店内二セット目。空気感がいい。明日どうするかの話になり、ブリアンで朝食からのゆったりコースに決定する
店まで移動して、そこからそれぞれ個別でゆっくりした時間をワンセット過ごす。
ビアガーデンでわちゃわちゃと全体の空気を温めてからの店内なので、いきなりゼロから会話を
作る感じではなくて、もうある程度あったまったところから、すっと二人の会話に入っていけるのが
良かった。
おのおの、久しぶりの再会ということで、最近の近況であるとか、大阪での動き、
東京での動きというのをお互いにぽつぽつお話しながら、ワンセットが過ぎていく。
メイン社長のところでは、やっぱり最近の会社の話がちょこちょこ出る。
奨学金肩代わりの件で空気が少し変わったとか、若手の子らが前より柔らかくなったとか、
そういう話をしてくれるし、博子も博子で、税理士先生の座組や、弁護士先生との朝アフター、
おじいちゃんとコンカフェ行った話なんかを差し込んでいく。
で、他の二人の社長の卓でも、アルカちゃんやさきちゃんが、それぞれ下田どうでしたとか、
最近どうですかとか、わりと柔らかい感じで受けていて、全体としてかなり空気はええ。
で、二セット目ぐらいになって、もうだいぶ“明日どうする”の話に入ってもいい時間帯になったところで、博子が話を切り出すのでございました。
「じゃあ、とりあえず明日どうする?っていうお話なんですけども。」
社長さんたちも、そこは待ってましたという感じで身を乗り出す。
博子は、わざと少しもったいをつけるように、三つほどプランがありますと前置きをする。
「まず一つ目。」
「朝もゆっくりして、昼過ぎぐらいに山崎ウィスキー工場に行くと。
で、帰りはそのまま新幹線で帰るっていうコースが一つ。」
「これは手堅いな。」
「そうなんですよ。」「で、もう一つ。」
博子はそこで少し笑う。
「私、メイン社長と行ったんですけど、北山のブリアンっていうところでご飯を食べて。」
「ああ、出た。」
「軽く植物園で散歩してから、お昼。」
「うん。」
「ここは行ったところとは違うんですけども、中庭が見えて、1400円ぐらいの和食、
昼はランチ一品しかやってないんですけど、そういう店があるんで。」
「ほう。」
「そこ行ってから、京都駅近くのホテルのラウンジでゆっくりして帰るっていうのがもう一つ。」
「だいぶ綺麗やな。」
「そう。」「で、最後は鉄板コース。」
それを聞いた社長たちは、どれもええなという顔になる。
実際、三つともかなり方向性が違う。
ウイスキー工場は手堅いし、刺激もある。
北山のコースは朝から昼にかけての“整う”感じがある。
鉄板コースは言うたら博子の球の一つとして、もうだいぶ期待値が乗っている。
「どれもええな。」
「な。」
「どうしよっか。」
そう言いながら、自然と社長たちの中でも話し合いが始まる。
博子はそこにあえて強く誘導をかけず、少し様子を見る。
すると、ホテルの朝ごはんの話がちらっと出てくる。
「でも、朝ごはんな。」
「うん。」
「ホテルで食べるよりも、そっちの方がゆっくりできんじゃねえの。」
「確かに。」
「別に俺、ホテルご飯つけてないしな。」
その一言で、流れが少し変わる。
今回の宿は朝食付きではない。
だったら、せっかくやし、ホテルのビュッフェで済ませるよりも、
外でちゃんとした朝から昼の流れを作った方が面白いんちゃうか、という話になる。
「じゃあ、それで行こうか。」
メイン社長がそう言うと、他の二人もすぐに頷く。
「ええやん。」
「植物園っていうのも、なんかこう、急に人間っぽい遊び方やな。」
「人間っぽいってなんですか。」
ヒロコが笑うと、社長たちも笑う。
「いや、いつも日本酒とか鉄板コースとか、球の強いもんばっかりやからさ。」
「そうそう。」
「ちょっとゆるく散歩して、うまい飯食って、ホテルラウンジで休んで帰るっていうのは、
なんか大人っぽくてええやん。」
「それもまた、ひとつの球なんですよ。」
「出た。」
そんな感じで、決まる時は本当にあっさり決まる。
博子としても、北山から植物園、中庭の見える昼飯、最後ラウンジ、という流れは
かなりええなと思っていたから、そこに乗ってくれたのはありがたかった。
「ただ、ちょっと歩くことになるんですよ。」
「全然ええで。」
「そこまでガツガツ歩くわけでもないですが。」
「むしろそのぐらい欲しいわ。」
「ほんでまたなんか、途中で博子ちゃんの雑学が挟まるんやろ。」
「いや、それは知らん。」
「絶対挟まるって。」
また笑いになる。
こうやって、明日の予定がただの“どこ行く”じゃなくて、“どういう時間を過ごすか”
として盛り上がるのが、このメンツらしいなと博子は思う。
しかも今回は、三者三様に散らばるんじゃなくて、全員で同じ流れを味わってもらう。
それも今の受け方としてはかなりええ気がした。
「じゃあ明日は、ちょっとゆっくり集合して。」
「うん。」
「北山の方行って。」
「で、植物園な。」
「で、中庭の見えるとこで昼食べて。」
「最後ラウンジでだらだらして帰ると。」
「完璧やな。」
そんなふうに、また盛り上がる。
店の中の二セット目。
酒もほどよく進み、空気もあたたかく、明日の流れまで気持ちよく決まっていく。
今日のビアガーデンも良かったけど、明日の“少し静かなコース”もだいぶいい。
そういう期待感ごと持って帰ってもらえるのは、博子としてもかなり理想的やった。




