火曜日。博子は資料と格闘。東京メイン社長の依頼の奨学金返済肩代わりの試算と社食補助について資料と格闘する
火曜日、博子は朝一で、奨学金肩代わりの制度についての見積もりを出すところから一日が始まる。
とはいえ、ゼロから全部作るというよりは、東京メイン社長のところで一度作っているものがある。
それをベースにして、細かい文言を整えて、他の社長にも転送できるような形にまとめる、
という作業になる。
朝、コーヒーを飲みながらパソコンを開いて、まずは数字のところを確認する。
前提として置いてるのは、奨学金を借りている若手社員の比率、採用人数、離職率、
採用にかかる広告費や紹介料、育成にかかる時間と人件費、そのあたりである。
ここがブレると、最終的な“この制度を導入したことによる効果”の数字が全然変わってくる。
だから、博子としては、その辺は断定せずに、あくまで条件付きで出すという形にしておく。
で、東京メイン社長宛てに、まずは資料を送る。
文面としては、わりと事務的やけど、ちゃんと補足をつける。
「これを転送しておいてください」と。
で、補足として、
ChatGPTのプロンプト的に、大中小でプランあります
・採用コスト
・育成コスト
・離職率
このあたりをいじることによって、数字が全然変わってくるということ。
さらに、そもそもの奨学金を借りている人数は全国平均で取っているけども、
そこも実数に合わせて言っていただけると変えられる、ということ。
ChatGPTの有料版であればそれは対応可能なので、そこの要素のところについて付け足しがあれば、
おそらくChatGPTで対応できます、と。
「そちらの方を追記と言いますか、このメールも添付していただいても大丈夫なんで、
それでお願いします」
という形で、資料を東京メイン社長の方に送って、転送をお願いする。
ここまでは、ある程度整ってるからいい。
問題は、その次。
社食補助についてである。
これは、博子の中でもまだ“球”としては面白いと思ってるけど、奨学金肩代わりの制度に比べたら、
少し説明が難しい。
なぜなら、まず最初に支出が見えてしまうから。
例えば従業員1000人の会社であれば、月額7,500円×⒓×1,000=9000万の支出になることが
年間でまず見えてくる。
この時点で、「うわ、高い」と思われる可能性がある。
でも、その9000万をそのまま“単純なコスト”として見るのは違う。
そこをどう説明するかが、今回の肝になる。
博子は、ノートにざっと整理する。
まず、社食補助という形にした時に、従業員側の手取りの改善という意味で、
2700万分ぐらい所得税の面で差が出る。
さらに、社会保険料――正確には会社側の企業負担分――そこにも差が出て、
1400万ほどの圧縮が見込める。
ここまでは、比較的見えやすい数字として出せる。
要は、9000万丸々が“ただ出ていく金”ではなく、税と社保の観点から見ると、
実質の見え方はかなり変わるということである。
で、そこから先が難しい。
「これをすることによって、若手の満足度が上がりますよ」という話を、どう可視化するか。
ここは、単なる印象論では弱い。けど、完全に数字で切り切ることも難しい。
だからヒロコは、ここを採用と定着の文脈でつなぐことにする。
たとえば、
・離職率がどれぐらい下がるか
・採用コストがどれぐらい減るか
・教育担当者の負担がどれぐらい減るか
・若手社員の「会社に面倒見てもらってる感覚」がどれぐらい増すか
このあたりの要素を挙げながら、数字をいじるという形になります、という説明にする。
博子としても、ここを断定で言うつもりはない。
あくまで、
「この条件で離職率が0.5%下がったら」
「この条件で採用単価が何万円下がったら」
「この条件で育成期間中の離脱が何人減ったら」
というシミュレーションに落とし込んで見せる方が、経営者には刺さると思ってる。
だから、資料のざっくりした説明としては、こういう感じになる。
社食補助は一見すると支出が大きく見える。
ただし、給与として同額を渡した場合と比べると、税務・社会保険の観点で見た時の効率は変わる。
さらに、福利厚生としての見え方が出ることで、若手の満足度、会社への信頼感、
採用時の訴求力が変わる可能性がある。
これを単純な“コスト”としてではなく、“人材流出を抑えるための投資”として見た場合、
採用コスト・育成コスト・離職コストとの比較で考えた方がいい。
そこまで整理しながら、博子は、ああやっぱりこういうの嫌いじゃないな、と思うのだった。
キャバの仕事だけをしてたら出てこない頭の使い方やけど、こうやって誰かの会社の制度を考える時、
自分の中の別のスイッチが入る。しかも、その資料がまた次の遊びの種になる。
そこが、博子にとっても少し面白い。
そんなふうに、火曜日の朝は、奨学金肩代わり制度の見積もりと、社食補助のざっくりした
整理をしながら過ぎていくのだった。




