、嘘はない。

ほんまに、あの日は良かった。今日の同伴は、天ぷら。カウンターの店を用意してある。

派手さはないけど、油の音が心地よくて、職人の手元が見える店や。

それを伝えると、社長は少し笑う。「毎回ちゃんと考えてくれてるよな。

 懐具合も見てくれて、でも前と被らんようにしてるやろ。あれがな、

 地味やけど一番にくい演出やねん」そう言われて、博子は思わず照れる。

「いや、そんな大したことしてないですよ。細々、頑張らせてもらってるだけですし」

「それができへん人が多いんよ」社長は天井を見上げるようにして続ける。

「みんなな、すぐ寿司か焼肉行ってまう。分かりやすいし、楽やからな。

 でもな、それ、連れて行く方もしんどいねん。金もかかるし、正直、飽きる」

「それは…分かります」博子も頷く。「女の子側も、毎回それやと印象残らへんですし。

 連れて行く方も無理してる感じ、伝わりますよね」「やろ?」社長は嬉しそうに笑う。

「さすが分かってるわ。だからな、博子みたいに“ちょっとずつ違う”を出してくれるのは、

ほんま助かる」そんな会話をしながら、天ぷらが一品ずつ出てくる。

海老、キス、季節の野菜。揚げたてを塩でつまむ。会話も、自然とゆっくりになる。

最近の仕事の話。思うように進まへん案件。部下との距離感。家庭ではあまり

言えない愚痴。博子は聞く。相槌を打つ。時々、自分の生活の話も少しだけ混ぜる。

「家と店と、あとYouTubeぐらいですよ。そんな派手なことしてないです」

「それがええんや」社長は即答する。「ちゃんと地に足ついてる感じするもん」

そうして同伴の時間は終わり、店へ向かう。入店してからも、流れはそのまま。

「じゃあ、2セットいよか」すでに開いているボトルを飲みながら、また話が続く。

「この関係、ええな。無理せんで、長く続けたいわ」「私も、そう思ってます」

次はどこ行くか、という話になる。「有馬とかどうや?」

「有馬は一日使いますよね」「せやなあ。じゃあ、姫路は?」

「姫路、30分ですもんね。半日で行けますね」そんなやり取りが楽しい。

博子も提案する。「北浜の川辺とか、行ったことあります?」

「いや、ないな」「五感のカフェとか、落ち着いてていいですよ」

「また渋いとこ出してくるなあ」そう言って、社長は笑う。

ご飯の話、次の予定の話、他愛もない雑談。気づけば2時間。

派手なことは何もない。でも、変に気を使わなくていい。

無理に盛り上げなくていい。“非常にいい関係”という言葉が、しっくりくる夜やった。

博子は、グラスを置きながら思う。こういう積み重ねが、今の自分には一番合ってる。

今日も、悪くない金曜日やった。

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