金曜日。税理士先生との二セット目。チーム全体で先生方を受けて全体の仲の良さや温度を見たい。イベントの回し方とかクラブみたいでもう博子ちゃん以外考えられへん
「ま、それにしても。」
二セット目に入って少し酒が回ってきたあたりで、税理士先生がしみじみ言う。
「コンカフェ貸し切り二時間パックもなかなかとんでもない球投げできたなと思ったで。」
博子は、ちょっと苦笑いしながらグラスを持ち直す。
「いや、出るわ出るわ。」
「そうやろ。」
「ほんまに、あれは思いついた瞬間は面白いんですけど、実際やるってなると裏のこと多すぎて。」
税理士先生は、そこを面白そうに聞く。
「でも、あれはあれやな。一年通して遊べるなとは思うな。」
「どういう意味ですか。」
「いや、別に毎度毎度イベントやる必要なくて。」
先生は、指で軽く机を叩きながら整理するように言う。
「どこぞの店で同伴で、半分貸し切りみたいな形で四対四で飲んで、
店に来るっていうのを混ぜればさ。」
「うん。」
「毎月毎月“イベントです!”ってせんかったら、多分一年は持つなと思った。」
博子は、その言い方にかなり頷く。
たしかにそうや。
毎回ウイスキー工場や、毎回有馬温泉や、毎回紅葉やってやる必要はない。
むしろ、ちょっと贅沢なご飯、ちょっとまとまった空気、ちょっと違う動線。
それだけでも十分“いつもと違う”になる。
そこに時々、季節ものとか大きめのイベントを差し込んだらええ。
それぐらいの方が、むしろ長く持つ。
「でも、やっぱり裏回しというか。」
博子が、そこはちゃんと現実を言う。
「いろいろ根回しとか、打ち合わせとかも絶対いるから。」
「やろな。」
「特にコンカフェ二時間貸し切りなんか絶対。博子ちゃん、これはあれやろ?」
「何ですか。」
「めっちゃいるやろ、打ち合わせが。」
博子は、即答する。
「めっちゃいります。」
税理士先生が笑う。
「やっぱり。」
「だから、今日明日できるかって言ったら、まだちょっと骨格できあがってないんで。」
「うん。」
「他の座組とか、そういうところをちょっとイベントで掘り込みに行きながら。」
「お店と仲良くならな無理ですわ。」
その言い方に、税理士先生もかなり納得したようやった。
アイデアだけなら簡単に出る。でも、ほんまに回すとなったら、誰に何を伝えるか、
どこまで貸し切れるか、時間、予算、女の子側の動き、店側の負担、その辺を詰めなあかん。
その“裏のしんどさ”を理解してくれてるのは、博子としてもありがたい。
「だから、そういう意味で。」「季節もので言ったら、紅葉を見に行くとか。」
「うん。」
「この辺は季節季節でやりゃいいから。」
「そうやな。」
「紅葉が行けるということは、桜を見るっていうのもできますからね。」
先生は、その言葉に少し嬉しそうな顔をする。
「なるほどな。」
「だから、そういうのを適度に入れながら、順々に回していくっていう感じになるかなと思ってます。」
「ええな。」
税理士先生は、そこで少し身体を乗り出す。
「で、先生方と遊ぶにあたって、まるっと集団で仲良くなるのが目的やから。」
「あえて女の子たちが別々で同伴コースやる必要は、どうなんでしょうねっていうのも思ってて。」
「ほう。」
ここは博子の中でも最近少し整理がついてきたところやった。
三者三様でそれぞれ別の店を考えて、それぞれ別の動線を走らせるのも面白い。
でも、毎回それをやると、女の子側のカロリーも高いし、全体の一体感も逆に見えにくく
なることがある。
集団で仲良くさせたいなら、最初からある程度まとまった場で受けた方が、
みんなの温度感も見えやすい。
「だから、毎度毎度ある程度固まってくれるのであれば。」
「もうちょっと回しやすくなるし。」
「うん。」
「他の女の子同士の温度感っていうのも見えるから、多分それで言うたら、
こういうイベントものをみんなでぐるぐる回る、っていう方がいいと思うんですよね。」
税理士先生は、その視点にかなり感心したようやった。
「なるほどなあ。」
「伏見に関しても、酒蔵行きましたけども。」
「うん。」
「また別のコースというか、店と行く場所を変えての別のコースも用意できますし。」
「たしかに。」
「その辺のところ、順々に回していきましょうか、という話で。」
税理士先生は、そこでふっと笑う。
「いやいや、マジで博子ちゃんに任したら完璧やな。」
その言い方に、博子はすぐに首を振る。
「でもね、あんまり私を立たせるのもちょっとどうかななんですよ。」
「なんでや。」
「結局、私一人で先生方四人を相手してるわけじゃないじゃないですか。」
「うん。」
「言うたら、アルカちゃんもさきちゃんもいて。」
「そうやな。」
「ある程度受けてくれるというか、そういうところですね。カレンちゃんはこれからですけども。」
博子は、そこで少し慎重に言葉を選ぶ。
「そういう空気感で“集団で仲良くしようや”やから。」
「うん。」
「あんまり色つけられると、“博子ちゃんのサブやん”みたいな感じになると、
こっちの女の子同士の関係性の問題もあるんで。」
税理士先生が、そこで「おお」と少し低く反応する。
そこまで見てるんか、という顔やった。
「これ、チームで受けてる感があると。」
「うん。」
「やっぱり女の子たちも定期的に連絡し合ってね、連携し合うんで。」
「たしかに。」
「その辺のところの温度感とのあれですよね。」
税理士先生は、思わず笑いながら言う。
「博子ちゃん、どこまで見てんねん。」
「いやいやいや。」
博子も笑う。
「なかなかやで。」
税理士先生は、そのまましみじみ言う。
「これはほんまに、エースグループと全然真逆の方向やけども。」
「うん。」
「俺もこっちの方が好きやな。」
その一言は、博子としてはかなり大きかった。
派手にシャンパンを下ろして、序列が見えて、誰が売れてるかが一発でわかる世界。
そっちも一つのやり方ではある。
でも、税理士先生みたいな人は、そういう“わかりやすい殴り合い”にはもう飽きてる。
だからこそ、こうやってじわじわ人間関係を作っていく場が刺さる。
「スナックというか。」
税理士先生が言い直す。
「クラブ感があるよな、どちらかというと。博子ちゃんの受け方はね。キャバ嬢っぽくないって。」
博子は、その言い方に少し照れる。
「いや、でもキャバ嬢なんですけどね。」
「そこがまたええんや。」
「だから、他のところに行こうと思わへんし。」
「うん。」
「こんだけやってくれるとなあ。」
博子は、そこを半分冗談、半分本気みたいな顔で返す。
「いやいや、もっとどっぷり沼に浸かってくれていいんですよ。」
税理士先生は、間髪入れずに言う。
「いやいや、とっくに浸かっとるわ。」
その返しで、二人とも笑う。
笑いながらも、そこにはちゃんと信頼がある。
税理士先生は、博子が“球を投げる側”としてだけやなくて、“チームの温度を管理する側”
としても見えてきてる。博子も、税理士先生がそこをちゃんと評価してくれるから、
また次の案を出そうという気になる。
そんなふうに、コンカフェ貸し切りのとんでもない球から始まって、イベントの入れ方、
季節ものの回し方、個別同伴を減らすかどうか、チームで受ける温度感、
エースグループとの真逆の方向性まで、一気に話が広がっていく。
濃いけど、かなり整理のつく二セット目やった。
そして、そのまま二セット目が終わった。




