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日曜の晩。緊張の糸が切れたのと疲れで布団に入って色々考える。税理士先生と月曜日同伴だ

日曜日の晩。正直なところ、身体はもう限界に近かった。

歩き疲れというより、ここ数週間、気を張り続けてきた反動みたいな疲れや。

それでも心のどこかは、不思議と静かやった。

清掃会社の社長から別れ際に渡された封筒。

改めて中身を確認すると、二万円が入っていた。

大金かと言われたら、そうではない。けれど、今の私にとっては、

はっきり「助かる」と言える金額やった。この二週間、出勤日数も増えて、

同伴も少しずつ入り始めて、売上自体は前より見える形になってきている。

でも、入ってきた分だけ出ていくものも多い。ご飯代、交通費、身だしなみ、細かい出費。

「増えた=楽になった」ではなく、「やっと呼吸が浅くならずに済む」くらいの感覚や。

その封筒を手にした瞬間、「あ、これで一つ前に進めるな」と、妙に冷静に思った。

迷いはなかった。もらった二万円のうち、一万円を使って、FP3級の講座を取ろうと決めた。

資格がすぐにお金になるわけやない。キャバ嬢としての評価が一気に跳ねるわけでもない。

でも、今の自分の立ち位置を考えた時、これは“消費”やなくて“仕込み”やと思えた。

派手なボトル一本分にも満たない金額。でも、この一万円は、将来の話の幅になる。

淀屋橋や北浜界隈のお客さんと話す時の引き出しになる。

そして何より、「私は流されてない」という実感をくれる。

社長が言っていた言葉を思い出す。「博子は、ちゃんと考えて動いてるのがええねん」

あれはお世辞かもしれへん。でも、そう言われる自分でいたいとは、確かに思っている。

シャワーを浴びて、ベッドに横になる。スマホを開くと、

YouTubeの登録者数が200人を超えていた。急激に伸びたわけではない。

バズった動画があるわけでもない。ただ、淡々と日常と考えていることを積み上げてきただけや。

20歳の女の子が、政治のニュースを見ていたり、資格の話をしていたり、

キャバクラで働きながら将来のことを考えていたり。それが刺さる人が、

少しずつ集まってきている。同年代の女性と、時々、人生に疲れたおじさん。

これでいい。無理に伸ばそうとしなくていい。ちゃんと積み上げていけば、

数百人くらいにはなるやろう。それで十分や。

資格についても、この一年の方針はだいたい見えている。

証券外務員一種、FP3級、ビジネス法務3級、簿記3級。

重たいものを一気に狙うより、仕事と並走できる範囲で、確実に積む。

宅建は、その先に置いておけばいい。考えすぎず、焦らず、でも止まらない。

スマホに一通、未読のメールが来ていた。税理士先生からやった。

「ごめんごめん、家族のことでバタバタしててな」

「この前はちゃんとセットしてくれたし、反省会も兼ねて月曜どうかな。同伴で」

少しだけ、口元が緩む。来週も、ちゃんと流れは続きそうや。

布団に潜り込みながら思う。今日も派手なことは何もしていない。

でも、確実に一歩は進んだ。二万円のうちの一万円が、もう「未来の支払い」に変わった。

それだけで、今日は十分や。目を閉じると、疲れが一気に押し寄せてきた。

この感じなら、久しぶりにぐっすり眠れそうやな、と思いながら、静かに意識を手放した。

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