金曜日。会計士先生お見送り後税理士先生来店。先週の座組の反省会と次回の座組でビアガーデンにする話を詰める
会計士先生を二セットでお見送りして、博子が少し卓に戻ろうとしたら、入れ違いみたいな形で
税理士先生が来る。
「先生、お疲れさまでございます」と言うて、博子も少し笑う。
会計士先生との同伴の余韻がまだ残ってる中で、今度は税理士先生が入ってくる。
なんやこの回転率は、と思わんでもないけど、こういう日もある。
税理士先生は、席につくなりすぐに言う。
「博子ちゃん、先週の座組の反省会でもしようや。」
「お、いいですね。」
「ちょっと喋っとかなあかん思って。」
そういうところが、この人らしい。
楽しかった、で終わらせへん。
ちゃんと次に繋げるために、振り返りをしたがる。
博子としても、その方がやりやすいから、すぐに乗る。
で、卓に着いて、酒が入る前にまず話が始まる。
税理士先生は、先週の流れを思い返しながら、かなり上機嫌に言う。
「先週に関してはな、やっぱり山崎のウイスキー工場がすごい良かったから。」
「うん。」
「弁護士先生、めちゃめちゃご満悦で。」
「そうみたいですね。」
「これはほんまにやってる意味あるわ、というところやった。」
税理士先生は、そこで少し得意そうに笑う。
「やからお手当ても色付けさせてもらった。」
博子は、そこは素直に頭を下げる。
「ありがとうございます。」
「いやいや。」「やけど。」
税理士先生は、少し声を落として、でも機嫌よく続ける。
「こっから先の座組に関しては、私、結構日曜日めっちゃ考えたんですよ、って話してたやろ。」
「はい。」
「なんか、雑巾カラカラのところからひねり出してくれてる感じは、すげえ見えた。」
博子は、その表現に思わず笑う。
「雑巾カラカラて。」
「でもほんまやで。」
税理士先生は、そこを真顔で言う。
「で、見えた上に、なかなかええ球を掘ってくるから、やっぱり博子ちゃんやな、というふうになる。」
その言い方が、博子としてはちょっと照れくさい。
けど、かなり嬉しい。
税理士先生は、そのまま勢いで続ける。
「こんなん他の女の子に頼んだら、ブチ切られるわ。」
博子は、そこは即答する。
「いや、マジでブチ切られると思うんで。」
「やろ。」
「ほんまに、頼む相手間違えないほうがいいですよ。」
税理士先生が吹き出す。
「そこまで言うか。」
「言いますよ。」「だって、これ普通に“なんで私がそこまで考えなあかんの”ってなりますもん。」
「せやろな。」「だからこそ、多分ね。」
税理士先生は、少ししみじみした感じで言う。
「博子ちゃん、唯一無二になると思うよ。」
博子は、その言い方に少し言葉が詰まる。
唯一無二。そこまで自分ではよう言わへんけど、外から見たらそうなんかもなという気もする。
「いやいやいやいや。」
博子は、少し笑いながら受け流す。
「思わぬ拾い物を先にしとくもんやな。」
税理士先生がそう言って、また酒を口にする。
「もうだって、博子ちゃん、もう予定パツパツやろ。」
「めっちゃパツパツです。」
「やろ。」
「やから、ほんま、ほどほどにしてくださいね。」
「それは知らん。」
そんなことを言いながらも、話はちゃんと次へ進む。
税理士先生は、次の構想についてかなり現実的な整理をし始める。
「で、次、とりあえず直近でやるなら。」
「はい。」
「言うてくれたように、ビアガーデンぐらいから綺麗に社労士先生、はめていって。」
「うん。」
「カレンちゃんとの関係性とかも含めてね、やっていきゃいいかなと思ってるよ。」
博子は、そこはかなり同意する。
いきなり変な大技に行くよりも、ビアガーデンみたいな“みんなで同じ場にいられる
”“季節もの”“ちょっと特別感ある”というところから入る方が、四人目を混ぜるには綺麗や。
「で、その話なんですけども。」
博子が、そこで一つ差し込む。
「別の女の子からも言われたんですけども。」
「4000円、5000円の安いところじゃなくて、西梅田界隈で、ちょっとお高め、八千円か九千円
ぐらいのビアガーデンがあるんで。」
税理士先生が、少し興味深そうに顔を上げる。
「ほう。」
「そっちの、ちょっとおしゃれビアガーデンみたいな感じにしません?」
「なるほど。」
博子は、そのまま自分の意図を説明する。
「そしたら、キャバクラの同伴っぽくはなるですけども。」
「ガチャガチャはしてないから、ゆっくりおしゃべりできると思うんですよね。」
「たしかに。」
「グランピングみたいな形でもいいかなと。用意されてるものも上質なものですし。」
「うん。」
「ちょっと特別感が出るから、そっちのほうがいいかなと思うんですよね。」
税理士先生は、そこを聞きながらかなり納得した顔をする。
「確かに、接待感は出るかもしれんけど。」
「でも、そうやな。」
先生は、少し考えるように言う。
「ビアガーデンなんて、今日びあんまり信用ならんから。」
博子が笑う。
「どういう意味ですか。」
「いや、安っぽいイメージもあるやろ。」
「ああ、まあね。」
「けど、逆に言うたら、1周回ってちょっと新しいかな、みたいな感じもあるし。」
「そうなんですよ。」
「それ、ええな。」
税理士先生は、そこでだいぶ乗ってきた。
博子としても、よしよしという感じがある。
ビアガーデンという言葉だけやと軽いけど、“西梅田のちょっとええところで、四対四で、
グランピングっぽく、上質なご飯で、少し特別感を出す”まで言うと、
一気に座組としての意味が出てくる。
しかも、社労士先生を混ぜる最初の入口としても重すぎず軽すぎずでちょうどいい。
「じゃあ、第一候補はそっちでいきます?」
「いくいく。」
「で、もしあかんかったら?」
「その時は、新大阪の小料理屋に逃げたらええ。」
「了解です。」
そういうふうに、かなりきれいに話がまとまる。
税理士先生も、博子が持ってきた“雑巾カラカラから絞り出した球”を、ちゃんと拾って形にしてくれる。
そのやり取り自体が、もう一つの座組みたいな感じやった。
そんなふうに、ビアガーデン案でだいぶ場があったまって、一セット目が終わる。




