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モテるための練習台としての博子。コンカフェ同伴もいかが?www

「じゃあさ、練習よろしくお願いしますわ」

 半分冗談、半分本気。そんな笑い方で言われて、博子は思わず肩をすくめた。

 「いやいや、私まだまだ暇なんで、選んでいただけるのは正直うれしいですけど」

 そう前置きしてから、少しだけ声のトーンを落とす。

 「でも、先生方に合うのって、私だけじゃないと思うんですよ。

柔らかい子もいますし、コンカフェで数こなすのも全然アリやと思います」

 会計士の一人が、へえ、という顔をした。「博子ちゃん、意外と突き放すね」

 「突き放してるんじゃなくて、長い目で見てです。ここで“この子だけ”って思わせるより、

 楽しい場所をいくつか知ってもらった方が、結果的に楽になりますよ」

 言い切らず、提案にとどめる。この距離感が、博子の持ち味だった。

 「本町、淀屋橋、北浜、梅田界隈なら、落ち着いて使えるお店いくつか

 調べますよ。ご飯も含めて」その一言で、場の空気が少し変わる。

 「それ助かるなあ……正直さ」年上の会計士が、グラスを置いて言った。

 「接待って言われるけど、レパートリー少ないねん。基本、呼ばれる側やから」

 「そうそう。自分で店選ぶこと、ほぼない」皆がうなずく。

 博子は心の中で、やっぱりな、と思った。この人たちは“遊び慣れてない”

 んじゃない。“選ぶ役をやってこなかった”だけだ。

 「だから、余計に疲れるんやと思います。選択肢がないまま場に放り込まれると」

 誰かが小さく笑った。「それ、めっちゃ的確やな」

 「あと、最近は“コンカフェ同伴”っていうのも聞きますよ」

 何気なく投げると、今度は一斉に食いつく。

 「え、何それ?」「聞いたことあるけど、実際どうなん?」

 「安いし、会話の練習にもなりますし、変に気張らなくていいって聞きます。

 別にキャバだけが正解じゃないですよ」

 “逃げ道”を用意する。それが、結果的にこの店に戻ってくる理由になることを、

 博子は知っていた。ひとしきり話してから、会計士チームの一人がぽつりと言った。

 「今日、来てよかったな」「せやな。なんか、肩の力抜けたわ」

 誰かが黒服を呼び、自然な流れで声をかける。

 「とりあえず、戻ってこれるように一本置いとこか」

 黒霧島。派手じゃないが、分かってる選択。博子は小さく頭を下げた。

 「ありがとうございます。無理のない形で、また使ってください」

 その後も少しだけ話し、1.5セットでお開き。最後に、博子は立ち上がりながら、

 さらっと付け加える。「もし複数で遊びに来られるときは、事前に声かけてください。

 場の雰囲気に合う子、ちゃんと手配します」“売り込まない営業”。

 でも、ちゃんと次につながる言葉。会計士たちは満足そうに席を立ち、

 「また来るわ」「次は仕事終わりでな」と言い残して帰っていった。

 静かになったフロアで、博子は一息つく。

 派手さはない。けれど、確実に“根”が張ってきている。今日も、積み上げ一つ。

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